15六日目 タコ焼き前編
今日は昼過ぎからタコ焼きパーティーなので仕事は気合を入れて終わらせた。
時刻は昼前。今から行けばちょうどいい時間だろう。
叔母さんから紅ショウガをもらって灯台に向かおうとしたところ旅館入口で八重につかまった。
「翔琉じゃん。紅ショウガ何って持ってどうしたの?」
「これから、と、友達とタコ焼きパーティーをな」
「へえ、面白そう」
友達、のところをどもったのを流してくれたのは良かったんだが、なにやら八重は考え込んでいる。
そして八重は何か決意した顔で口を開いた。
「よし、私も行く。ちょっとパパに言ってくるから待ってて」
「え?」
まじか、八重の事だから
「タコ焼き?そんなことよりパパの研究のほうが大事だし興味ない」
とか言うと思ってた。でもあいつらなら問題ないか。むしろもう八重と知り合いの可能性すらあるな。
なんて思っている間に八重がやってきた。なんか袋を持っている。
「これ?チーズとナッツ。結構好きなんだ。タコ焼きにも合うと思って」
「そ、そうか。よし、いこうぜ!」
ここでおっさんの晩酌かよ!とか言ったら面倒になるのは想像がつく。
俺たちは灯台に向かうのだった。
「さて、今年も始まりました!タコとキャベツとなんか諸々の早切り一番勝負のお時間です!
この暑い夏の日に心まで熱くなるような勝負にしてねー。
てわけで、実況と解説はわたくし、さすらいの美少女こと七咲ちゃんと」
「自称早切り食材研究家の谷川結でやって行くぜ!」
いやなにがどうなったらそうなるんだよ!とツッコミたいんだが、もう疲れた。
そう、八重を灯台まで連れてきて「新しい仲間だワッショイワッショイ!」
とよくわからないテンションで迎え入れるメンバー。そこまではいい。たぶん。
ちなみに八重と音村さん、万花ちゃん姉妹は知り合いというか友達同士だった。
昨日、食パン屋のパンを買いに行ったときに仲良くなったらしい。
「でも、普通にたこ焼き作るだけじゃつまんねえよなあ!大郷!バトルフィールドの準備だ!」
「合点!」
叫ぶ谷川とテーブルを配置しや食材を分けたりなどサクサク準備する大郷。
そして帆風の実況が響き渡る。
「まずはニューフェイス!天の深みより降り立つ戦士たち!天ヶ谷翔琉と深塚八重ペアだああああ!!」
「よし、やるよ!翔琉!!」
「お、おう。頑張ります」
やる気がみなぎっているな八重。こいつは相当な負けず嫌いだ。
「対するは最強姉妹のコンビネーションは右に出るものなし!音村守莉と海月万花ペアあああああ!!」
「万花、焦らず怪我せず普通にやるわよ」
「分かったよお姉ちゃん!全力だね!!」
マイペースの音村さんとテンション高めの万花ちゃん。
そしてお互いのテーブルには大量の白菜とキャベツとタコとウインナーとチョコとチーズなどなんか諸々が等分に分けられている。明らかにおかしい奴もあれば。これ、ぎりぎりいけるか?というものまで大量に敷き詰められている。この食材を先にさばいたペアが優勝らしい。
いや、もうなんだこれ…。
そして俺を置き去りにして勝負は始まってしまったのだった。
「というわけで両者動き出しました!当たり前のようにマイ包丁を取り出す!」
「包丁を片手で回転させて構えるのはかっこいいがマネしないようにな」
「まもりんはタコから八重ちゃんはキャベツから切り始めるようですねえ」
「守莉は海沿いの田舎娘だけあって海鮮類はお手のもんだ。八重ちゃんは腕が未知数だがどうなるかな」
「さすがです。正確な包丁さばきで一口大のタコを大量生産していくまもりん選手!八重ちゃん選手は…、こ、これは」
「いや、これは想定外だ。まさか二刀流とわな」
「なんと八重ちゃん選手、右手と左手にそれぞれ包丁を持ち、すごい速度でみじん切りを量産していく!」
「しかも絶妙な力加減で皿の上に飛ばして積んでいる。こいつはやばいぜ、隙がねえ!」
「素晴らしい、これは八重ちゃん選手の圧勝ですかねえ。どう思われますか解説のチャラ男さん」
「確かに八重ちゃんのキャベツさばきはすごいが、守莉のタコも決して遅いわけじゃねえ。まだ勝負は分からねえぜ!」
「はい、これと言って面白味のない解説ありがとうございます」
なんか楽しそうに実況解説している帆風と谷川の二人組。
俺と万花ちゃんはそれぞれ皿に載せたりチョコを一口大に割ったりと裏方作業に徹している。
実際、二刀流でキャベツをみじん切りにする八重はすごい。
しっかり細かく切れていて慣れているのが分かる。
音村さんも手際よくタコを処理していって次の具材に取り掛かろうとしている。
というかお互い負けず嫌いなのか静かな闘志を感じる。
「翔琉、次は白菜をやるわよ!」
「任せろ!」
「万花、キャベツをさっさと終わらせましょう」
「うん!ウインナーは終わらせといたよ!」
どうなるこの勝負!というかなんだかんだで俺、頑張ってるな!
後編に続く。
字数が足りない。時間も足りない。頑張って書きます。