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海 短編集  作者: 魚羅太郎
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乗ってきたアジアンウーマン 

私はもう10数年このタクシードライバーという仕事をしている。少なからず厄介なお客さんもいるが、そこまで苦痛は感じたことはない。これは、そもそも私の楽観的な性格ゆえかもしれない。今日もいつもと同じように街を走っていた。この時間はあまり手が上がらないからもう10分程お客さんが乗ってこなかったら休憩でも取ろうかと考えていた矢先、信号機の近くでこちらに合図を送る女性が立っていた。あのお客で休憩にするかと脇に車を停めて女性を乗せた。とても綺麗な容姿をしていた。顔立ちはアジア系だが、日本人ではないだろう。大きなスーツケースも持っているから仕事か何かかなと考えていると

「隣町のバスターミナルまでお願いします。」

「隣町のバスターミナルですか。分かりました。」

そのまま私はタクシーを出した。すると

「あの…その音楽…止めてくれませんか。」

「あぁ、すいません。」

私はそう言うとラジオの音楽番組を止めた。大通りを真っすぐ走り、ケーキ屋が見えたら右に曲がる。そこから道なりに走っていくと隣町につながる開けた海沿いの道に出る。そこからの景色は綺麗なのだが歩道が設置されていないし、車道もギリギリ2台通れる幅しかない。数年前にこの景色を売りにしようとここを道路改修しようとしたそうだが、結局何もせずに終わってしまったらしい。ただ、あの道は午後4時を過ぎると通行禁止の看板が置かれるのだが、その理由は詳しくは知らない。本当に綺麗な景色なんだけどなあ、とその道路を走っている時、ほんの少しだけだったと思うが、ちらっと海を見たのだ。

「ちょっと!危ないでしょう!よそ見しないでください!」

そう言うと、彼女は私に掴みかかってきたのだ。幸いにも後続車もいなかったためブレーキを踏んで彼女を落ち着かせることにした。ただ、適当な言葉が見つからない。困ってしまったのでとりあえず平謝りを続けた。彼女もようやく落ち着いてきたようだ。ふと、数年前に三人組の客の言っていたアジア系の女性に気をつけろという言葉を思い出したが私はそのまま急いでバスターミナルを目指した。


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