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第六十八話 魔法の根源と、新たな研究の始まり

 新生オルド王国に平和が訪れてから数ヶ月が経過した。闇の眷属に心を支配されていた人々も、ユリアが研究を重ねた治療魔法と、ルナの現実創造魔法による心の支えによって、次第に平穏な日常を取り戻し始めていた。ラウル(アルフレッド)は、国王としての政務をこなしながら、この世界の魔法の根源について、ユリア、ルナ、そしてフィーリアと共に、研究を続けていた。


「ラウル様、この世界の魔法は、まるで大きな樹木のようです。私たちが使っていた魔法は、その葉や枝に過ぎなかった」


 ユリアは、魔法学校の研究室で、そう言ってラウルに報告した。彼女は、ラウルの「神のごとき魔法」の力と、自身の深い魔法への知識を組み合わせることで、この世界の魔法体系を、より深く理解し始めていた。


「その根っこを、僕がこの目で見たんだ。世界の創造以前に存在した、虚無の支配者の本体…あれは、世界の負の感情が具現化したものだった。しかし、その虚無を打ち消すことで、僕は、この世界の生命の根源、つまり、魔法の樹木の根っこに触れることができた」


 ラウルは、そう言い、自身の「神のごとき魔法」を使い、一本の樹木を創造した。その樹木は、光を放ち、見る者を安らぎで包み込む。


「これが、僕がこの世界の理から得た、新たな魔法だ。生命魔法…この世界の全てに、命を吹き込む力だ」


 ラウルの言葉に、ユリア、ルナ、フィーリアは息を呑んだ。生命魔法。それは、単なる回復魔法とは異なり、枯れた大地を蘇らせ、失われた命を再び芽吹かせる、創造の魔法だった。


「ラウル様、もしその魔法を、この世界の魔法体系に組み込めば…」


 ルナが、震える声で言った。


「ああ。この世界の魔法は、生命魔法と結びつくことで、より強力に、そして、より安全なものへと進化する。これまでの魔法は、使う者の魔力に依存し、暴走する危険があった。しかし、生命魔法と結びつけば、魔法は、暴走することなく、この世界の理に沿った形で、力を発揮できるようになる」


 ラウルは、そう言い、新たな魔法の研究を始めた。


 しかし、それは、この世界の理そのものを書き換える、危険な行為でもあった。ユリアは、そのリスクを最も理解していた。


「ラウル様、もし、魔法の根源に手を加えれば、この世界のバランスを崩してしまうかもしれません。そうなれば、世界全体が、崩壊してしまう危険も…」


 ユリアの警告に、ラウルは真剣な表情で頷いた。


「分かっている。だからこそ、皆の力が必要なんだ。ユリア、君の知識と、魔法への情熱を貸してほしい。ルナ、君の現実創造魔法で、魔法の未来をシミュレーションしてほしい。フィーリア、君の森の魔力で、この世界の理を守ってほしい」


 ラウルの言葉に、三人は、それぞれの役割を理解し、決意を固めた。


 こうして、新生オルド王国では、新たな魔法の研究が始まった。その研究は、単なる魔法の発展ではなく、この世界の未来を、そして、そこに生きる人々の命運を左右する、壮大な実験だった。


 カインは、この研究を陰から支え、ラウルが政務に集中できるよう、国王の補佐役として、日々、奮闘していた。セバス、グレン、バルド、リゼル、レッドたちも、それぞれの持ち場で、この国の平和を守り続けていた。


 ラウルの建国の物語は、帝国の再建、そして魔法体系の変革という、新たな局面を迎えていた。彼は、一人の英雄としてではなく、一人の国王として、この世界の未来を、自らの手で創造していく。彼の挑戦は、まだ始まったばかりだった。

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