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16六日目 タコ焼き後編

その後は八重がみじん切りにした白菜を切った勢いのまま皿にのせるという必殺技を出したり、音村さんと万花ちゃんが阿吽の呼吸でキャベツを疑似二刀流みじん切りしたり、お互い大技が繰り広げられた。

そして、いよいよ決着が近づこうとしている。


「さあこの早切り一番勝負、佳境を迎えようとしています」

「お互いもう残り僅か。これは目が離せないな」


お互い全力を尽くして、残り僅かの食材。二人の叫びとともに食材がテーブルからなくなった。


「ここだあああああああ!!」

「そこよ!」


八重と音村さんキャラ変わってない?まあ、兎にも角にも戦いは終わった。


「終了です!見たところ同時に終わったように見えますが脳内映像を確認してみましょう」

「難しい所だ。これから審議に入るぜ」

「むむむ、これはあれですねえ」

「あれだな。これは」

「はい、結果がでました!勝利したのは…」


帆風の声がここで止まる。タメが長い。

この場で聞こえるのは大郷の息遣いとセミの鳴き声、海の音だけだ。

いや、案外いろいろあるな。緊張がはしり、帆風と谷川の裁定を静かに待つ。


「天の深みより降り立つ戦士たち!天ヶ谷翔琉あまがいかける深塚八重みづかやえペア」

「本当にわずかな差だったな。すごい勝負だったぜ」


「やったね!翔琉!!」

「おう。少しでも手助けできたならよかったよ」


「なかなかやるじゃない」

「あんたもね」


守莉と八重の二人はお互いの健闘を称えるように握手をする。

微笑ましいその光景に皆が拍手をする。


「おめでとう!」

「めでてえな」

「おめでとさん!」


「じゃねえよ!」


そこで唐突に我に返った。


「なんだ、これ。なんだこれ」


この大量のタコとキャベツその他諸々どうするんだ。

タコ焼きの素材切るのがなんでこうなったんだ。

ああ、そういえば生地のほうはどうなっている。


「ふん!ふん!」


うん。大郷がふんふん言いながら黙々と一人で混ぜてるね。それも魔女の大釜みたいなやつで。

どっから持ってきたんだ。ていうか納得の息遣いだよすごい疲れてるよ大郷。

いや、食べ盛りの青少年が6人もいればいけるか。いけるとしよう。


「よし、じゃあタコ焼き器も電源入れて焼くぞー!!」

「まかせろ」


後は流れで何とかなった。生地を入れてタコ入れて裏返す。


「必殺の連続たこ焼き返しだああああ!」

「七咲、あなた普通にうまいわね」

「ふふーん。まあ、多少はね」


タコ焼きを返すのが一番うまかったのは意外にも帆風だった。

テンポよく返していく。

食欲をそそられる匂いが漂ってくる。


「もう耐えられねえ!一番たこ焼きはいただきだ!」

「ダメです!まだ焼きが甘いですよ。ふわとろにしっかりしましょう!」

「谷川、分かっているわね?」

「くっ、万花ちゃん後生だぜ」

「まあ、あと少しだ。我慢しよう」

「翔琉ううう」


谷川の情けない悲鳴は無視するとして、もうそろそろ大丈夫だろうか。

万花ちゃんの顔をちらりと見ると満足気に頷いてくれた。


「万花ちゃんの許可が出たぞ」

「やったぜ、いただきまーす!あ、熱い!水ぅぅぅ!!」


しっかりお約束を見せてくれた谷川をしり目に皆もたこ焼きを食べ始める。

外はカリカリで中はふわふわなパンのようなもちもちした触感だ。

生地に入れ忘れた紅しょうがをかけて食べる。


「おいしいです!これはとても勉強になります!」

「万花の生地が良かったのよ。それにしてもおいしいわね」

「お姉ちゃんたちの切り方が良かったからだよ!」


姉妹はお互いを褒めながら仲睦ましげに食べている。

皆で食べているとあっという間になくなってしまう。

サクサクと次をつくろう。


「本当においしい。翔琉も作るのは良いけど食べなよ」

「そうだよー返すのなら私に任せなさーい」

「おっけー、返すのは任せる」


いつの間にか近くにいた八重が手際よくタコを入れてくれる。

帆風は千枚を構えて楽し気に生地が固まってくるのを待っている。


「八重はともかく帆風が手伝うとはな」

「えー、そうかな。私はいつでも真面目ですよー」

「そうだよ翔琉。七咲に失礼」

「てか、翔琉よ。万花ちゃんはともかく、なんで八重ちゃんも名前読みなんだ。付き合ってるのか?」


三人で雑談をしていると、会話を聞いた谷川がトンデモないことを言い放った。

思わず八重と顔を見合わせ真顔で否定した。


「いや、それはない。下の名前で呼べと言われたからだ。そもそも八重に失礼だろう」

「あの時はそんな流れだったから」

「じゃあ、俺のことも名前で呼ぼうぜえ」


すると谷川がにったりとした表情でそんな提案をしてきた。


「俺も八重ちゃんみたいに結って呼ばれたい。なあ、そう思うだろう」

(こちらを見ながら無言でスクワットをする大轟)

