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第二話 超能力

主に超能力についての話になります。怪人は出ません。


学校


怪人を倒した俺はそそくさとその場を立ち去り、何食わぬ顔で学校に登校した。

 今頃は警察によって駅前は封鎖され、怪人の残骸の回収と除染作業が行われて居る頃だろう。毒を持っている怪人もいたりするから事後処理も大変だ。


「おお!城ヶ根!無事だったか!?」

教室に入ると、先生が真っ先に無事を確認してくる。怪人の出現はかなりの騒ぎになっていた。時間にしてたったの10数分間で撃破されたために緊急警報は出なかったものの、確かにこの騒ぎで朝のホームルームにいないとなっては心配されるか。

「すみません。モノレールが止まってしまって」

「無事で何よりだ。さ、授業の支度をしろ」

丁度世界史の時間。教師は担任が務めている。…遅刻は免除だな


教科書とノートとペンを準備して席に着く。こうして今日は既にいろいろあったけど一日が始まった。



・・・



昼休み。

さてと。学食行くか。

この学校は殆ど全寮制で大半が寮生なので、不自由無いように大きな食堂が備えられている。寮生向けだが朝食と夕飯も提供していて、その上味がよくて安いので結構な数の生徒が利用している。


食堂

「いらっしゃい。いつもの?」

「いつものでお願いします」 

 食堂のおばさんは名前も知らない人だけど、こちらは数少ない男子でその上「毎回そばしか頼まない奴」なので、入学から一ヶ月経った今では完全に顔を覚えられてしまった。

 いつも通り、ワカメとネギがのったそばを貰って七味を一振りして席へ。

 席は何となく近寄りがたいクラスメートとは離れた長いテーブルの隅にしている。


 食べ始めて暫くして、向かい側に誰かが座った。

 俺は気づかれないように少しだけ、自然な動作で顔を上げる。そうすると制服の胸についた校章…刺繍が見えるのでそれを確認。・・・3年生か。

一応、先輩に対して失礼のないように、相手が何年生なのか確かめる手段が存在している。胸の刺繍はその一つで、盾のような形のエンブレムの枠に刻まれたラインが赤ならば1年生、緑ならば2年生、そして3年生は黄色になっている。

 この向かいに座った誰かは黄色の枠だったので3年生ということになる。


「ねぇ」

 俺は凄まじく嫌な予感を感じ取ってシカトを決め込むことにした。上手くいけば「人違いです!」で済むかもしれない。

 しかし名も知らない先輩は俺が聞こえなかったのだとでも思ったのか、さらに続ける

「ねぇってば。城ヶ根君」

ちっ。こいつ名前知ってやがる。もうシカトは効果無いか


「なんですか?・・・先輩」

こちらは名前も知らないのでただ先輩とだけ呼ぶ。

ここで初めて相手の顔を見た。

結構な美人だった。


「君ってさ、…隠し事とかしてない?」


「してませんよ。何も」

別に何も隠しては居ない筈だ。


「本当に?」


「ええ」


「だったら…“能力もち”ってこと、皆に話しても大丈夫?」


はぁ。またこれだよ

能力もち…超能力を宿している人間はどの時代も差別の対象にされている。

 明確な…それこそ俺のように兵器を呼び寄せたり出来る…能力が宿るようになったのは隕石が墜落して以降だ。だが小規模な、本当にちょっと、タバコに火を付ける程度の炎を出したり、本来見えない筈の物が見えたりというような能力はずっと前からこの星に存在していた。

 有名な話しだと「魔女狩り」。超能力…とはいっても本当に微々たるものなのだが、その力を恐れた人々は超能力者を魔女だのと言い訳を付けて火あぶりにしてしまったらしい。小心者すぎて笑える物だ。タバコに火を付ける程度の超能力をどう恐れようというのだろうか。ただ実際にそんな事がまかり通るほど差別は酷かったみたいだが。


 最近はレンジャーの活躍で反応が変わりつつあるけれども、根本的な世間一般の扱いは変わらない。恐れと怯え、そして僅かな好奇心だけ。

 そんなわけで、国連軍はレンジャー部隊結成のために世界中で超能力者を募集したが、名乗り出た者はごく僅かだったという。まあこれまで差別されてきたのだから当たり前だろう。

