2人の竹馬 3
二人の男達はせかせかと働いていた。たった一日、と言ってもほんの数時間のためだけに数日間を捧げた。
一人の男は多くの食材をその伝手で取り寄せたり、時には自らが集めに行ったりした。
一人の男は多くの知識をフル回転させて料理の手伝いをした。
そう、ここは『横浜県』
二人はここ数日の度重なる非日常に少し…どころではない疲れを感じていたが、そんなことは言い訳にしかならず休んでもいい理由にはならない。作業に一区切りがつき、もうすぐ昼時というタイミングで男達も手を休めることにした。蕎麦の出前を取り、店のカウンターで啜っていると、思い出したように幼馴染みが「あ!」と声をあげた。どうしたんだ?と幼馴染みを見ていると
「おい!今から肉、取りに行くぞ。」
「はぁ~!?肉?」
「そうだ。忘れてた~。」
そう言うと、男はざる蕎麦にラップをかけて車のキーを持った。
高速道路を使い二人は「どんぐりファーム」という農園を目指した。
「今日はその農園でヤマウズラの肉を取引する予定なんだ。」
そう言いながら男はにやけていた。
「この肉の取引が上手くいけば一つ取引先が増える。それだけじゃない!このファームはすごく評判が良いんだ。質のいい食材は心を動かすからな。」
その後も運転しながら延々と肉について話していたが、なるほどな、と幼馴染の話に相槌を打ちながら助手席の男は窓の外を眺めていた。それから一時間ほど走っていると、広々とした郊外に出た。
「もうすぐで着くからな。」
男は助手席でウトウトしながら、半端な返事を返した。程なくして、「どんぐりファーム」と書かれた看板が現れた。一般駐車場に車を止め、受付のある煉瓦造りの建物へと歩いた。建物の中には人の姿はなく、二人は近くにあった椅子に座って待つことにした。
「結局、時間には間に合ったし待ちあわせの場所もここのはずだ。多分、もうじき来るだろう。」
しかしいくら待っても誰も来ることはなかった。待っている間、何度か電話を掛けるも返答はなかった。二人はどうしようかと話し合っているとドゴッという音が地面の揺れと共に外から聞こえた。
「なんだぁ!?地震か!?」
二人は外に出た。すると、またもドゴッという鈍い音が農場の方から聞こえた。
「おいおい…なんだありゃ!?」
そこには大きな声で雄たけびを上げる化け物が天を仰いでいた。その化け物は二メートルを超える巨体に禍々しい漆黒の角を携えたシカのような頭であった。思わず後ずさりをし、ザリッと足音を鳴らしてしまったためかその化け物はゆっくりとこちらに振り返った。
「なぁ…あれ見ろよ。」
化け物の近くにはグニャっと凹んだトラクターが転がっていた。鉄の塊に言葉を失っていた二人だったが、こちらを見ていた化け物がゆっくりと近づいてきた。我に返った二人はそのまま踵を返して逃げ始めた。しかし化け物もだんだんとスピードを上げ、距離が縮んでいった。
「おい!このままじゃ追いつかれるぞ!」
「車だ!駐車場まで行くぞ!」
二人は農園の駐車場まで息を切らしながら走り続けた。しかし、普段から運動など身体を動かしていなかったからか徐々に足が重くなってしまった。ちらっと後ろを見てみると、加速する化け物が先程よりも近づいてきていた。
やばいっ!追いつかれるっ!
二人にはこの普通ではない状況に疑問を抱く余裕はなく、ただここから逃げることだけを本能的に察知したままに動いていた。もう駄目だと化け物の右手がすぐそこまで迫ってきた時、急に大声を上げて化け物は転がった。自分の足が縺れたようだ。そのまま男達は全力で車まで走り、乗車するとアクセルを踏んで逃げていった。




