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第7話 2日連続なんて、迷惑だったかな…

 雉矢の家…………今日も来てしまった。迷惑かもしれないし、居ないかもしれない。それでも私の身体は勝手に動いていた。彩羅に対する嫉妬。私はここまで嫉妬深かったのか。


 それともこれは普通なのだろうか。私には分かったことではない。そもそも知ったことじゃない。私にはそんな事関係ない。ただ行動さえしておけばいいのだから。


 それでも、インターホンを押すのをためらってしまう。緊張している。まだ恥ずかしい。なんだか怖い。そんな心境だ。でもここまで来てしまった………それならばいっそやってしまった方が楽。いや、まだここまでしか来てない。


 ならば、まだ引き返すことができる。けれどそれでいいのだろうか………私は一体、どうしたいのだろう。こんなところで悩んでばかりで。こんなに優柔不断で。気持ちは出てるでしょう?じゃあ行動しなきゃいけないのに。このままじゃ彩羅に追いつくことなんてできやしないのに。


「………よし。」


深呼吸1つおいて、ようやく決心する。ここまでかれこれ十数分。本当、何してんだろうな私は。そうして私はインターホンを押した。返事が来るまでの時間、これが一番緊張する。


 あぁ、何でこんな時間なんだろう。もっとあるだろうに。こんな夕飯前の時間。迷惑に決まってる。何でこんな事やっちゃうんだろう。いろいろな気持ちが渦巻く。昨日よりももっと。2日連続なんて、迷惑じゃん………。そうして、しばらくして扉が開く。


「あら、染羅ちゃん。今日も雉矢?」


雉矢のお母さんだ。


「はい………今日も借りていいですか………?」


「うん、許す。何ならあげたっていいって昨日も言ったでしょう?ちょっと待っててね。」


そう言うとおばさんは雉矢を呼ぶために一旦仲へと入っていった。それにしてもあの一言は余計ですよ………。少し心拍数が上がり、既に顔が熱い。あぁ、恥ずかしい。


「染羅、今日も来たんだ。」


「しつこかった?」


「いや、そんな事無いよ。」


「じゃあ今日も―――――。」


そこまで言いかけたところで雉矢が口を挟んだ。


「今日はさ、ちょっと散歩しながら話さない?」


「う、うん。」


そうして、昨日のように夜の街を歩いていく。やっぱり人通りは皆無に等しい。そんな中で静かに私達は歩みを進めていた。


「そいえば話しながらって………。」


「あ、そうだったな。自分で言ってたのに………。その、なんていうかさ………彩羅とは、仲いいの?」


「………いい、と思う。」


自分でも不確かだ。喧嘩という喧嘩はしてないが、あんまり話もしていない。悪い言い方をしてしまえば雉矢のせいだ。どっちか早く選んでほしい。でも私はその結果に納得できるかどうか怪しい。怖い。選ばれないのが。その結果に納得できず自分を保てないかもしれない。それが、本当に怖い。


「そっか。まぁそうだよな。好きな人がおんなじって、こうなるよな。」


「分かってるんだったら、早く選んでよ。」


急かしてしまう。絶望するだけかもしれないのに私は………何でこんな事。


「優柔不断なやつと付き合っても嬉しくはないだろう?いつかちゃんと決める。でもまだ、わかんないんだよ………。」


「………どっちのアプローチのほうが好きなの?」


「おんなじくらい、ドキドキしてる。」


「欲張りめ。」


「ごめんなさい………でも、2人とも凄いドキドキすることしてくるからさ。自分でも、なんか今まで以上にわかんなくなってきちゃってさ。それに、この感覚『好き』とはまた違う気がして。僕も分かってないんだけどさ。ずっと一緒に居たいっていう感覚とはまた違うかなって。」


「そっか………。」


まだ、好きとも思われてないんだ。私はこんなに好きなのに、思いが届かない。辛いな。


「本当、ごめん。」


「なんで、人生ってこんなに上手くいかにのかな………。」


気づけば私は愚痴をこぼしていた。普段こんなことはなかったのに。よほどショックだったのだろう。早く応えてほしい。でも、自分の答えを出してほしい。そんな相反する考えが私の中にはあった。辛い、苦しい、解き放たれたい。どっちにしても、雉矢が決めること。尚の事歯痒い。


