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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第二章〜ようやくプロローグが終わったところでやっと話が回していけるかと思いきやまだまだ書きたい所までのパーツが足りなくて四苦八苦!とモブ
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任務完了とモブ

開始のゴングと同時にジョーが先に手を出す。それを忠臣が躱す。先程の再現だ。今度は立場が反対だが。


そしてまた同じようにクリンチの体勢になった時、忠臣がジョーに話しかける。


「本気出してくださいよ先輩。これじゃぁ見物人が飽きちゃいますよ?」


カッとなるジョー、そこから猛攻が始まる。


「やるなぁ岡崎」


翔が感嘆の呟きをこぼす。


ジョーの攻撃を紙一重で躱す忠臣。挑発するようにジャブを顔に叩き込む。


すると業を煮やしたジョーがまたも足を踏もうと自分の足を伸ばすが……これも躱して逆にジョーの足を踏みつける。


ここからは完全に忠臣のペースだ。しかも先程ジョーが徹に打ち込んだパンチを同じ場所、同じ手順、同じ力で返す余裕振りだ。


そしてまた最後に二人同時にパンチを繰り出す。しかし今度は少し違う展開だった。どちらもパンチを止めずに放たれる、がジョーの拳は空を切り、忠臣の完璧なクロスカウンターがジョーの頬を貫く。忠臣のK.O勝ちだ。


ヘッドギアとマウスピースを外しながら忠臣がジョーに声をかける。


「いやぁ、たまたまいいのが入っちゃいましたね、ボクシングってこれがあるから怖いですねぇ」


言いながらジョーに手を差し伸べる忠臣。完全に自信を喪失したジョーがその手を握ったその時


「ちょーっとやり過ぎましたね先輩。あんまり俺の親友に舐めたことしたらこんなもんじゃ済みませんよ?」


忠臣がジョーの耳元で囁く。


[役者が違う……]そう思わせるには十分なダメージを負わせて、忠臣がリングを降りる。


「なんだよ……俺が完全に引き立て役じゃねぇか……」


徹がぼやくがその顔はなんともスッキリとしていた。


「こんなのもいいだろ?いいとこ取りは俺の専売特許だしね」


そんな言葉を交わして去っていく二人の後には呆然と立ち尽くすボクシング部員たちの姿だけが残った。


S.T.A.F.F部室、双眼鏡を覗き込み一部始終を見ていた二つの影。礼那と智だ。


「姉さんの思惑通りなのかな?」


「まぁ大体はな、しかし飛島が行くと思ったのだが予想が外れてしまったな」


「だからこそ面白い、でしょ。さて、そろそろボクシング部から抗議がくるかもね」


「ふん、抗議してきたところで、依頼を受けた安城はちゃんと役目を果たしたんだ。飛島だろうが岡崎だろうが飛び込みの一般の生徒の一人だ。お門違いも甚だしい。その時はタップリやり返してやれ」


丁度智のケータイが鳴った。しかし予定通りなのでなんの問題もなくすんなり迎撃した。


武流と徹が報告のために部室に戻ると、礼那と智以外にも魅華とフィオが二人を待っていた。「トールお疲れ様ネ〜カッコよかったヨ!」


初対面でいきなりファーストネームだ。その辺は流石に日本人とは違うらしい。


「……カタカナで呼ぶな……発音が雷神(トール)に聞こえる……」


「その方が呼びやすいんだヨ」


「いいじゃないか。中学の頃のあだ名なんだから懐かしいだろ?」


「だから嫌なんだ。血の気の多い暴れん坊みたいで……」


しかしこのあだ名、徹は名前や髪色からだとなんとなくわかるからいいとして、忠臣は徹の相方だから[風神]と付けられたからもっと酷い。本人から連想できないからだ。しかも北欧神話から雷神(トール)なのに相方は日本の神道からきているのでめちゃくちゃだ。所詮は中学生が付けたあだ名だとも言えるが…


「でもホントにカッコよかったヨ!二人とも!」


この場合の[二人とも]は徹と忠臣のことである。念のため。


(わかってるよ!念を押すな!)


魅華が椅子に座る徹を後ろから抱きついて言った。


「だけど本当によくやったな徹。ご褒美あげようか?性的な意味合いで」


聞いて瞬時に真っ赤になる徹。


「絶っ対ぇいらねぇ!」


「絶っ対ぇやらねぇよ!」


すぐに離れてあっかんべーをする魅華。


魅華のジョークはタチが悪い。徹の気持ちを知っているのかいないのか……


そんなドタバタの中、礼那と智が二人で小声で話している。


「だけど僕の予想以上に安城は大人しかったね。倒したりしないか心配したよ」


「それは心配していない。噂ほどの暴れん坊ではないからな。むしろこの後の心配が少しある位か……」


礼那のその言葉は、残念ながら的中した。

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