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平和な世界

「はあ……今日も平和でありますように」


Aくんこと赤崎あかさき はるは、静かに机に突っ伏していた。昼休みの教室、誰も彼に話しかけない。目立たない、気配の薄い高校二年生。そんな彼が放課後になると、仮想世界で暴れ回るのだ。


ハマっているのは、オープンワールドのサバイバルゲーム『D-World』。その中で彼は、“風竜アカツキ”として知られる凄腕プレイヤーだった。


前世というのだろうか、元レッドドラゴン(風属性)である。人間に山を荒らされ、つい軽い気持ちで「どっかいけ〜」と吐いた風のブレスが運悪く山火事を引き起こし、「人間に火を吹いたドラゴン」として勇者に討伐されたという不名誉な記憶を持つ転生者である。


「リアルで目立たなければ、勇者も来ないだろ……」


前世の教訓を活かし、地味に生きる。ゲームだけが心の拠り所だった。



そんなある日。


「よっ、アカツキ!オフ会しようぜー!」


同じクランでいつも一緒にプレイしている“雷鳴ボルトン”ことBくんからオフ会のお誘いがきた。陽キャっぽくて、リアルでも絶対うるさいタイプ。けど、なぜか気が合う。不思議なことに、ドラゴンの使い方がめちゃくちゃうまい。


Aくんは内心(この人、ただのゲーマーじゃないな……)と思っていた。


そして当日。


「いやー、雷ってさ、ちょっと遊んだだけで木とか燃えるんだよな!山火事ってさ、ホントすぐ起きるよな!俺、昔そういうミスめっちゃしてさ!」


「(いや待て、それ、俺の前世と同じでは?)」


冷や汗が止まらない。しかもBくん、山火事エピソードを笑い話のように何度もしてくる。


「(討伐対象!? 勇者!? あれ、俺、またバレた!?)」


しかし意外にも、それ以外は気が合う。ゲームの話から、好きなモンスター、武器、戦法……なんでも盛り上がる。以来、彼らはたびたび会うようになった。



そして、ある日。


「なあ、Cさんもこの辺住んでるらしいんだよ!今度一緒に会わね?」


Cさん。VCでは“姫”として扱われる超かわいい声のプレイヤー。ドラゴン使いとしても強く、時に姫プを逆手にとって男どもを手玉に取る小悪魔的存在。


「かわいい声だし……実物もきっと……」

「フヒヒ……」


ドキドキしながら迎えたオフ会当日。


現れたCさんは、身長140cm台の強気系ロリ巨乳。


「おーい、あんたらか? ボイチャでよく騒いでたヤツら」


言動も態度も、声とは真逆。姫どころかドラゴンのような圧を放つ。


「てかさ、AくんもBくんも、ドラゴンの動きリアルすぎじゃね? マジで前世レッドドラゴンとかだったんじゃねーの? がはは!」


「「………………」」


「……なんでお前、冷や汗かいてる?」

「お前こそ」


「……え、まさか、お前も……?」


「おい待て、あの風の話……」

「お前の雷の話もな……」


まさかの、二人ともレッドドラゴンの転生者だった。


そしてそれを見破ったCちゃん。


彼女もただのプレイヤーで済むわけがない。


「ねえ、あんたら……この前のアップデート、ドラゴンの巣の場所が増えたの知ってる? ――あそこ、前世でも見たことない?」

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