「本当、もう限界。」


その一言と共に私のリミッターが外れた。夜の街。私は雉矢目の前に立った。2人とも歩みを止めている。昨日と似たような構図。ただ、昨日と違うのは今の私は多少大胆なことでもやってしまうかもしれないと言うのがあげられる。でも、もうしょうがない。何もかも仕方なかったんだ。


「雉矢。もうどれだけ聞いてるかわかんないけど今日も言わせて。」


その言葉とともに私は雉矢に一歩近づく。


「お、おう。」


おどおどした反応。彩羅じゃないけどやっぱり、この姿っていうのはかなり可愛い。どうして、こんなにも愛おしく感じてしまうのか。好きだからだろう。じゃあやっぱり伝えなきゃ。


「好きだよ。ちょっとしゃがんで?」


もう、この先は自分じゃ止められない。


「う、うん。」


雉矢と私の背が同じくらいになる。ここからは私の勇気次第だ。顔をゆっくり近づけていく。はぁ、緊張する。大丈夫、彩羅もやってた。だったら、お返し。そうして………唇と唇が触れ合った。私にとって、初めてのキス。雉矢にとっては何度目かのキス………。辛い。駄目だな。辛いが口癖になっている。


「私の初めてのキス。」


「お、おう。」


「どうだった?」


自分でも止められない。でも、しょうがないよね………しょうがないんだよね………。


「どうって言われても………不意打ちがすぎる。」


「だから意味があるんじゃん。ねぇ、どうだった。彩羅のと比べて。」


どんどん、求めていくようになっている。雉矢の評価を求めていくようになっていく。こんなんじゃ嫌われるかもしれないのに、自分でもおかしいなって思っているのに。それでも………しょうがないよね。


「彩羅のと比べて………ドキドキはした。」


「そっか………良かった。」


何が良かったんだか。今の私は、自分のことしか考えてない。そんなので良かったわけがない。しょうがないわけがない。でも………でも………苦しいよ………。


「染羅、今まで我慢してたのか?」


その声の持ち主は勿論、雉矢だった。その声で私は我に帰る。


「雉矢………?」


我慢、していたのかもしれない。それが爆発したのかもしれない。そういうことにしておけば、生姜内で片付けることができるかもしれない。私はそれに乗っかっていいのだろうか?


「今まで我慢させてきてたのなら、ごめん。」


「雉矢が謝ることじゃないよ。しょうがないんだから。」


「しょうがない………?」


「彩羅も私も、雉矢のことが好きだから。嫉妬するのは当たり前。まだ、雉矢が決めきれないことに関しては、もうしょうがないとしか言いようがない。だからいいんだよ。全部。」


自分でも、頭の中がぐちゃぐちゃになってることくらい分かっている。キスして、嫉妬して、自分をなだめて、落ち着かせて………パニック状態もいいところだ。私は………どうやら今日はとんでもなくおかしい日なのだろう。支離滅裂で、自問自答を繰り返して、自分でも答えを見失って。がむしゃらなんて言葉で片付けることができたのならいいけれど、どうやらそんな可愛い言葉で収まりそうにない。今、自分でも気がついていることを述べるとしたら、私は狂ってる。狂わされてる。雉矢にも、彩羅にも、そしてこの感情自体にも。


「染羅………大丈夫か………?」


「大丈夫なわけ無いじゃん!もう、おかしくなりそうだよ!自分でもよくわかんないよ!何が正しいかなんて………全然しょうがなくなんてなかったんだよ………ごめん雉矢………。」


柄にもなく声を荒げてしまった。どうしていいかわからない。収集なんて付きっこない。


「あやまんなくていいよ。と、言うか僕のほうが謝んないといけないのに………もっと自分に素直でいいんだよ。」


雉矢の声が聞こえた。自分に………素直。私は、囚われていたのかもしれない。固定概念の中に、閉じこもってたのかもしれない。その中から彩羅と雉矢のこと見ながら羨ましがってた。私と雉矢、2人だけの世界に閉じこもろうとしてた。まるでいつかみたいに………。


「………雉矢の…馬鹿野郎。」


「あぁ、ごめんなさい。」


あのときと、似たような感覚。また雉矢は、私に外を見せてくれた。私と雉矢、2人で一緒に外に出よう。

どうか…評価を………(バタン)

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