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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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取り調べとモブ

「モブ男〜!ホント〜に湊ちゃんとはなにもないんだろうな!」


放課後、部室に入るなり翔が武流を問い詰める。


「しつこいな!本当に昨日会って少し話をしただけだ!」


パンツの件は一生誰にも喋らないと心に誓って、今日何度目かの否定の言葉を吐いた。


「じゃぁ別の質問だ。昨日って言ってるけどいつ会ったんだ?昨日はラグビー部に仕事に行っていただろう」


智までが絡んできた。聞きたいのは湊との出会いの件ではなくサボっていたのではないかと疑ってきた。


「那古野はモブ男がこの学校の生徒であることはわかっていたようだしな。つまりは会ったのは学校という可能性が高い。内密の仕事をしている時に、だ」


痛い所を突かれた。仕事の後に街中で会って話したなどと丸々嘘を言ってしまえば必ず後でバレるし、正直に仕事中に話したと言えば漏洩に繋がる。それでも武流はなんとか誤魔化そうと口を開いた


「……昼に休憩してる時に会ったんだよ……那古野は見学に来ててたまたまな。友達に掃除を頼まれただけとしか言ってないよ」


精一杯の言い訳だったが一応話の筋は通っている。後で湊に口裏を合わせてもらえばなんとかなるくらいには……だが……


「と、モブ男は言ってますがホントの所はどぉだったの?那古野さん」


いつの間にか忠臣が部室の入り口に立っていた。その後ろには…


「那古野さん!?……と伏見……なんでここに?」


武流は務めて平静を装った。だが内心は心臓バックバクだった。


「なんかね〜学校案内と部活見学らしいよ。そんで次はうちだってさ。で、どうなの?」


武流が必死に無言で訴えている。口裏を合わせて欲しいと言う呪詛にも近い訴えだった。


それが伝わったようだ。湊はニッコリ微笑んで言った。


「うん、昨日は見学に来てたよ。その時に茂野君に会って少し学校の事を教えてもらってただけよ」


(ありがとう那古野!いや那古野様!)


「後はパンツを見られたくらいで他はなにもなかったよ?ね、茂野君!」


[茂野君!]の所で湊がウインクした。


「「なんだとー!」」


男性陣が同時に叫んだ。


(絶対わかっててやってる!)


「武ちゃん!女の子になんてことしてるの!」「モブ男!なんて羨まし……じゃないけしからん事を!」「茂野君…後で説教ね…」「智、今すぐ茂野に関するデータを全て消せ。この部に犯罪者がいた事実を抹消しろ」


「あれは事故だったんだ!ホントだ!みんな信じてくれ!」


「見たのはホントなんだな!?やっぱり許せん!」


皆が一斉に武流を糾弾する。そんな様子を離れて見ていた湊がクスクス笑っている。


「やっぱり茂野君をからかうと面白いな〜。さて桃花、まだ案内終わってないんだよね。行きましょうか」


そう言って部室を出ようとした時湊がフォローする


「私が勝手に転んでちょっと見えちゃっただけでホントに事故だから。茂野君は悪くないからね」


そう言い残して歩いて行ってしまった。


(ホントに小悪魔だ!いや、悪魔だ!)


残された部員たちのなんとも言えない空気の中、最初に口を開いたのは徹だった。


「……結局なにしに来たんだ?」


「……だから……部活見学……」忠臣が答える。


「部活らしい所を見学してないだろ。引っ掻き回しただけだ」


みんなからの責めに耐えかねて教室に戻ってきた武流。疲労困憊で机に倒れこんでいると湊が見学から帰ってきたようだ。


「茂野君?どうしたの?部活は?」


「お前のせいでいたたまれなくなったんだよ……」


「そぉなの?ちゃんと仕事の事は内緒にしたじゃない」


「そっちじゃねえよ!その!……パ……」


武流が口ごもる。言いにくいワードのようだ。


「パンツのこと?そんなに気にすることかなぁ」


「そりゃ気にするよ!てゆうかお前が気にしろよ!健全な男子高校生の性への好奇心舐めんなよ!大体お前!……」


おかしな主張をする武流。続けて言葉を発しようとした所を湊が武流の口に指を当てて止める。


「お前じゃないわ。湊。湊って呼んで」


「……できるかよ……彼女でもない女子を名前で呼び捨てなんて……」


千種には名前を呼び捨ての武流だがそこは幼馴染枠なので例外だ。片想いだったし。


「じゃぁ付き合う?それなら呼び捨てにできるでしょ?」


湊がイタズラっぽく言った。


「からかうなよ!……つーかなんでそんなに俺に絡んでくるんだ?」


「ん〜……なんでかな……少し気になるから……じゃぁダメかな?」


トクン……と武流の心臓が脈打つ。いや、衝撃の度合いから言えば[ドグン"]が最適な擬音だ。


「それってどういう?」


誤解で調子に乗りたくない武流が確認する。


「まだちゃんとした答えはできないかな。からかうと楽しいからかもしれないし……恋愛感情かもしれないし?」


意味深な言い方をしてくる湊。


「それもからかってるんだろ?もういい加減慣れてきたよ」


「ふふ、そうかもね。じゃぁ帰りましょうか」


湊の笑顔に勘違いしそうになりながらもなんとか言葉を返す武流。


「そうだな。まぁこれからもお手柔らかに。あとまぁ呼び方は[那古野]じゃダメか?」


湊は少し不満気な顔をしたがすぐに笑顔に戻り手を差し出しながら


「いつか湊って呼んでね」


「いつかな」


観念したかのように手を握り返し武流が呟いた。

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