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第十二話 資源の発見と、労働力の確保

 ラウル(アルフレッド)たちが拠点での開拓を始めて数ヶ月。鬱蒼とした森は、彼の「神のごとき魔法」によって広大な平地へと姿を変え、その中に都市の礎が築かれつつあった。しかし、真の都市を築くためには、多くの物資と、何よりも「人」が必要だった。


「セバス、この付近の魔力の流れを見るに、地下に何か埋まっている可能性があります」


 ラウルは、開拓地の中央に立ち、地中深くへと意識を集中させていた。クリスタル「魔力の中枢」との同調により、彼の魔力感知能力は、地面の下の微細な変化までも読み取ることができるようになっていた。


「何か、とは?」


 セバスが、不思議そうに問いかけた。


「恐らく、良質な鉱脈です。都市を築くためには、石材や金属が大量に必要になりますから」


 ラウルはそう言うと、地面に手をかざした。彼の指先から放たれた魔力が、地面に吸い込まれていく。次の瞬間、ラウルの足元から地面が円を描くように陥没し始め、深さ数十メートルの巨大な穴が瞬く間に開いた。その底からは、光沢を帯びた岩肌が見え隠れしている。


「こ、これは……!」


 セバスは、その光景に驚愕した。まさに神業。人手で掘り進めば何ヶ月もかかるような大穴を、ラウルは一瞬で作り出したのだ。


 グレン、バルド、リゼルも、ラウルの魔法に驚きを隠せない。


「すげえな、ラウル!これなら、あっという間に鉱山ができるじゃねえか!」


 グレンが興奮したように叫んだ。


 ラウルは、さらに深く探査を進めた。穴の奥には、鉄鉱石だけでなく、銀、銅、そして微量ながらも貴重なミスリル鉱石の脈が確認できた。これらは、武器や防具の製造、さらには魔法道具の作成にも不可欠な資源だ。


「よし、セバス、グレン、バルド。ここに採掘場を設けます。リゼルは、周辺の警戒と、新たな資源の探索を続けてください」


 ラウルは、その場で採掘の計画を立て始めた。彼の指示の下、バルドがその怪力で巨大な岩を砕き、グレンが魔物の襲来に備える。セバスは、採掘した鉱石の選別や運搬計画を練った。ラウルは、魔法で採掘用の道具を瞬時に作り出し、効率的な採掘方法を確立していった。


 鉱石の確保と同時に、ラウルはもう一つの課題に取り組んでいた。それは、都市を動かすための「労働力」だ。今の彼らの人数だけでは、壮大な都市計画を進めるには限界があった。


「セバス、この森から少し離れた場所に、難民キャンプがあるという情報を、村の者たちから聞きました。その場所を探してもらえませんか?」


 ラウルはセバスに依頼した。オルド王国が滅びて以来、多くの人々が故郷を失い、難民として各地をさまよっている。彼らの中には、生きる場所と希望を求めている者がいるはずだ。


 セバスは、ラウルの意図を理解し、すぐに探索に出た。彼の持つ卓越した情報収集能力と、ラウルが与えた隠密魔法の支援により、セバスは数日後、その難民キャンプを発見した。


 そこは、想像以上に悲惨な状況だった。食料も水も不足し、多くの人々が病気や飢えに苦しんでいた。帝国兵からの略奪を恐れ、身を隠すように暮らしている。彼らの目には、希望の光など、どこにも見当たらなかった。


 セバスは、キャンプの責任者である老人に近づき、ラウルのことを説明した。しかし、一度は裏切られ、絶望を味わった人々は、そう簡単に他人を信用しようとはしなかった。


 セバスからの報告を受けたラウルは、すぐに行動を起こした。彼は、セバスと共に、少量の食料と薬を持って難民キャンプを訪れた。ラウルは、自分の身分を明かさず、ただの旅人と称し、村での経験を活かして、彼らの苦しみに寄り添った。


 ラウルは、魔法で新鮮な水を湧き出させ、保存食を増殖させた。そして、癒しの魔法で、病に倒れている者たちを次々と回復させていった。彼の魔法は、村人たちの時と同様に、難民たちに驚きと感動をもたらした。


「あなたは……まさか、本当に神様なのですか?」


 病から回復した幼い子供が、ラウルを見上げて呟いた。その純粋な瞳に、ラウルは微笑んだ。


「私はただ、皆さんが安心して暮らせる場所を作りたいだけです」


 ラウルは、難民たちに、未開の森の中に、新たな都市を築こうとしていることを語った。そこは、帝国の支配が及ばない、自由で平和な場所。食料も水も豊かで、誰もが安心して暮らせる場所だと。


 最初は疑いの目を向けていた難民たちも、ラウルの誠実な言葉と、彼の魔法がもたらす奇跡を目の当たりにするうちに、次第に心を動かされていった。彼らは、ラウルの中に、失われた希望の光を見たのだ。


「どうか、私たちを、その新しい場所へ連れて行ってください!私たちも、喜んで協力いたします!」


 難民の代表者が、ラウルに懇願した。彼の言葉に、他の難民たちも次々と賛同の声を上げた。彼らは、もう一度、自分たちの手で未来を築きたいと願っていた。


 こうして、ラウルは、新たな都市を築くための最初の「労働力」と、そして「住民」を得ることになった。彼らは、それぞれが様々な技能を持ち、都市の発展に貢献してくれるだろう。


 ラウルの建国計画は、着実に次の段階へと進んでいた。豊富な資源、そして、希望に満ちた人々。この森の奥深くに、確かに新たな王国の息吹が芽生え始めていた。

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