~魔法の絵~
☆ここまでの登場人物紹介☆
アリーテ・ソフィア・リアルクローズ
14歳のお姫様。結婚が嫌で、お城を抜け出したい。
エトロフ・
17歳の獣人。変身が得意で、獣三盗賊の一人。
ガンジ・スネーク
13歳の獣人。鍵開、壁登が得意で、獣三盗賊の一人。
ヨシュア・ウルフ
15歳の獣人。2種の獣に化けられる、獣三盗賊の一人。
☆
「きゃっ」
お姫様が短く悲鳴をあげました。
今お姫様は、蒼い毛・金の瞳をした狼に乗って森の木の上を走り抜けていました。
木から木へと飛び移る姿は、とても狼とは思えない軽やかな動きでした。
「お姫様、あそこで一息つきますよ~♪」
前を見ると、エトロフが笑顔でそう言いました。
エトロフが指差した方を見ると、ついさっきまで人がいたような跡がありました。
そこに下りると狼は人に変身しました。
お姫様はまだ驚きを隠せません。すると、狼だった人が口を開きました。
「姫君、僕らは獣人と言って、獣と人のハーフです。」
「・・・え? じゃぁ、あの赤い髪の・・・」
お姫様の言葉に、赤髪の少年はキっとにらんで、
「『赤い髪』じゃねぇ! 俺の名前はガンジだ! 姫だかなんだか知らねぇけど、人の名前ぐれぇ覚えろよ!! それとコイツはヨシュアってんだ!」
と叫びました。
「ご、ごめんなさい。えっと・・・ガンジさんも、獣人なんですか??」
お姫様は少し困りながら聞きました。ガンジがまた叫ぶんじゃないかと、ヒヤヒヤしています。もしかしたら城の者に気づかれてしまうかもしれません。
するとヨシュア・・・狼だった人・・・が口を開きました。
「蛇と人のハーフだ。僕は狼と人・・・それと烏のハーフだ」
言い終わるとヨシュアは烏に化けました。
「!! ・・・すごいのね。烏にも化けられるなんて。あ、そういえば・・・」
お姫様は部屋に飾ってある絵に、烏と狐と蛇が描かれていることを思い出しました。
「その絵はお父様が書いたものなの」
お姫様のお父様は、お姫様が7歳になった誕生日に亡くなってしまったのです。
ですがお姫様は悲しくありません。悲しさは7歳の誕生日に届けられたその絵でなくなってしまったのです。
烏と狐と蛇・・・なんだかものすごく心が惹かれました。
「おい、その絵って・・・っ」
お姫様が思い出に耽っていると、突然ガンジが慌てだしました。
「あぁ・・・10年前の今日・・・『あの人』が書いた・・・」
エトロフもただ事ではない様子で、冷や汗を額にたらしました。
『・・・―――目指すは姫君の部屋―――・・・』
そうヨシュアが呟くと、ガンジは蛇に化け森へ消え、エトロフは狐に化け城へ向かい、ヨシュアは烏に化けお姫様を背中に乗せました。
「さっき化けていたときより大きいわね」
お姫様が首を傾げました。ヨシュアが烏に化けた姿はさっき化けていた姿より数倍も大きくなっていたのです。
『ある程度なら大きく化けられます。・・・ただ・・・』
「ただ?」
お姫様は羽ばたこうとしているヨシュアの背中にしっかり掴まりながら聞きます。
『ここまで大きくすると力の消耗が激しいので、3分も経てば小さい元の烏になります。』
その後「しっかり掴まっていてください」と呟いたヨシュアは城へ向かって飛び立ちました。
ヨシュアとお姫様はすぐにお城に着きました。お姫様は窓から部屋に入り、絵と着替えなどの最低限必要なものをショルダーバックに入れてヨシュアに飛び乗りました。
「ヨシュア、この後どうするの?!」
そのお姫様の言葉に、ヨシュアはしばらく考えてから
『姫君の父君の部屋へ向かう』
お姫様は「そんなの無理よ!」と言いました。
それもそのはず。お父様の書斎はお城の最も警備の整った場所の真ん中にあり、周りでは常日頃から侍女や兵士が忙しそうに歩き回っていくのです。
それに監視用の隠し穴があり、そこはいつも監視官が見ているのです。
そのことをヨシュアに話すと、狼に化けていきなり遠吠えをしました。
「ウオォォォォォォォォォォン―――・・・オォォォォォン―――・・・」
すると城の方から兵士の声が聞こえてきました。
「狼が来るぞ! 陛下殿を守れ!! 城に入れるなぁ!!!」
