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第六十二話 密偵網の構築と、帝国の真の首謀者

 ウェルナー伯爵の屋敷からほど近い森の奥地。かつてオルド王国の兵士たちが密かに訓練を積んでいたこの場所は、今やラウル(アルフレッド)とカインが率いる、新たなオルド王国軍の結集地となっていた。集まった者たちは、カインの指揮のもと、再び剣を取り、祖国の再興のために訓練を開始した。


「皆、まずは帝都の内情を探る。闇の眷属の残党が、誰に潜んでいるのか。そして、帝国の権力闘争の状況を把握するのだ」


 カインは、かつての将軍たちに、冷静かつ的確な指示を出した。闇の眷属に心を支配されていた経験を持つ彼は、彼らが持つ特異な魔力を感知する術を身につけていた。その力は、帝国の貴族や軍人の中に潜む闇の気配を嗅ぎ分けるのに、大いに役立った。


「カイン兄さん、僕も手伝います。僕の『神のごとき魔法』を使えば、より広範囲に、闇の気配を探知できます」


 ラウルは、そう言って、カインと共に帝都の貴族街へと向かった。彼らは、ルナの幻影魔術で姿を変え、貴族街を密かに探索した。ラウルの『神のごとき魔法』は、広範囲にわたる魔力の流れを読み解くことができ、カインの感覚と組み合わせることで、闇の残党の居場所を特定する上で、これ以上ない強力な武器となった。


 彼らの探索は、すぐに成果を上げた。帝都の中心部に位置する、権勢を誇るバルトール公爵の屋敷から、強い闇の気配を感じ取ったのだ。


「間違いない……。このバルトール公爵こそ、闇の眷属に心を支配された、新たな幹部だ」


 カインが、厳しい表情で言った。バルトール公爵は、闇の眷属が消滅した後に権力を強めた人物であり、帝国軍の新たな総帥として、新生オルド王国への反撃を主張していた人物でもあった。


 しかし、彼らが探知した闇の気配は、バルトール公爵だけではなかった。彼の屋敷の奥深く、その魔力の源流には、さらに巨大な闇の存在が潜んでいるように感じられた。それは、まるで、闇の眷属そのものの意志が、具現化しているかのようだった。


「これは……!この闇の気配は、ガリウスを操っていた存在と同じだ……!いや、それよりも、さらに深く、そして、強大だ……!」


 ラウルは、驚愕の表情を浮かべた。ガリウスは、闇の眷属のリーダーであり、彼らを統率する存在だった。しかし、彼を操っていた、真の闇の存在が、まだ生きているとでも言うのだろうか?


「ラウル様、どうしましたか?」


 ルナが、ラウルの様子を見て、心配そうに尋ねた。


「ルナ…この闇の気配、感じ取れないか?ガリウスを操っていた、真の闇の存在が、まだ生きているかもしれない……」


 ラウルの言葉に、ルナは、自身の現実創造魔法を使い、その闇の気配を探った。


「まさか……!これは、闇の眷属の魔力とは違う……。これは、この世界の『虚無』の魔力です…!」


 ルナの言葉に、ラウルとカインは息を呑んだ。虚無。それは、世界の創造以前に存在した、何もない空間。そこには、創造と破壊、そして全ての理を無に帰す、究極の力が潜んでいると言われていた。


「バルトール公爵は、ただの操り人形に過ぎない……。彼を操っているのは、この世界の虚無に存在する、真の闇の支配者だ……!」


 カインは、かつて自分が操られていた経験から、その核心を突いた。


 ラウルは、決意を固めた。彼らの戦いは、闇の眷属という、目に見える敵から、この世界の根源に潜む、真の闇へと、その対象を変えたのだ。


「僕たちの目的は、バルトール公爵を討つことだけではない。彼を操る、虚無の支配者を打ち倒すことだ。兄さん、ルナ、ウェルナー伯爵。このことを、元オルド王国軍の皆にも伝えてほしい。僕たちが、本当に戦うべき相手は、帝国ではない。虚無の支配者なのだと!」


 ラウルの言葉に、カイン、ルナ、そして、この世界の真実を知ったウェルナー伯爵は、力強く頷いた。


 こうして、ラウルたちは、帝国の内情を探る中で、世界の真の敵の存在を突き止めた。彼らの戦いは、帝国の武力という現実的な脅威から、世界の根源に潜む、究極の闇へと、その舞台を移し、最終決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

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