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第10話 VSダイヤモンス2


ダイヤモンスは依然として首都方面へ向けて進行を続けていた。必殺光線で吹き飛ばした御正体山と丹沢山を突っ切って相模原へ至る最短ルートをゆっくりと歩いている。

 東京要塞の防壁は幾ら分厚いとはいっても山を二つも吹き飛ばすような威力の破壊光線を防げるとは思えず、これまでの戦闘を見て司令部では参謀達が作戦を練っていた。


「もう一度長槍で叩くべきだ。」


「長槍で叩いた後はどうする?陸上部隊と航空部隊では…」


「一度は追い詰めている。全ての火力を合わせて飽和攻撃を加えれば倒せる。」


ダイヤモンス単体を倒す手立ては立っている。もう一度長槍で背中のクリスタルを破壊し、倒れるまで攻撃を加えれば撃破出来る。単純な作戦だが単一目標を撃破する事なので総力戦が最適と言えた。

 極論を言えば足りない火力は他から持ってくればいい。一度祖国を滅ぼされかけた彼らは出し惜しみをする気は毛頭無かった。既に大怪獣出現を受けて全国に分散配備された駐留部隊を招集し始め、国連軍へも応援を頼んで居る。

 しかし一番厄介な問題が残っている


「あとは…あの謎の光だが…」


そう、問題はあの怪獣を癒やした謎の光の粒子だ。この光の粒子の正体は全く分からない。


 一度だけならばさほど問題では無い。山は二つも吹き飛ばされ、既に麓の町や村が壊滅状態にあるとはいえ軍隊はと言うと損害らしい損害はなく、まだ燃料弾薬も十分にある。


 20年前の怪獣襲来前の自衛隊ならともかく、今の国防軍には大怪獣を倒せる戦力があった。そもそもの人類と怪獣との戦争で見ればたとえいかなる損害を出そうとも怪獣を倒せなかった…つまりは人類が絶滅したケースは無い。

 何分、何時間、何日も攻撃を続ければやがて力尽きるのは怪獣…持久戦を仕掛ければ時間と燃料は人類の味方だった。


 しかし…あの“回復”はそれを全て覆す可能性がある。何分、何時間、何日かけて致命傷を与えた所で回復されたのでは持久戦で負けるのは人類になる。


「あの現象については現在解析中だ。結果が出るまで攻撃をやめたらどうだね?」


「そうだ。弾薬には限りがある。温存すべきだ」


「しかし…首都が必殺光線の射程圏内に入るのはたったの3時間後だぞ。」


正確には2時間後には東京要塞外周の神奈川付近を完全に焼き払う事が可能で、さらに30分後には要塞外壁が射程圏内に入る。


「短期決戦で仕留めるべきだ!」


作戦は回復を使われる前もしくは回復が追いつかないほど素早く攻撃をたたき込み一気に倒してしまうというものと、光の粒子について調べてから攻撃する案とに別れた。


 しかし結局はタイムリミットは多く見積もってもたったの3時間しかなく、相手は恐ろしい範囲殲滅…シンチレーションを放つダイヤモンスだという事も考慮し、丹沢を超えて市街地へ降りる前に撃破する事を目標として短期決戦を狙う案が可決された。


 これを受けて国防軍全軍には再び攻撃命令が下り海軍が、空軍が、陸軍が準備を始めた。



……

その頃…


東京要塞 学校


「落ち着いてシェルターへ避難をお願いします。」

 要塞の至る所で上層…地上に当たる普段の生活圏にいる人々を下層のシェルターへと誘導していた。

 怪獣は首都方面へ進行中とはいってもまだまだ十分に時間はあるため、要塞内部に怪人が出現したときとは違って特にパニックになる様子も無かった。

 パニックにならないのは学校も同じだった。




「怪獣が来たんだ…」

「4時間目は中止かぁ…」

学校はすぐさま授業が中断し、地下深くのシェルターへと避難を開始していた。とはいっても寮生にしてみれば普段の自室に戻るだけなのだが…。

 寮含む居住区画は地下深くに存在しているため、たとえ大怪獣の必殺ブレスが要塞外壁に直撃したとしても中に住んでいる人々は助かる。

 

(にしても大怪獣か……………行くか。)


4時間目の授業は中止になって避難する事になったので、そのどさくさに紛れてトイレに駆け込む。

 

(転送装置…本当に使えるのかな)

使うのは例の商人から貰ったブレスレット型の瞬間移動装置だ。使い方は分かるが未だに使った事は無いしそもそも使う機会が無かった。

 人含む物質を何処かへ瞬間移動させるというのはいまいち実感が湧かない。

 本当に使えるのだろうか…


 勇輝は試しに学校の正門前へ転送させてみた。


 すると…次の瞬間には学校の正門前にいた。

…本当に使えるようだ。

 この転移装置は行った事のある場所にしか転送出来ないそうだが、幸いにも勇輝は富士山にこそ登った事はないにせよ麓の遊園地へは行った事があったため、その付近へと転送してみた。


「おお…本当に富士急…」

思わず声が出る…釦を押しただけで目の前に富士山がそびえていた。

(本当に便利だな…こんな物をタダで渡すとは恐ろしい奴らだ)

勇輝は宇宙人の未知なるテクノロジーを恐れたが、実際にはこの転送装置は性能もトホホな安物だったりする…のは別の話。

 

