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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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ノーザンライツとモブ

テストはいくつかあるが、未経験者ばかりなのでまずは基礎体力が中心となる。それから四十ヤード走、アメフトではこの四十ヤード(約45m)のタイムが走力の指針となる。四秒台ならどこの高校でもエースを張れるくらいだ。続いてベンチプレス、仰向けの体勢で何キロのバーベルを持ち上げられるかだ。一般的には八十キロあげられれば問題ないと言える。そしてアメフトならではのテストがキャッチングテスト、アメフトはパスも大事な要素であるがキャッチする相手がいなくては意味がない。しかしボールが楕円で普通のボールより取りにくいのだ。


テストは元々の部員とS.T.A.F.Fメンバーも含めて行われた。


ここでやはりと言うか当然の如く活躍したのが翔だった。基礎体力は言うに及ばず四十ヤード走四秒五、ベンチプレス百五十キロ、キャッチングは空中でワンハンドキャッチしてしまった。もう気持ち悪いくらいになんでも出来た。


「お前ってただのエロキャラじゃなかったんだな。…」


徹が思ったことを素直に口にした。しかし気持ちはわかる。


「そんな風に思ってたんだ!?これでも一応どこ行ってもエースなんだぞ!?」


そんな翔だが実は全ての部門で一位ではなかった。四十ヤード走では左右左が四秒三、ベンチプレスでは雷文兄弟が共に百九十キロを上げているし、他の部員たちもそれなりに高い基礎体力を持っていた。


「これでなんでこんなに勝てないんだ?」


そんな武流の疑問に九尾が答えた。


「簡単な事だよ。普段は足りないメンバーを部員の友達の素人に頼んでいるし、それでも足りなくて攻撃と守備の両方に出なきゃいけないからスタミナ負けしちゃうし、なによりうちにはWR(ワイドレシーバー)がいないんだよ。左右左がどれだけ凄いランナーでもパスができなきゃ威力は半減だ」


WRとはパスを受け取るポジションの事で、パスとランの二つが攻撃のメインになるアメフトでは、そのどちらかしかない相手なら防ぐのは容易い。ジャンケンでパーが出せないようなものだ。相手はグーを出し続けていればそのうち勝てるのだから。


「どうだ?使えそうな奴はいたか?」


礼那が九尾に聞いた。


「そうだな……普段別の部活をしている人たちは流石に基礎体力が高いね。バスケ部員はみんな背が高いしキャッチが上手いからレシーバー向きだね。陸上部はみんな軒並み足が早い。面白いのがプロレス同好会かな、ベンチプレスでみんな百四十キロ近く上げてるし何より闘争心が強いのがいい」


「ふむ……うちのはどうだ?飛島はいいとして安城、岡崎もなかなかのものだろう」


「うん、あの二人は特にラインに使いたいね。闘争心を飛び越えてたまに殺気を放ってるよ」


「それは何よりだ」


礼那が珍しく笑顔を見せた。自分の所の人間が褒められるのはやはり嬉しいようだ。


「それと、これは私たちでピックアップした必要な備品のリストだ。もし足りないものがあったら遠慮なく言ってくれ」


「え!?新しいボールにプロテクター五十セット!?ユニフォームにグラウンド整備の見積もりまで!?うちの部費では賄えないよ!」


「資金については心配しないでくれ。全てうちからの投資だ」


「投資?そんなことをして君らになんの得があるんだ?いや、理由があったとしてもただで貰うなんてできない!」


「む……そうか……ではこうしよう。これからアメフト部は、S.T.A.F.Fの非正規部員になってくれ。それでうちからの依頼をこなして少しづつ返してくれればいい。それに……どうしても勝ちたい理由があったんじゃなかったか?この投資は勝つ為に必要なかったか?」


勝ちたい理由、それは確かにある。投資も本当にありがたい。環境を整える事も重要なファクターだ。本当は喉から手が出る程欲していたものが目の前でぶら下がっているが、飛びつくにはプライドが邪魔をしていた。そこを見透かしたように礼那が追い打ちをかける。


「もしもプライドが邪魔をしているのなら無意味だ。トップたる者、全のために個のプライドを捨てる気概も大事だと思うぞ」


「……君は手厳しいな、観念したよ。ありがたく使わせてもらうよ」


九尾は年下の女子に諭された事よりも、自分の望む事の大事さに気づかされた事に感動すら覚えた。


話がついたところで礼那がずっと気になっていたことを聞いた。


「ところで、この部の名前はなんだ?」


「なにって……アメフト部だけど……」


九尾がものすごく当たり前の答えを返した。


「いや、そうではなくてだな……あるだろ?ヤンキースとかレンジャーズとか……」


それはメジャーリーグだがそれは一先ず置いておこう。


「おお、言ってなかったな。うちは[名北ノーザンライツ(北斗七星)]だ!」


ベタではあるが遥か昔につけられた物なので受け入れよう。そこそこカッコいいから。


「ちなみに紅南高校はサザンクロス(南十字星)だからライバルっぽくていいだろ?」


「成績は足元にも及ばないけどね」


智が余計な一言を吐いた。その瞬間、九尾が崩れおちた。


「そんな事は言われなくてもわかってるんだよ……」


地の底から響くような声だった。

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