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第21話 ゴールデンウィーク

 何も進展などないまま、迎えてしまったのはゴールデンウィーク。今の僕にとって、ただ時間が過ぎていく地獄の期間だ。何も始まらないまま、けじめのつかないまま、大切な時間が過ぎ去っていく。そのことについて、僕は疑問を持たないようにしていた。そうでもしないと自分が惨めに思えて仕方ないからだった。どうも、僕の精神というのはかなり弱いらしい。そして、不意に家のチャイムは鳴り響いた。誰だと思うも、そうだ思い出した。この前、彩羅と染羅が家にきたときだったか。ゴールデンウィークも来る旨を伝えられたのだった。じゃあこれは、多分あの2人だな。


 そして僕は服を着替えて玄関へと向かった。案の定と言うか、そこに立っていたのは彩羅と染羅だった。


「おはよう、雉矢。」


「あぁ、おはよう。」


「なんか元気無いね?どうかしたの?」


彩羅はそんなこと言ってるが逆だ。彩羅が元気すぎる。なにせ今は朝の7時。僕だって休みたいときくらいあるのだから今は寝起きだ。なぜここまでのテンションが出せるのか僕には皆目見当もつかない。


「寝起きだからだ。染羅だって、結構眠そうに………。」


そこまで言いかけてやめた。確かに染羅は何も話さなかったが考えてみれば染羅は無口だし、目は完全に冴えていた。どことなく表情からは気合すら感じるレベルだった。


「いや、ゴメンなんでも無い。」


僕は彼女たちに向けてそう言った。うん、とても楽しみだったのだろうな………。それだけは2人の風貌を見ててもよく伝わってきた。


「まぁ、そろそろアレだね。家入ろうか。」


「「うん。」」


2人の息のあったその声を受け、僕は2人を家に招き入れた。そうして彼女たちは流れるように僕の部屋に向かっていく。そのことに関しては僕自身もう慣れていたようだ。さて、そうして僕の部屋の中で何をするでもなく床に座る3人。特に何も話すことはないだろうにどうして僕なのだろうか。いや、答えは知っている。とうの昔から、ずっと。


「さてと………それでさ雉矢、最近私達と話してないじゃん?」


「あぁ、そう言われれば時間割けれなかったな。」


「もしかして………他に好きな人でもできたの?それならそれでいいんだけどさ………。正直に答えて?」


「あ………あぁそれか。悪かった。最近、相談をに乗ってやらなくちゃいけない人が出てきてだな。それで時間割けれなかった。ごめん。」


「それ、本当なんだね?」


そうやって喰い気味に聞いてきたのは染羅だった。そうか、あれは覚悟を決めた顔でもあったのか。そんなことを思い知らされ僕はまた申し訳ない気持ちになる。


「あぁ、本当だよ。前、烏丸さんって話しかけてきてたやついるだろう。そいつがちょっとしんどいような状況でな。どうにかして元気になってもらいたくて。」


「私達に相談してくれればいいのに。どうにかできるかもしれないじゃん。」


そう言ってきたのは彩羅だった。非常に頼りがいのある言葉だ。しかし、どうにかできるのだろうか?僕含めた3人。鳥塚さん、朱雀さんの知恵でも駄目だった。三人寄れば文殊の知恵。では5人集まれば?この藁にでもすがってみようか。


「わかった。彩羅、染羅、頼まれてくれるか?」


「当たり前じゃん。」という彩羅とは反対に染羅が言った。


「まずどんな悩みか教えてよ。」


言われてみればそうだ。あぁ、寝起きなのか頭が全く回ってないじゃないか。こんな僕で大丈夫なんだか。わからない。わからないことにしておく。まだ、ほんの少しの自信を持っていたいから。


「あぁ、それもそうだな。疲れてんのかな、頭回ってなかった。端的に言ってしまえば、失恋。そのことがあってから本当に元気がなくなっちゃった感じで………まだほんの少ししか経ってないのになんでだろうな。幼馴染に振られたんだってさ。それで………落ち込むなんてどころの話じゃない。」


「ほう、因みにその幼馴染はなんで振ったの?」


「別に好きな人がいるんだってさ。もともと、烏丸さんだって無茶なことっていうのはわかってたらしい。でも………夢見たかったんだろな。」


そう言うと、染羅が話し始めた。


「なんと言うかさ………やっぱり時間の問題なんじゃないかなって私は思う。多分立ち直るかどうかは本人次第。私達はあくまで発言しかできないから。難しいような気がする。」


その言葉に既視感を覚えていた僕はすぐに記憶を辿った。そうして出てきたのは案外最近の記憶。そうだ、僕もそんなことを考えてた。


「はは………染羅、俺と同じこと言ってる。烏丸さんにもそう言ったよ。どうなるかは、烏丸さん次第だ。でも………このままでいいのかはやっぱり心配だ。」


「………あとは、烏丸さんの選択次第だよ。もう、本人に任せるしか無いんじゃないかな。」


不意にそう言い出した染羅。たしかに何も間違っちゃいない。ただ僕はその言い方からもどこかもう話を終わりにしたいという染羅の意思が伝わってきた。どこか、投げやりなような気がする。考え過ぎなのだろうか?それとも………やはり、僕を取られたくないのだろうか?どちらにせよ………今の染羅の発言は間違ってなかった。


「…そうだよ。今考えたって何も変わりなんてしないよ。」


彩羅も染羅の意見に便乗する。やっぱりというか………話題を変えようとしているようだった。確かに、悩んでも何もできない。そのことは知っている。一度悩むのはやめよう。そうして烏丸さんの未来のことは、烏丸さんに託そう。僕はそうするしか無いのだと自分に言い聞かせた。


 そうしてどれほど経ったか。僕達はあのあとただただ、駄弁っていた。どこか胸に突っ抱えてるものが気になりはしたが、やはり言い出せる勇気などなかった。そうしてまた時間だけが過ぎていく。確かに、悩むなんて馬鹿らしい。時間の無駄でしか無い。悩んでいる間思考などできないのだから。じゃあ何をするのか。考えるのである。考えた末、最善で行動するのである。今回の件、僕はそれを全うした。それなのに気になって気になってしょうがない。どうも、今回僕は本気で悩んでいる。もう結論は出た。結論は出たのに突っかかる。しょうがない。それが僕の性というやつなのだから。矛盾している。考えとやってることが。それでも、なぜかしょうがないで済まされる。いや、済ましている。こういうふうに育ってしまったから。しょうがないんだ。


「いやー、なんかお腹空いたね?今何時?」


先程までかなりの勢いで喋っていた彩羅の声が響く。そうして彩羅は僕の部屋にかけてある時計を見た。その針はお昼を指している。よくもまぁ5時間ノンストップで会話が続くものである。


「ひえーかなり話してたんだ。もう12時じゃん。どれだけ会話が続くのさ。」


確かに並の関係じゃこんなことできないだろう。仲がいいのは基本的にいいことだと思う。ただ、ここまでだとは僕も思ってなかった。時間を忘れてしまうほどに楽しい。やっぱり、僕はこのままを望んでしまう。なにも買われない僕がそこには居た。それをいつも僕は他人事のように………どうしてか憤りを感じる。気がついている………気がついてないことにしたい。僕はどうしても逃げて、閉じこもって、忘れようとして。他の人の気持ちの考えることのできない悪い人間のようだ。その行為が正しくても………やっぱり、僕は僕のことを正当化したいだけなんだ。こんな人に誰かの彼氏?務まるわけがないだろう。ましてや相談相手?どうにも烏丸さんは、やはり相談相手を間違えていたらしい。

そろそろ物語動かします

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