 実際、レンジャーの設立は反対意見も多かったそうだ。曰く「あんな“怪人と変わらない奴ら”に世界が守れるのか?」と。


 少なくとも国連の見立てでは100人に1人程度は何らかの超能力を持っているらしい。それなのに好待遇の募集で数人…よっぽど戦争向きで、脅してくる相手を黙らせられる程強い超能力を持つ人以外名乗り出なかったのはそれだけ秘密にしないと生きて行く上で辛いと言うことだろう

 

「何が望みですか?」

 取り敢えず、聞いてみる。


「ちょっと場所移そうか。ここだと…ほら」

ろくでもねえ。絶対に碌な事じゃないな。

やっぱり女子は男子よりおっかない。

「ここで話せない時点で論外ですね。」


「ふぅん…いいんだ。」


「別にいいですよ。むしろ、先輩のほうが俺なんかと話してると変なウワサ流れますよ?」


「っ!…そう。どうなっても知らないから」

先輩は元々食事をしに来たわけでも無かったらしく、捨て台詞を吐くとそのまま去って行った

 

 ちなみに俺の能力については事前に学校と協定が結ばれているから変な事実が広まった所で特に問題はない。

 学校はこの厄介者を生徒として迎え入れる代わりに有事の際に国連軍のレンジャーから護衛を受けるというものだ。ようは学校を護れ、と。・・・これはこれでろくでもないな。


 

 

ーーー

 捕捉としては、現実はもっと酷いものだ。超能力とはいっても大半が「コップの中の水を凍らせる」「ろうそくに火を付ける程度の炎を出す」と行った物なので物理的に人殺しが出来る訳ではない。高々タバコに火を付ける程度の炎を恐れた先人とは違って現代人は小心者ではなく、相手が反撃出来ないのをいいことに差別の対象にするため、彼らは社会的なハンデを課せられて残酷ないじめを受けている。

ーーー


俺はそそくさと蕎麦の残りを食べ終えると食堂を立ち去った。


・・・

・・


こんな訳で散々な扱いを受けるのが「超能力」。

 でもこんな超能力が俺にとっては怪獣怪人侵略者を倒す唯一の手段だ。




・・・

放課後 国連軍司令部


その後は特に何も起こる事は無く放課後になった。除染作業が完了して駅前の封鎖も解除されていたので、モノレールに乗って東京要塞中心部へ。

 地下へ地下へ降りて行き、国連軍の司令部へ行く。

 門番となる衛兵がいるのだから、彼らは俺を見た瞬間に「ご苦労様です!!」と見事な敬礼をしてきたから驚いてしまった。勘弁して欲しい。

 

司令部は要塞の中の地下20階の地点にある。太陽の光は当然届かないが沢山の電灯で昼間のように明るい。そんな司令部の奥に中将さんの執務室がある。

 ノックすると「どうぞ」と声がしたので一礼して中へ入る。




「お疲れ様勇輝君。よくやったわね!流石だわ!」

「・・・」

開口一番、中将さんは盛大に褒めてきた。

お説教を受けると思っていたら突然褒められたために拍子抜けしてしまった。


「怪人を倒したから手当が出るわよ。それに加えて警察から感謝状と金一封も出たから美味しい物でも食べなさい。」

 手当か…怪人倒すと本当にお金が貰えるんだな…幾らぐらいになるんだろう。ていうか金一封って…


「ありがとうございます。にしても警察からですか」


むしろ「俺達の仕事を邪魔するんじゃねえ」と怒られそうな物だけど


しかし中将さんは何を今更、という表情で返す

「あのままあの怪人が暴れてたら、警察の機動隊が到着する頃には負傷者が三倍になっていたとの見立てよ?。少なくともこの町に面子を気にするような組織は無いわ。」

 東京要塞は、これまで比較的影が薄かった国連軍はともかく、警察と国防軍が強力して護っている。

「それもそうですね。確かに怪人や怪獣なんて一蓮托生して掛からないと倒せる相手ではないですね。これは馬鹿な事を考えました」


「それだけ余裕が無いって事よ。にしても今回はイレギュラーだったから」

 やっぱりか。話せるしやたらと超能力が目だつし変わった怪人だと思ったら…

「ってことは…あの怪人はやはり“普通のやつ”ではないんですね?」

「あんな馬鹿みたいな超能力、“オリジナル”以外で見たこと無いわよ。解析部で調査が進んでいるけど、…もしもあんな超能力を付与する「覚醒剤」があるなら、それはほぼ間違いなく地球の物では無いでしょうね」