女性陣は我関せずとパクパクたこ焼きを食べている。

まあ、実際問題のところ名前呼びとかそういうの

相手に呼べと言われるならともかく自然に呼ぶとか伝説だろうと思っていた。

さておき、いまだにったりしている谷川の口にアツアツのたこ焼きを放り込む。


「あ、ほいきゃけるはふいんだがはふい!」

「ほら食え結。アツアツだぞ結」

「ほうほうねえhろいえhふぉいうお!!」


さらに一つ二つと放り込んでいく。

ツンデレか!と自分でノリツッコミしたくなったが

谷川も体を悶えさせて満足しているようだし問題ないだろう。


(ふんふんとスクワットを加速させる大轟)


「いや、大轟はなんか大轟って感じなんだよな」

「それ分かります。益信さんでもいいですけど、やっぱり大轟さんですよね!」

「そうね。大轟は大轟ね」

(残像が見えるほど加速してスクワットをする大轟)


姉妹からの同意も得たのでいいかなと思ったが、

目の前で無言でスクワットする大轟がとても鬱陶しい。

仕方ないので呼ぶとしよう。


「あー、益信。スクワットもいいがたこ焼き食えよ」

(満面の笑みを浮かべてたこ焼きを食べる大轟)


するとニコニコしながら大轟はたこ焼きを食べ始めた。

でも、やっぱり大轟だな。次からは大轟でいいか。

これで名前云々は終わったし、たこ焼きつくるかというところで

帆風からインターセプトが入る。


「じゃあ、あと2人だねー。パパっと呼んじゃって。私は七咲でいいよ」

「ええ、まだ続けるのこれ。…七咲も変なこと言ってないでたこ焼きひっくり返せよ」

「むう、なんか男ども呼ぶときのほうが恥ずかしがってた気がする。つまんない」


正直、帆風は七咲でもどっちで呼んでもなんとなく大丈夫だ。

飄々とした人柄がそれを気にしない雰囲気をつくっているんだろう。

帆風のほうは不満げだが、それは仕方ない。

で、チラチラとこちらを見ている音村さん。


「興味なかったけど皆呼んでるなら呼んでもいいわ」

「お姉ちゃんも仲間に入れてあげてください」

「さあ、どうするのかな翔琉君は、名前で呼んでやらねーとかわいそうだぜ!」

「はいはい谷川は黙ってようねー」

「あふい!もうやへろっへ!!」


しぶとく復活した谷川が帆風にアツアツのたこ焼きを再び放り込まれ悶絶している。

そこはいいとして。音村さんを呼び捨てにするのは何となく恥ずかしいような。

もうその思考自体が若くないのかもしれない。

何回似たようなことを考えているんだか。素直に呼ぶか。


「えーと、うん。守莉。これでいいか」

「ま、いいんじゃないの」

「よかったねお姉ちゃん!」


なにが嬉しいのか二人は微笑みを浮かべながら返事を返してくれた。

はあ、なんか無駄に緊張したな。

そもそも人の呼び方なんてどうでもいいじゃないか。

それなのに上の名前でとかこだわる必要あるだろうか、好きなように呼ばせてほしい。

もう呼びやすい名前は大轟だけだよ。大轟大轟大轟。


「翔琉、無駄なこと考えてないでたこ焼き作るの手伝って」

「っは!わかった」


八重に呼び止められて我に返った。

なんか変なことを考えていた気もするけど戻ってこれてよかった。

その後はひたすらたこ焼きを作っては食べを繰り返し、いつの間にか食べ終わっていた。

真夏の白昼に外でたこ焼きパーティーは楽しかったが、とても暑い。

そして調子に乗って食べ過ぎた。


「もう無理ー」

「その分、筋肉で消費だ」

「大轟と一緒にされたくないー」

「それはそうだ」


帆風が苦しそうにしているのを大轟なりにフォローしたのだろうが、

まあ正直ないなと同意するとガビーン!と音が聞こえてきそうなほど

ショックを受けて大轟は硬直してしまった。

それをしり目に重いお腹を抱えつつ皆でゆっくりと片づけて解散となった。


「筋肉で消費…」


その後、晩御飯では珍しくおかわりもせず。

のんびりと過ごしていたら寝る時間となっていた。


「ふぅ、まだ張ってる気がする」


ゆったりとお腹をさする。それにしても呼び方か…。

大郷、結、七咲、守莉、万花ちゃん、八重。そして翔琉。

なかなかいいじゃないか。逆行してどうしようと思ってたけど楽しい日々になりそうだ。

でも、なにか大切なことを忘れている気がする。

昔だから覚えていないのか。それとも。

なんてことを考えていたらいつの間にか眠ってしまった。

共通ルート終わり。まだ共通ルートやりたかった。

今後個別ルートに入ります(予定)。その後Trueやっておまけルートやっておしまい。

改稿とかは全部終わってからです。目指せ完結。

今後は2日から3日に1回投稿予定。

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