~アトレア~
―――私のせいでエヴィは誘拐されたんだ・・・。
お姫様の頭の中はそれでいっぱいでした。
「おいっ」
ガンジの声で我に返ったお姫様の瞳は、涙でいっぱいでした。
「・・・ジ・・・ガン・・・ジ・・・ッッ」
ガンジのシャツの胸元をつかんで顔をうずめたお姫様は、わんわんと声をだして泣きました。
「ちょっ、おまっっ・・・」
いきなりお姫様に抱きつかれたガンジは、女の子に慣れていないので、慌てていました。
「ガンジィ・・・わたし・・・エヴィちゃんがっっ・・・」
エヴィが誘拐されたのは自分のせい、と思っているお姫様は、もう頭の中がめちゃくちゃでした。
「お・・・落ち着けよ・・・」
ガンジは慣れない手つきでお姫様の頭をぽんぽんと軽く叩きました。
その手は思っていたより大きくて、お姫様の心はふわふわとした大きな安心感に包まれました。
「ガンジ・・・ありが、と」
へへへ、と照れ笑いしたお姫様がふと顔をあげると、ガンジの顔は、
「ガンジ、顔真っ赤!」
真っ赤でした。ほんと、真っ赤。林檎みたいに真っ赤になったのは、手も、耳も・・・ガンジは全身真っ赤になっていたのです。
ぷしゅ~~~~っと、湯気があがりそうなくらいに。
あの後ガンジとお姫様は一階へ降りて、朝食をとりました。
「本当にごめんなさいっ!」
お姫様はまだエヴィがさらわれたのは自分のせい、と思っているので、朝食の後片付けに来てくれたコルディにもう一度謝りました。コルディは苦笑いしながら、「本当にいいのに・・・」とお姫様の頭を撫でました。
するとどうでしょう。
お姫様の顔は、急に真っ赤になったのです。
「おい、姫サン・・・いきなりどうしたんだよ?」
ガンジがお姫様の顔を覗き込もうとした瞬間・・・
「っっ・・・」
お姫様はバタッッ・・・と、突然倒れこんでしまったのです。
「おい、姫サン?!」
ガンジは混乱しました。手当ての仕方がわからないのです。エトロフは医療知識が豊富ですし、前いた村では盗みの前の信頼を築くところで、盗み先の子供の治療をしました。ヨシュアもエトロフ程ではありませんが、軽い熱や風邪、頭痛、腹痛などの基本的な病気は治せます。
「―――ンジっ!!」
混乱していたガンジの耳元にコルディの声が響きました。
「この子をユーズの部屋に運んで! 場所はわかるわね?!」
コルディは素早く支持を出すと、「おう」というガンジの返事も聞かずに、洗面所へと駆けていきました。
ユーズというのは、コルディの夫です。今は海外に『懲役』として、遠征に出かけています。懲役は、この世の悪を懲らしめる存在・・・とでも言っておきましょうか。まあ、警察のような役割です。警察と違うのは、規模の大きさ。警察が巨大な戦車や飛行船を使うのに対し、懲役は三~五人という少人数で行動し、殆ど徒歩です。なので、警察に戦力は劣りますが、飛行船や戦車が入り込めないところには懲役が行くことが多いですし、大陸の道なども熟知しているので、飛行船より先に事件の起きたところに着くこともめずらしくありません。それに戦力なら、懲役の一人一人が得意な武器を使うので、一般人や人殺しなんかも負けることは殆どありません。ユーズは、そんな懲役の中でもトップの成績で、有名でした。何年か前に起きた『ソレイユの混乱』と呼ばれる警察と国が敵対した事件では、中立の立場から事件を見事解決し、『英雄』と呼ばれた時もあったのです。
今は遠征でいませんが、コルディの胸元には、ユーズの幼少時代愛用していた武器『武棒』の壊れたときの破片がネックレスとなってぶらさがっています。
ユーズの部屋のベットにお姫様を寝かせたガンジは、コルディが遅いので様子を見に行こうかと思いました。でも、「うぅ・・・」と苦しそうに呻くお姫様をほったらかして置いて行くなんてことは、ガンジにはできませんでした。普段は憎まれ口であっても、本当は優しい心の持ち主なのです。
「・・・・・・―――レア――-・・・・・・」
ガンジは、自分の耳を疑いました。
「アトレア・・・だと・・・?!」
---アトレア。それは---
ついにきました15話です! いやぁ~・・・~犯人はあなた~は、次話の次話になりそうです。すみませんねぇ~ホント。
お姫様が最後に呟いた『アトレア』一体なんなんでしょうか? 人? 物? 時代??
色々な考えがあるかと思いますが・・・是非これからもご期待ください^^
ちなみに、「アトレア」が何かは、私もわかりません。思いつきで書く物語だからです。
次話もなるべく早くお届けいたしますね^^