12四日目 後半
「ってことがあったんだよ」
「ま、発作みたいなものね。酷いときは夕方までずっとやってるわよ」
気軽に入っていいと言われたので灯台に向かってみた。
「ごめんくださーい…誰かいますか?」
中は静かで、入っていいとは言われたが気後れしてしまう。とりあえず上っていく。
すると最上階の窓際で椅子に座りながら本を読んでいる音村さんに遭遇した。
それで雑談がてら食パン屋の出来事を話していたというわけだ。
「万花の食パンはおいしかったでしょ」
「そりゃまあ。万花ちゃん的には納得してなかったみたいだけど」
「そうね、あの子の理想はどこにあるのかしら。食パンを10斤ほど渡されたときは冗談かと思ったわ」
音村さんは遠い目をして海を眺めている。当時の事を思い出しているんだろう。
「それであなた、暇つぶししに来ただけなの」
「気軽に来ていいって言われたから、まあ試しに。でもほかに誰もいないんだな」
「男どもは昼前まではいたわよ。今はマグロの一本釣りに挑戦しに行ったわ」
「…釣れるのか?」
「さぁ?」
心底どうでも良さそうに音村さんは返事をした。
でも釣り竿でカブトムシ釣ってたし、あいつらならいける気がする。
いや、さすがに無理か。だけど興味あるな。明日は海に行ってみようかな。
「翔琉、暇ならやることはたくさんあるわよ。灯台内の整理整頓、手伝いなさい」
いつの間にか読んでいた本を椅子の上におき、音村さんは一階へと降りようとしていた。
「いや、まあ暇だけどさあ」
灯台内は風がよく通りそこまで暑いわけじゃないけど、動いたら暑いからなあ。
なんて思ったが、暇つぶしに来たのも事実なので素直についていく。
一階は相変わらず雑然としていた。
「今日は本の整理をしましょう。日誌も漫画も順番がばらばらだから。やるわよ」
「わーい」
「わーい…?ああ、嬉しいってことね。順番通りに整理していって」
変な声が出てしまったが、好意的に解釈されてしまった。
それから1時間ほどダラダラ話しながら整理していく。意外と本は多い。
「海山辺村伝統料理集13って。ノートか。しかも全部手書き」
「それは右下に10までそろってるから」
「龍球の果てへボールを投げろ!じゃん、懐かしい。これ最後どうなったんだっけ?」
「まだ完結もしてないのに、何言ってるのよ」
「そうだっけ。そうだった」
それでも中身をチラチラ確認しつつ整理していたらあっという間に時間が経過した。
片付けついでに昔の漫画を読んでいたら時間を浪費してしまうというのはあるあるだと思う。
正直、半分ぐらいは整理できると思ったが2割ぐらいしか整理できなかった。
まだ明るいが時刻的には夕方だ、帰ったほうがいいだろう。
音村さんはこんびにまで海月さんを迎えに行くということで、そこまでは一緒に行くことになった。
「今日はあんなものね。助かったわ」
「いろんな本があって。結構楽しかったな」
「それは良かった、この夏休みの間に整理したいの。また頼むわね」
「あれぐらいならお安い御用だ。音村さんは本好きなの?」
「そうね、本は書いてある内容が変わらないでしょう。だから嫌いじゃないわ。またね」
「ああ、また」
いつの間にかこんびににたどり着いていたので、そこで別れる。
それにしても本は変わらないからってどういうことだろう。
まあ、表現は人それぞれか。帰ろう、今日も疲れた。
短め。10話以上書いてもうまくなってる気がしない。
音村守莉さんは無表情系クールお姉さん。面倒見が実はいいです。