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故郷、思ほゆ

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

やだァァァァァァ!! 離れたくないよォォォァォォ!!

と時が来るまで叫び続けます。

朝餉を食べていると、姉が昔から世話になっている漬物陶器を撫でながら、ぽつりと言った。

「あらぁ、欠けちょる」

「そうよ。昨日欠けた」

母のあっけらかんとした態度に反し、私は内心冷や汗を掻いていた。


事の発端は、私の上司と本社が意味深な話をしていた事に遡る。平穏無事な日々ならば、別に電話を掛ける必要はない。用がないなら直接会う事もない。けれども上司は電話を掛けて、本社の重鎮と会うことを決めた。

其れには何かしらの理由がある筈だ。ただでは終わらない理由が。その時、私が考え付いた答えは異動だった。私はまた別の遠い場所に飛ばされるかも知れない。

この場所に居着いて早数年。楽しい事ばかりだった。満ちた生活だった。其れでも慣れといのは恐ろしく、この平穏無事な生活までも退屈だと叫び出す。

だから全ては私が悪い。そう感じた、満ちた生活でも満足出来ないと叫んだ私が悪い。

其れでも、離れると踏むとやはり相応に名残惜しい。この場所にずっと居たいと、我儘をごねたくなる。

だから残された時間を無駄にする事のない様に、馴染みの土地を巡る度に出た。沢山の神社仏閣を見た。私が兼ねてより足を運んだ思い入れのある場所ばかりだった。

其れでも、寂しいという気持ちは離れなかった。でもそれは、その想いが浮かぶ程にこの土地が安寧だったから。名残惜しいと思える程、幸せを与えてくれたから。

――貴方様には感謝以外の言葉がないんですよ。

放り出された私を拾って傍に置いて下さって、娘のように可愛がって下さって。其れでも生きている限り、私は運命に身を任せてさすらい続けるのでしょう。ずっとこの場所に居たいと思っても、必ず何処かで節目が来る。其れが偶今だった話。

未来がどうなるか分かりません。でも生きている限り、繋がりを、糸を断たないで戴けますか?

そう言って御籤を引いた。目の前に人が居て、何やら授与品を賜っている様だった。

この人が居なければ、私は御籤を引かなかったと思うと、感慨深いものがある。

描かれていた和歌は志貴皇子のもの。葦辺行くから始まるもの。調べた意味を要約すると、寒い夕暮れは故郷である大和が恋しく感じられる。という歌だった。

あぁ、寂しいなぁ。私もこの歌のように、何処か遠くへ行かなくてはならないだろう。

私がしがみつく度に、呆れた顔で引き離して、『それでは宜しくお願い申し上げる』とお願いしているのだろうな。と思うと、しんみりします。


今まで人生、私だけで決めたと言うよりかは、天命が決めて、それに従って生きてるんですよ。

そいでもって、その天命の在り方って、私一個人の性格に由来するものだろうな、とは思います。


何が言いたいかと言うと、性格によって運命も変わって来るんじゃない? という事です。

『運命は自分で切り開ける』という人は、やっぱり試練が相応に多い気がします。それだけ戦地に突っ込んで、勝ち星上げてるって事ですから。


そうして私は、天命に流され、幸せな土地に生きても、退屈を感じるのかも知れません。

其れで遠くへ飛ばされても、自分の性格から全て始まってるので、自業自得と言われても仕方ないんです。


でも寂しくない訳ではないよ。

好きだからこそ、思い入れもあるし、離れ難い気持ちもある。

この土地が嫌いになって離れる訳じゃないんだから。


そう思って引いた御籤の和歌がこれ。

著作権考えて端折ってますが、『寒くなると故郷が恋しくなるね』という和歌です。


『今ここでこれを出すのかぁ……』という粋さと、『離れることはきっと確定している』という残酷さが、なんともらしいとしか言えないんですよ。

御籤の言葉も『全てを忘れて、まっさらな状態で進め』ですしね。


神様は神様の視点でものを考えるんです。

其れに人の道理は関係ないですし、汲む必要もありません。

元より人間だった方は除きますけどね。

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