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第六十一話 結集する希望と、帝国の闇

 ウェルナー伯爵の屋敷の一室で、ラウル(アルフレッド)、カイン、ルナ、そして伯爵の四人は、静かに語り合っていた。ウェルナー伯爵は、ラウルの無事、そしてカインが闇の眷属の支配から解放されたことに心から安堵し、涙を流していた。


「アルフレッド王子…本当に、よくぞご無事で。そして、カイン王子…あなたが戻ってきてくださるとは…」


 伯爵は、感極まった様子で二人の王子の手を取った。


「伯爵、ありがとうございます。僕たちが生きていることを、他の皆にも伝えてもらえませんか?」


 ラウルが尋ねると、伯爵は悲しい表情で首を横に振った。


「それが、難しいのです。闇の眷属の支配が消えたとはいえ、帝国は未だ、疑心暗鬼に満ちています。権力闘争が激化し、オルド王国の再興を願う者たちは、互いに連絡を取り合うことすら危険な状況です。闇の眷属の残党が、帝国の貴族たちの中に潜んでいる可能性も否定できません」


 伯爵の言葉に、カインは苦悩の表情を浮かべた。かつて自分が闇に操られていたことを考えると、帝国内に潜む残党の存在は、容易に想像できた。


「では、どうすれば…?」


 ラウルが尋ねると、ルナが静かに口を開いた。


「幻影魔術と現実創造魔法を使います。私が、オルド王国の再興を願う心ある者たちに、幻影を通じて、ラウル様とカイン様が生きているという真実を伝えます。そして、安全な場所に集まるよう、幻影で誘導します」


 ルナの提案に、伯爵は驚きの表情を浮かべた。


「幻影…それも現実創造魔法…?それは、まさか…月の国の王女殿下…?」


 ルナは、伯爵の問いに静かに頷いた。


「ええ。第三王女ルナと申します。以前は幻影に心を縛られましたが、今はラウル様と共にあります。幻影を通じて真実を伝えることは可能ですが、誰が本当にオルド王国を願っているのか、慎重に探らなければなりません」


 ルナは、闇の眷属の支配下にあった帝国の貴族たちの心を、その幻影魔術で読み解くことができるようになっていた。彼女の魔法は、相手の心の光と闇を見抜き、真の味方を見つけるための、強力な武器となった。


 こうして、ルナは、帝国内に潜む心ある者たちに接触を開始した。彼女の幻影は、夢の中、あるいは一瞬の幻として、彼らの元へと届けられた。


「我らの王は生きている…オルド王国の二人の王子は、今も我らの再興を願っている…」


 その幻影を見た者たちは、最初は夢だと思った。しかし、その幻影は、彼らの心に希望の光を灯し、次第に現実味を帯びていった。


 数日後、帝都から少し離れた森の奥地にある、かつてオルド王国の兵士が密かに訓練を積んでいた場所に、オルド王国の再興を願う者たちが集まり始めた。彼らは、ウェルナー伯爵の呼びかけに応じ、そしてルナの幻影に導かれ、この場所にたどり着いたのだ。


 集まったのは、かつてのオルド王国の将軍や兵士、そして、帝国に仕えながらも、心の底では祖国の再興を願っていた貴族たち、総勢二百名ほどだった。


「皆…!」


 カインは、かつての仲間たちの姿を見て、感極まった。


「カイン王子!本当に、ご無事で…!」


 将軍の一人が、涙を流しながら、カインに駆け寄った。


 そして、ラウルが、彼らの前に姿を現した。


「皆、僕は…アルフレッドです。そして、僕たちは、オルド王国を再興するために、この場所に集まりました」


 ラウルの言葉に、集まった者たちは、驚きと感動の表情を浮かべた。


「アルフレッド王子…!しかし、なぜ…?」


 将軍の一人が、疑問を口にした。


 ラウルは、彼らに、自分がなぜラウルとして生きているのか、そして「神のごとき魔法」がどうして使えるのか、その全てを語った。彼らは、ラウルの話に耳を傾け、彼の言葉に、真実の重みを感じ取った。


「我々は、オルド王国を滅ぼした帝国の手先として、苦難の道を歩んできた。しかし、今…アルフレッド王子、そしてカイン王子が、希望の光として、我らの前に現れてくださった!」


 将軍の一人が、そう叫んだ。


「皆、ありがとう。もう、悲しみや苦しみは終わらせよう。僕たちの手で、オルド王国を、そしてこの世界を、真の平和へと導こう!」


 ラウルの言葉に、集まった者たちは、再び奮い立った。彼らの心に宿っていた希望は、確かな決意へと変わった。こうして、ラウルは、帝国の内部に、オルド王国の再興を願う、強力な仲間たちを手に入れたのだ。彼らの戦いは、新たな局面を迎え、帝国の闇を打ち破るための、本格的な反撃が始まろうとしていた。

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