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帆風七咲1 私は風になる!

タコ焼きパーティーから一夜明け、今日も朝から水汲みだ。

いつもの様に水を汲んで神社から帰ろうか、というところで見覚えのある影があった。

ここまで走ってきたのだろう、ジャージ姿の帆風七咲(ほかぜななき)が片手をあげて出迎えてくれた。


「おっはよー翔琉(かける)。へいタクシー、雨ケ谷旅館までお願いしますよー」

「おはよう七咲、おっけー。乗れよ」

「さっすがー、ありがとねえ」


お邪魔しますよーと声をあげながらリヤカーの荷台に乗り込んできた。


「よし、しっかり捕まってろよ」

「レッツゴー!!」


ほどほどの勢いで駆け下りていく。この一週間で人と通り過ぎたことがない、ただもしいたら大変なのである程度は慎重にそれでもってダイナミックに走る。

帰り道のこの瞬間が一番楽しい。風を切って走る走る走る。


 俺は風になる!

「私は風になる!」


七咲が楽しそうに叫んだ。変なとこではもったな。


「叫んで舌かむなよ!」

「翔琉こそ気を付けてねー。さすらいの美少女が乗ってるんだからね!」

「自分で言うなよ!」

「だって、本当の事だし!」


七咲とくだらないやり取りをしていたら気が付けば旅館前にたどり着いていた。


「到着したぞ」

「えー、もう?あっという間だね。ありがとう」


七咲は軽やかな足取りで荷台から降りた。良かった回復したようだ。


「お前、最初は顔色悪かったぞ。あんま無理するなよ」

「あれ?バレてた?」

「見ればわかる程度に」

「あは。だから本当に助かったのじゃあねー」

「気を付けて帰れよ!」

「へーきへーき!」


七咲は大丈夫だとアピールするように小走りで帰っていった。

送ったほうが良いのかもしれないが、前は断られたしなあ。

顔色が悪かったら次回は無理やりにでも送っていこう。


そして、午前のバイトも終わり。午後は適当に村をぶらついて一日が終わった。


翌日。


「おっはよー!今日もよろしくー!」

「今日は顔色良いじゃないか」

「まあまあそんなこと言わずに、ね?」

「ね?じゃないが…、ほら乗れよ」


ちなみに顔色は良かった。


その翌日。


「今日も今日とておっはー!」

「ここ最近、多くないか?」

「多くない多くないー。気のせい気のせいー」

「そうかな、まあ落ちるなよ」


ちょっと顔色が悪い。到着時には回復。


さらに翌日。


「やあやあ、奇遇だねえ。おはようございます!」

「いや、奇遇じゃないが!完全にタクシー替わりだ!」

「そんなことないないナッシング!さあ、出発進行!」

「おう、まあいいか。さっさと行くか」


ここのところ連続で七咲をのせていってる気がする。

慣れたもんで絶妙の力加減で坂を下っていく。


「いやあ、この瞬間がほんとに癖になっちゃうねえ」

「それは分かる!」


下り坂で水の重さもあって想像以上にスピードが出る。

どこもでも駆け抜けていけそうなこの瞬間がたまらない。

それに七咲とくだらないことを喋りながらの往路は嫌いじゃないしな。


「はい、到着!」

「今日もありがとね!またよろしくー」


ここでいつもなら解散だが、七咲の顔色を見て今日は送っていこうと決意する。

いつもと違って悪いままだ。


「七咲、調子回復してないだろ。水だけ運んで叔母さんに言ってくるからちょっと待て」

「ええー、そんなことないけどなー」


と七咲はおどけつつもいつものように走って帰らない。

俺はさっさと水を運んで、おばさんに一言言ってから戻ってきた。

帰ってるかもと思ったが、七咲は荷台の上でおとなしく座って待っていた。


「待ってたか」

「いや、私を何だと思ってるのかなー」


思わず出た言葉を七咲に見咎められた。

いやだって、回復したからーじゃあねーってパターンもあると思うだろう。

兎にも角にもゆったりとリアカーを進めていく。

さすがに平坦な道で勢いよく走りたくない。

七咲は初日のように足をぶらぶらさせながら道案内をしてくれた。

残念ながら今日もズボンか。初日以降、ズボンだよな。


「ズボンで悪うございますね」

「え!?いや、なんのことでしょうか!?」


思わず内心を当てられて変な声が出てしまった。


「初めて会ったとき、チラチラ見てたでしょ?」

「いや、見てないが」

「へー、ふーん」

「興味もないが」

「そうかなー」


ここで弱みを見せたらどこまでも揶揄われる。俺の勘がそう言っていたので必死にごまかす。

七咲はニヤニヤしながら相づちをうっている。


「ま、今回はそういうことにしといてあげよう!」


七咲はそういって台車から飛び降りる。

気づけばちらほら民家のある所までたどり着いていた。

このあたりに家があるのだろう。


「翔琉!ありがとう!またね!!」

「ああ、またな!」


七咲は満面の笑顔で礼を言って走り去っていった。顔色は平常時と変わらないほどに回復していた。

あの様子なら大丈夫だろう。少し、最後の笑顔にドキリとしたのは胸にしまっておこう。

それにしても、飄々としていて元気そうに見えて体が弱い?でも走るのが好き、か。

病気じゃないよな?そういうの隠すタイプじゃないと思うし。まあ暑さに弱いってだけかも。

でも気になるな。ただ夏休みの間だけの付き合いだろうしなあ。

どうするべきか。いろいろと考えながら旅館へと踵を返したのだった。

個別ルート1 帆風七咲編

考えてもまとまらないのでエタる前にとりあえず書きます。

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