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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第二章〜ようやくプロローグが終わったところでやっと話が回していけるかと思いきやまだまだ書きたい所までのパーツが足りなくて四苦八苦!とモブ
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サクラとモブ

校舎から校門までの間から少し外れた場所にリングを設置、呼び込みと共にそこまでの誘導が武流の仕事だった。


新入生が増えてきて、いよいよ公開スパーリングが始まる。高校の部活とはいえ、流石は数年やってきただけあって、部員たちも形になっている。見学者も興味を引かれているようだ。


部員総勢七名、部長を除いた三組が一ラウンドでのスパーリングを終えた所で、部長のジョーが見学者たちに向かって喋り出す。


「さぁ、今までは俺たちがどれ位真剣にボクシングに打ち込んでるか見てもらったけど、ここからはデモンストレーションだ。誰か俺とスパーリングをやってみたい人はいないかな?」


もちろんいきなりそんなことを言われても、じゃぁやると言えるような血の気の多い人は中々いないだろう。


「いないかな?大丈夫!真剣に打ち合うわけじゃないから気楽にやってみないか?」


やっぱり誰も手は上げない。しかし予想の範囲内なので焦りはしない。ジョーはチラリと徹の方を見た。合図なのだろう。


「お!君、やってくれるかい?いいねぇ、男子はそれ位じゃないとね!」


それから武流が誘導、部員たちが徹の制服の上着を脱がせてグローブやヘッドギア、マウスピースを徹につけさせて準備完了。開始のゴングが鳴った。


リング中央で挨拶代わりにお互いのグローブをチョンとくっつけた時にジョーが小声で囁く。


「うまいことやってくれよ……サクラがばれたら大変だからね……」


「……」


二人が離れて打ち合いが始まる。


徹が軽くジャブで牽制。ジョーが必要以上に大きな動きで躱す。エンターテインメントを意識しているようだ。


徐々に徹の攻撃の回転が上がる、しかし大振りなので当たらないし、当てる気も無いようだ。たまにガードするのも魅せるディフェンスを意識してのことだろう、余裕の笑みすら浮かべている。


「なにしてんの?あいつ」


「うわ!」


急に話しかけてきたのは忠臣だった。


「サクラなのは知ってるけど……手を抜きすぎだろ」


「そうなのか?俺なら最初に倒れてる自信があるけど」


「ゴチャゴチャ考えすぎてるのかな〜あいつ、不器用だし」


そんなことを話しているうちに二人がクリンチの体勢になる。するとジョーが徹に耳打ちする。


「ソロソロ当ててくれよ。まだ本気じゃないだろ?あんまり一方的だと疑われちゃうかもしれないし、俺も軽く当てるけど大丈夫だよね。これもパフォーマンスだから」


「……わかった……」


二人が離れると徹が適当な体制からボクサーらしいスタンスに変わった。すると徹のパンチが当たりだす。突然の事にジョーが思わず大きく間合いを開けた


「あぁ、チョットはやる気になったみたいだね」


忠臣は見透かしたような事を言う。いつも一緒にいるからわかるのだろう。でも出来たら解説もして欲しいところだ。


徹のパンチに多少怯んだものの、そこはボクシング部部長だけあってすぐさま応戦する。しかし当たらない、当たってもガードの上だ。


いくらなんでも素人に負ける訳にはいかない、だけど見学者たちの手前もあるから強くも打てないジレンマからか、ジョーは奥の手を使う。徹の足を踏んだのだ。


普段なら喧嘩が本職の徹にそんなラフプレイが通じるわけもないのだが、なにしろ不器用な徹は考えながら手を抜くことに集中していたために大きく体勢を崩した。


それにつけ込みジョーがたたみかける。


「酷いな……」


「うお!」


今度は忠臣の反対から翔が武流に話しかける


「お前らわざと?いや、それよりも確かに足を踏むのは酷いよな」


「ん?モブ男気付いてないのか?まぁ足を踏んだのを気づいただけでもましか。あの部長、さっきから急所ばっかり打ってるんだぜ?軽く打っても効くような所ばっかりな」


見ると徹の表情はみるみる苦しそうに変わっていく。それでも徹は手を止めることなく打ち返す。


そして二人のパンチが同時に打ち出された時に終了のゴングがなる。徹はそれと同時に拳を止めたがジョーは構わず当ててきた。


膝をつく徹。それに悪びれることなくジョーが言う。


「いやぁゴメンゴメン。君が思ったより強くてさ。つい止められなかったよ」


わざと……なんだろう。言葉は謝ってはいるがにやけた顔がそれを物語っている。


武流に肩を借りてリングを降りる徹に、声をかけたのは忠臣だった。


「まったく……マジメなんだから……」


「そういう依頼だ。引き受けたからにはちゃんと負けないとな」


徹に見た目程のダメージは無かったらしい。人目がリングにいっている事を確認してすぐに一人で立って制服を着た。


「そんなもんかねぇ……でも俺にはそんなことは関係ない……」


忠臣の顔が険しくなった。ずっと見ていないとわからないくらい僅かな変化だが、だからこそ徹は気付いた。


そんなやり取りがあったことなど知らずに、勝ったつもりのジョーは得意げに見物人たちに向けて喋り出す。


「今の彼は強かったね。でもまぁボクシングはケンカじゃないからね。ちゃんとボクシングを学べばあんなに強そうな人にも負けないってことさ。さぁ、他には誰かいないかな?」


いるはずがない。たった今目の前で怖そうな金髪の男を、事実はともかく見た目は圧倒したのだから。強さを見せつけることが出来てジョーが満面の笑みを浮かべた時、一人が手を上げた。忠臣だった。


さっきのスパーリングを見てまさか名乗りを挙げる者がいるとは思っていなかったジョーは、少し驚いた顔をした。だがあくまで調子を崩さず……


「お!やる気だねぇ。腕に自信があるのかな?」


「まぁ少しはね」忠臣も軽く返す。


「大丈夫か?あいつソコソコ出来るぞ。俺が行こうか?」


翔が心配して忠臣に声をかける。


「大丈夫大丈夫」


忠臣はいつもの笑顔でグローブを着ける。


「お手柔らかにね。あくまでパフォーマンスなんだから」


ジョーが軽い口調で言ってくる。完全に舐めてかかっているようだ。


「岡崎大丈夫かな……部長さん、結構強いんだろ?」


武流が言うと


「忠臣なら問題ない。あいつはあいつで強いし何より……俺よりクレバーだ」


ずる賢いと言う意味で、だ。と徹は安心し切った声を出す。


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