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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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アメフト部視察とモブ

紅南高校。それは名北高校と同じ市内にある私立高校だ。


名北高校は県立なので、直接の交流はないのだが、市内にはこの二つの高校しかないため、部活単位での交流はとても盛んだ。運動部では市内ダービーと称して度々試合が行われていて、互いにライバルとして切磋琢磨を繰り広げている。


アメフト部もその例外ではないのだが、創部以来一度も勝った事がなかったのである。江南高校が運動部に力を入れ出した去年などは、百対三などという散々な試合ばかりだ。


「というわけなのだが……」


(部長も聞こえてるの!?)


いや違う。ほぼ同じ内容を智が説明していた。


「さすがにこれだけの差をつけられると飛島1人でどうこうできる相手ではないな……」


「……一応依頼は[練習及び交流戦に参加]な訳だよな?冷たいかもしれないけど結果は二の次じゃないか?」


武流は酷くモブらしい意見を吐いた。だがそんな事で納得するような一般人はここにはいない。


「なに言ってんだモブ男!そこから勝つのが楽しいんじゃねぇか!」


翔はワクワクして言った。他のみんなも[だからこそ勝ちたい]と言う意見で一致した。


「わかったよ。じゃあ具体的にはどうするんだ?」


「まずは現状の把握だ。これは実際に見てみない事には話にならん。それによって増強する人員を選定しなければならんし、備品等も見直さなければな」


「まぁ妥当かな。じゃぁ早速見に行きますか」


津島姉弟がそういうとすぐさま準備を始める。


「取り敢えず私と智、あとは飛島が行く。他は今日は通常業務だ。では行くぞ」


さすがに行動が早い。言うなり行ってしまった。


「じゃあ俺は取り敢えず……」


武流は[アイゴーグル48]を手にした。




アメフトとは陣取りゲームだと言う言葉もある通り、ボールを相手陣地の最後尾(エンドライン)まで持っていけば得点となる。野球と同じように攻撃側と守備側に分かれてワンプレイ毎にセットし直しながらゲームを進める。人数は一度にゲームに参加できるのは十一人、攻撃と守備で交代するのが一般的だ。つまり一チーム二十二人以上が普通だ。


だが名北高校アメフト部は現在部員が五人しかいない。いつもの男メンツを足してようやくギリギリだ。それにアメフトはかなりハードで、普段特別運動をしていない人がいきなり入っていけるほど甘くはない。


そんなアメフト部の部室


「S.T.A.F.F部長の津島だ。よろしく」


「俺はアメフト部部長の九尾(きゅうび)、三年生だ。こちらこそよろしく頼む。早速なんだがこちらもかなり切羽詰まっているんでな、出来たら早く人員の確保を急いで欲しい」


確かに顔に余裕がない。負けたら廃部は本当かもしれない。


「九尾……ポジションはQB(クオーターバック)か?いや、まさかな……私が直接出向いたのは一つお願いがあってだな」


ちなみにQBとはボールを投げるポジションで、九尾は本当にQBだった。


「お願い?まさか報酬が足りなかったとか?でも依頼フォームの額で提示したはずだが……」


「いや、依頼自体は問題ない。お願いと言うのは、対抗試合までの間私たちS.T.A.F.Fに全面協力させて欲しいというものだ。無論、そちらの負担にならないよう心がけるつもりではあるが」


礼那は努めて[こちらからのお願い]である事を強調した。


「全面協力と言うと?普段の依頼となにが違うんだ?」


「まず人員を勝てるレベルの人材を寄越す。それから雑事も含めてバックアップをさせてもらう。人数が少ないから手が回らないことも多いだろうと思ってな」


「しかしそれじゃぁ報酬の額を超えてしまわないか?あれ以上は出せないよ?」


「だから協力のお願いなのだ。好意と思って受け止めてくれ」


「そうか、ありがとう!是非お願いするよ!」


「では成立だな。早速で悪いが部活を見せてもらえるかな。必要な物を洗い出したいからな」


「構わないよ。ついでにうちのメンバーも紹介するよ。けどあんまり設備は良くないから驚かないでくれよ」


九尾は自重気味にそう言った。


そして見学が始まったのだが確かに設備は控え目に言っても最悪だった。ボールは全て破れを縫ってあるしプロテクターも古臭くて修理跡だらけだ。グラウンドはかろうじて使える状態だったが、お世辞にも綺麗とは言い難い。


「これは……」「酷いな……」


智と翔は率直な感想を述べた。


「ははは……飛島君もうちには来た事が無いから驚いただろう。だけど気持ちだけはうちの部員たちはどこにも負けないよ」


そんな事を話している間に部員たちが集まった。


「紹介するよ。三年は右から菊花(きっか)、キッカーが本職だ。そして雷文(らいもん)兄弟、双子のラインマン。そしてうちのエースランナー左右左(そうしゃ)だ。最後に唯一の二年生、LB(ラインバッカー)頼場(らいば)。みんなかなりのものだぞ」


どうでもいいがメインキャラクター以外の名前の適当ぶりもかなりのものだ。


「これからよろしく頼む!」


五人とも、練習でかなりの運動量をこなしていたのがわかるほどに疲れた様子だったが、それをものともしない顔を見ていると、本当にアメフトが好きなのが伝わってくるようだ。


ちなみにキッカーはその名の通りボールをキックする役割で、ラインマンとは味方の投手を守ったり、逆に守備の時は相手のラインを打ち倒す体を張るポジション。ランナーは攻撃の時にボールを持って運ぶ役だ。LBは守備でラインの後ろに付いてランを止める役割りである。


「ところで九尾、顧問が職員室に来て欲しいって言ってたぞ」


「そうか、じゃぁS.T.A.F.Fのみんなに練習を見せてあげてくれ。ではまた」


そう言って返事も待たずに行ってしまった


「ふむ……よし、ではそろそろ私は戻るとしよう。智、必要になりそうな備品のチェックをしておけ。飛島は練習に参加して他の部員も含めてチェックしておけ。では先輩方、失礼します」


すぐに立ち去ろうとした礼那を菊花たちが引き止めた。


「すまんがその前に一つ聞いてくれないかな」

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