 

 超能力を得る方法はいくつかあるが、怪人化して得られる超能力は、生まれつき宿している“オリジナル”の能力に比べて大幅に劣るという。

 怪人が欠陥品扱いされる理由の一つだ。

 悪魔の薬「覚醒剤」は元々侵略宇宙人が地球にばらまいた人を怪物に変える薬を鹵獲した物なのでそれ自体がオーバーテクノロジー。とてもではないが改良を施せる物では無いらしい。

 しかし現実に明らかにこれまでとは格が違う怪人が現れた訳だ。人間には出来ない事をする…そういう超能力の仕業なのか、もしくは人類の化学力を上回る宇宙人なのか。

「クスリが違うと見て間違いないと思いますよ?」

「…何か知ってる?」

俺は怪人がどういう奴だったのか見た訳だ。その異常さについて話して行く

……


「まず話せるっていう時点でどうかしてますよね?怪人に話しかけた俺も俺ですけど。」

 アドレナリンの影響だろうか。怪人や敵を前にするとどうしても気分が高まってキャラが崩れるから困る


 

「…完璧に黒ね。やっぱりあなたから直接話しを聞いて良かったわ。お手柄よ。…超能力なのか、宇宙人の化学なのか、ましてや何処かのマッドサイエンティストがやらかしたのか…いずれにしてもその「トクベツナクスリ」とやらを造った誰かがいる。」

 背後に何か居るってか。それこそ悪の組織だな。碌な奴じゃないだろう

 中将さんは暫く考える素振りを見せると続ける。

「ま、それを調べるのは警察の仕事ね。でも気を付けなさい。こうして人体に使うまで開発が進んでいるのだから薬はきっとまだある筈。…いつ同じような怪人が現れるとも限らないわ。」

 

 

「どんな敵でも返り討ちにしてやりますよ。」

俺はレンジャーの一員。ならば怪人や怪獣を刈り尽くすのみ。


「気を付けなさい。勝って兜の緒を締めよ、っていう諺の通りね。賞金が出た所で申し訳ないけど、当面この町は厳戒態勢だわ。」


「…どうにも初勝利に浮かれていた見たいです。

十分に警戒しないとですね。」

(俺の超能力は無限でも無償でもないしな…)


「今日はもう休みなさい。明日も学校でしょう?」

18:00

「そう言えばもうこんな時間でしたか。おやすみなさい中将さん。」


ーーー

彼が出て行った後、中将さん…桐島きりしま さくら中将はすっかり冷たくなった、彼が来る前から置いてあったコーヒーを手に取り一口飲む。

 「全く…たいした物ね。」


本人は知らないが…

実は城ヶ根勇輝の存在は様々な場所で大いに期待されていた。

 日本初のレンジャー誕生に湧いた日本そのものも、今まで強力な超能力者がおらず国連軍での立場が弱かったが彼の誕生で切り札を有する事になった政府も、そして「武器を無制限に召喚出来、そしてそれらを自由自在に操ることが出来る」というチートな超能力を有する彼にはレンジャー部隊の上部組織になる国連軍も注目していた。

 その上で今回の勝利だ。「初陣にして強力な怪人を相手にして圧勝撃破」という今回のニュースは本人がおとなしく高校で授業を聞き、そして警察の処理班が回収と除染作業をしている間に関係各所を駆け巡り、大いに納得させ、さらに求めた。


 桐島中将はせめて普通の高校生活を送らせるためそんな思惑から彼を護らねば、と自分が浮かれてどうすると気を引き締めた。



 そんな事情を知るよしも無く、彼はこれからも戦いを続ける…

 

 


桐島中将は主人公の姉のようなポジションにいます。


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