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第七話 森の深淵へ、新たな挑戦

 グレン、バルド、リゼルという三人の冒険者を新たな仲間に加え、ラウル(アルフレッド)とセバスの旅は、いよいよ未開の森の深部へと足を踏み入れた。森は、これまで彼らが通ってきた場所とは比べ物にならないほど、その様相を変えていた。木々は天を覆い尽くすほどに高く茂り、日の光さえ届かない場所も多い。地面は湿気を帯び、苔むした岩が点在し、獣道すら不明瞭だ。


「ここから先は、魔物の気配が濃厚だぜ」


 グレンが、長年の経験からか、鋭い目で周囲を警戒しながら言った。彼の顔の傷跡が、森の薄暗がりで不気味に浮かび上がる。


「ああ、空気も重い。生半可な気持ちで踏み込める場所じゃないな」


 バルドが、手に持つ大きな斧を軽く持ち上げ、その重量を確認する。彼は寡黙だが、その存在感は頼りになる。


「警戒を怠らないでください。この森は、これまでとは全く違います」


 リゼルが、背中の弓をしっかりと抱え、周囲を警戒するように矢を番える。彼女は三人の中で最も若いが、その目は鋭く、森の僅かな変化も見逃さない。


 セバスもまた、ラウルを守るように一歩後ろに控え、細心の注意を払っていた。彼の表情は、これまで以上に厳しかった。


 ラウルは、自分の「神のごとき魔法」の感知能力で、森の魔力の流れを感じ取った。確かに、森の奥へ進むにつれて、魔力の濃度が増していく。それは同時に、強力な魔物の存在を示唆していた。しかし、恐怖はなかった。むしろ、期待に胸を膨らませていた。この森の奥にこそ、王国再建のための手がかりが眠っていると信じていたからだ。


 彼らが森の奥へ進むにつれて、遭遇する魔物の種類も、その強さも増していった。巨大な牙を持つ猪の魔物、毒液を飛ばす大蜘蛛、そして、見るからに邪悪なオーラを放つゴブリンの群れ。


 グレン、バルド、リゼルの三人は、それぞれの持ち味を活かし、見事な連携で魔物たちと戦った。グレンの剣は素早く、敵の急所を的確に狙う。バルドの斧は、その重量を活かして敵の防御を粉砕し、リゼルの弓は、遠距離から敵の動きを封じる。


 だが、それでも数に圧倒され、窮地に陥ることもあった。そんな時、ラウルの出番だった。


「風よ、集え!」


 ラウルが軽く手を振ると、無数の風の刃が生まれ、ゴブリンの群れを一瞬で薙ぎ払った。あるいは、


「大地よ、我らの盾となれ!」


 と唱えれば、目の前に巨大な土壁が出現し、魔物の突進を防いだ。彼の魔法は、もはや詠唱を必要とせず、その意のままに発動される。それは、かつて体験した「神のごとき魔法」の力そのものだった。


 グレンたちは、ラウルの魔法を見るたびに驚きを隠せない。初めて見た時は、たまたまかと思っていたが、これほど何度も圧倒的な力を目の当たりにすると、それが彼の真の力であると認めざるを得なかった。


「お前さん、本当に何者なんだ?こんな魔法、見たことも聞いたこともないぜ」


 グレンが、感嘆と畏怖の入り混じった表情でラウルに問いかけた。


 ラウルは、深く踏み込むような答えはせず、ただ微笑んだ。


「秘密です。ですが、皆さんを危険な目に遭わせるつもりはありません」


 ラウルは、自分の目的を深く語ることはしなかった。しかし、その魔法の力と、困っている村人を助けた時の行動から、彼に悪意がないことは、グレンたちにも伝わっていた。彼らは、ラウルを信頼し始めていた。


 森の中での野営も、過酷だった。しかし、ラウルの魔法は、ここでも大いに役立った。火を簡単に起こし、水を浄化し、時には簡単な仮設のシェルターを作り出すこともできた。彼らの旅は、ラウルの力がなければ、到底続けられなかっただろう。


 幾日も森を進む中で、ラウルは新たな発見をした。森の奥には、これまで見たこともないような珍しい薬草や、魔力を秘めた鉱石が眠っていたのだ。それらは、王都では高値で取引されるものばかりで、中には伝説とされていたものまであった。


(これは……王国再建の、大きな財産になるかもしれない)


 ラウルは、セバスに指示し、それらの資源を少しずつ採取していった。セバスもまた、その価値を理解し、細心の注意を払ってそれらを保管した。


 森の奥地へ進むにつれ、彼らはさらに奇妙な光景を目にするようになる。古びた遺跡や、自然の中に不自然に配置された石造物。それは、かつてこの森に、何らかの文明が存在したことを示唆していた。


「これは……まさか、古の文明の遺跡か?」


 グレンが、驚きの声を発した。冒険者として、遺跡の探索は大きなロマンだ。


 ラウルの胸にも、新たな好奇心が湧き上がっていた。この遺跡には、何が隠されているのか。そして、この森に秘められた「神の力」の真実とは。


 旅は、単なる移動から、探索へとその様相を変えていた。ラウルは、この森の奥に、王国再建の鍵となる何かが眠っていることを確信し始めていた。彼の「神のごとき魔法」の力は、この未踏の地で、さらなる進化を遂げるだろう。そして、新たな仲間たちとの絆も、この過酷な旅の中で、より強固なものになっていく。

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