城のみんなは大騒ぎ。ヨシュアはそのまま色々な高さの鳴き声で遠吠えしました。
「群れよ! 狼の群れだわ!! みんな、急いで!!」
侍女が言います。
父君の部屋の周りには、誰一人といなくなりました。
きっと城門を閉めたり、窓の鍵を閉めたりするのにみんな気を取られて、父君の書斎の前に番を置くのを忘れてしまったのでしょう。
『これくらいで満足か、姫君―――・・・』
ヨシュアは隣で木の枝に座っていたお姫様に目を向けました。
「で、でも、監視官がまだいるわ! 監視官はいかなる場合でもその場を動かないの!!」
『姫君―――監視穴の場所は把握してるか』
「え、ええ。産まれた頃から住んでいるところですもの。でも廊下のほとんどは見えているわ」
『とにかく城内へ行くぞ』
そう言うとヨシュアは人間に化け、お姫様と一緒に木をつたって城内に向かいました。
一方その頃―――・・・
エトロフは侍女に化けて城内を探索していました。
妙な探りを入れられないように髪や瞳の色も地元の人そっくりにしました。
きれいな髪も後ろでひとつにまとめました。
身長も少し小さめにして、新人侍女になりすましたエトロフは、狼を入れまいと走り回る人たちにさりげなくついて行きながら書斎に少しずつ近づいていました。
そしてガンジは蛇に化けたまま屋根裏を通って書斎の真上まで来ていました。
人間に戻ったガンジはこっそり小さな穴を開けました。そこから様子を見ます。
ヨシュアは監視穴を慎重にかわしながら書斎へ向かっていました。
「はぁ、はぁ・・・」
お姫様は意識が朦朧としてきました。
ずっと寝てないのはもちろん、休みもしていないのですから無理もありません。
でも休んでいる暇はありません。
ヨシュアが遠吠えで兵士たちを遠ざけたとはいえ、いつ戻ってくるかわかりません。もしここで見つかってしまえば、城に侵入・姫を誘拐したl(と思われている)ヨシュアも、脱獄・不審者の侵入への協力をしたお姫様も捕まって、牢に入れられてしまいます。
「姫」
ヨシュアの声がしました。前を向くと、書斎への扉がありました。
「やっと・・・」
お姫様はつぶやきました。
扉を開けると侍女とガンジがいました。
「侍女っ!」
赤い髪、赤い瞳・・・お姫様は怖くなりました。
「お姫様、こんなところで何を?」
侍女が近づいてきます。お姫様はヨシュアの後ろに隠れました。
「・・・エトロフ・・・」
ヨシュアがそう言って侍女を睨みつけました。
「もぉ、ヨシュア君、こわぁ~い♪」
ヨシュアの言葉にお姫様は疑問を持ちましたが、さっきの侍女の口調でその疑問は答えを出しました。
「エトロフ・・・エトロフなのね?!」
お姫様はそう言いながら侍女に抱きつきました。
「お姫様ったら、だ・い・た・ん♪」
そう侍女は言いながら元のエトロフの姿に戻りました。
「姫」
ヨシュアは小さく「静かに」と言いました。
「ごめんなさい」
その後ヨシュアはゴホンと咳払いし、
「・・・絵は」
と、小さく問いかけました。
お姫様は薔薇が一輪あるだけの花瓶の隣に飾ってある家族の写真に手をそえました。お姫様とお父様、お母様それにお父様の妹・リーシェンも写っていました。
お姫様は写真の裏に手をまわし、写真立ての板を取り外しました。すると、写真とは違う、小さな紙切れのようなものがひらひらと、お姫様の足元に舞い落ちました。
ガンジがその紙切れを拾い上げましたが、
「なんだよこれ?! 何にも書かれてないじゃねぇかっ」
と文句を言いました。でも、声は小さなままでした。
エトロフもヨシュアも見ましたが、やっぱり何も書かれていませんでした。裏ももちろん見ました。でも、やっぱり何も書かれていないのです。
「おい、これ―――・・・」
ガンジが不思議そうな目でお姫様を見ました。
お久しぶりです!!
少々投稿が遅れてしまいましたが、無事、4話投稿することができました!これもそれも(どれだよ)、全部ぜんぶ、皆様のおかげでございます☆三
ガンジの呟いた一言、気になりますよね~っ!
でも、ここでネタバレするわけにはいけないんですよ(汗)
果たして、『絵』の正体とは・・・ !!!
次回、ご期待ください!!