 しかし転送装置で行くことが出来るのはここまで。今怪獣がいるのはもともと山中だった丹沢の付近なのでそこまでは徒歩で行くしかない。


「…変身」

パワードスーツに着替える。


この変身は基本的に超能力に依存して戦うことになるレンジャーのために作られた物で多少の衝撃や毒や熱などを吸収、弾いてくれる上にパワードスーツなので人間に出来ない行動を可能にする。

 流石に人間には無理な動作なので相応の身体能力は必要とするが車並みの速度で走る事も可能としていた。

 

「…走るか…」


勇輝はそのパワードスーツの力をフル活用し、人間とは思えない速さで走り出した。




「…谷だ」

30分程走ると谷に出た。大怪獣ダイヤモンスが必殺ブレスでもって吹き飛ばして出来た巨大な谷だ。周囲には焦げた匂いが立ちこめている。


圧倒的な熱量と貫通力を誇る大怪獣クラスの必殺ブレスは木々を絶やす燃やし尽くし土すら燃やして全てを灰に変えてしまった。


 山をえぐられた谷は湧き水があふれ出して本当に川の流れる谷になっている。

 ここを下ればダイヤモンスにたどり着ける筈だ。

 勇輝はまた走り出した。



 そして数十分が経った後…突如として戦いは始まった。



大怪獣ダイヤモンスは変わらず光線で吹き飛ばして出来た道を進行していた。陸海空軍は総力を集めた集中攻撃の用意で偵察隊以外は離れた地点におり、ダイヤモンスの行く手を阻む物は居ない。

 むしろ行く手を阻む物があればまた光線でなぎ払ってしまう事だろう。

 

 所で、大怪獣クラスとは怪獣を超える存在に付けられる称号の事を指す。

 その最たる部分は何と言っても「必殺技」と言える。この必殺技は既にダイヤモンスが見せた通り十数キロの距離にある物を全て貫通させて貫く光線や周囲に存在する全てを灰に変える範囲殲滅などの威力を持つ「超能力」だ。


 このような超能力は怪獣といえども限られたものにしか使う事は出来ず、超能力は怪獣の実質的な危険度…強さを示すランクになってもいる。

 

 この超能力に比べれば高々大砲やミサイルを召喚する事しか出来ない勇輝の超能力などなんとも貧弱に見えることだろう…


 そして勇輝がミサイルや大砲をすると代償としてエネルギーを消費するのと同じように大怪獣といえども必殺ブレスを放てばそれ相応に消耗してしまう。

 闇雲に光線を打ち続ければたちまちエネルギー切れに陥ってしまうのだが、これを防ぐ為に大怪獣には強大な超能力を使いこなせる程の“知性”が備わっていた。

 

 例えば長距離の敵にはディスパーション、短距離の敵には威力を弱めた光線を放ち、周りを囲まれたらシンチレーション…そしてそれらを合わせた、先ほど使用した合成技…と使い分ける具合に。

 

 ここで言う“敵”は主に熱源反応らしい。町が狙われる理由になっているが、逆に大怪獣にしてみれば自分の足下に人一人分の熱源があった所で特に気にもとめ無かった。人間も足下に小さな昆虫が一匹いたところでそもそも気が付かないだろう。

 

 「我ながら物凄く卑怯だとは思うけど…」

故に、勇輝は怪獣の真下へ潜り込む事に成功した。


 頭上を銀色の小さな鱗のような物に覆われたダイヤモンスの首が通過する。一瞬目が合った気がした。

 凄まじい衝撃が襲いかかり、すぐ横に巨大な足が墜落し地面を踏みしめる。

 

 「…撃ち方用意!」


突如としてまるで“あり得ない”規模のエネルギーを真下に感じ、怪獣は訳も分からず狼狽える。


呼び出されたのは「Mk7 16インチ三連装砲」が3つと「45口径46センチ三連装砲」が3つに「1922年型MK7 35.6センチ4連装砲」が2つとその2連装砲が一つ、そして「1935年型 正38センチ四連装砲」が二つ。

 合わせて32門の大砲が砲口を真上に向けて召喚され…


「fire!!!」


一斉に火を噴いた。少し離れて見れば火山が噴火したかに見えたかも知れない


全ての砲弾が約10メートル先の怪獣の柔らかな腹部や頸部に直撃して貫通、そして硬い背中のクリスタルに達して突き刺さった所で信管が作動し炸裂した。

 勇輝は光の壁で主砲射撃の衝撃波を防いだ後咄嗟にその場を離れる。

ダイヤモンスが断末魔の叫び声を上げてゆっくりと倒れた。


 ダイヤモンスの背中の突起…巨大なクリスタルは力の源ではあるが、丈夫な甲羅でもあった。ダイヤモンスはこの巨大な盾のお陰で頭上からの攻撃を殆ど無力化する事に成功していた。ミサイルが直撃しても背中の突起が破壊されるだけで済んだのは「盾で防いだから」とも捉えられる。

 しかし大怪獣と言えども内臓に甚大な被害を受けて無事で済まされる訳が無かった。背中の突起を破壊すれば確かに超能力は封印出来るが、生物としての弱点は人や他の動物などと同じく腹部や頭部などにあった。

 


 弱点を攻撃され致命傷を負った大怪獣は息絶えた。

 大怪獣の死骸は見る見るうちに石に変わって行き、そして煌めくダイヤモンドの原石へと変化してしまった。




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