欠けた螺旋の1ピース
そこまで退屈もしてなければ、そこまではしゃぎたくなるわけでもない、つまりは普通というような学校生活を俺は送っている。しかしそんな俺にも人に自慢できることがある。それは絶対に朝5時には目が覚めることと運動だ。1つ目は自慢じゃないかもしれないが、2つ目の運動に関しては自他ともに認めるほどのものだろう。一度見本や手本を見れば自分の体を同じように動かすことが出来る、そういう感じだろうか。小学校、中学校、高校とこれまでに俺はこの運動という能力だけは褒めてもらうことが多かった。勿論その分の僻みや妬みもあったがもう慣れた。あとは勉強もこれくらい出来れば文句なしなんだが、どうもうまくことが進まないものだ。ところで話が変わるが、最近俺は不思議な夢を見るようになった。夢なんだから不思議だろうと思うかもしれないが、そういうことではない。その夢の中には俺が2人いるんだ。俺と俺。ただお互いに見つめあっているだけ。なんだか不気味でもあるが、自分の姿を見続ける夢を見る自分にも少し気色が悪いと思ってしまう。
ある日、いつも通り登校して、クラスメイトと雑談していると鐘の音と共に担任が入ってきた。
「おい、お前ら!静かにしろ!今日から新入生がやってくるから。」
しかし、廊下にもその生徒の姿はなく、クラスメイトらが不思議に思っていると
「それで新入生なんだけど、都合により遅れてやってくるみたいだから。先にクラスに来たら職員室に連れてきてくれ。」
担任は続けて諸連絡を話し始めたが、クラスはザワザワとしていた。俺も新入生がどんな奴なのか気になっていた。しかし、遅刻するとはいうものの、一時間目、二時間目と時間はどんどんと過ぎていった。結局、全ての授業が終わってもその転校生が顔を出すことはなかった。担任も「おかしいなぁ」という顔をしていたが、クラスメイトは特に気にせずにしていた。俺も仲の良い友人らと喋りながら家に帰った。
「ただいま。」
返事はない。両親はどちらも働いているから当たり前だが。まだ時間はあるから休憩してから塾に行くか。俺はスマホのアラームをセットすると少しの仮眠についた。
「ちょっと!翔太!」
母親のそんな呼びかけで俺は目を覚ました。
「あんた、塾はどうしたのよ?」
そう言われて俺はスマホの画面を見た。17:15。アラームを設定したはずだが、そのまま寝続けていたみたいだ。
「すまん。寝過ごした。」
俺はスマホを見ながら素っ気なく言った。結局、塾には行かずに家にいることにした。母親は特に咎めることなく夕飯の準備を始めた。勉強する気も起きなかったから、スマホを眺めて時間を潰していると
『お前、今日って塾の日だったよな?』
友人からのメッセージ通知が来た。アプリを開くと写真も遅れて添付されてきた。そこには確かに「俺」が写っていた。場所は近くの大型ショッピングモールにあるゲームセンターのようだ。小さい頃は父によく連れて行ってもらった思い出があるが、ここ1年くらいはいってないはずだ。
『塾は休んだけど、ここには行ってないぞ。ずっと家にいたし。』
そう返信したが、友人からは『サボったのかぁ?』といじられていた。
次の日、教室に入ると昨日メッセージをよこしてきた友人が挨拶もなしに近づいてきた。
「翔太く~ん?昨日はサボったのかよぉ?」
「宮部か、おはよう。違うよ。家で寝てたんだ。」
「ほんとかよぉ。でも、あいつ、めちゃくちゃ上手かったからなぁ。お前じゃないか。」
友人の言っている通り、俺はゲームが苦手である。小さい頃に連れて行ってもらった時も、上手くいかずに父に泣きついていた。今思い返すとなかなか恥ずかしいものだ。
「それにしても、転校生が気になるよな。どんな奴なんだろう。」
「結局、昨日は来なかったしな。」
その後も俺たちは他愛のない話をチャイムが鳴るまでしていた。いつも通り担任が入ってきたが、昨日よりも笑顔で教室に入ってきた。
「今日こそは、転校生が来てるから。みんな驚くぞぉ!」
担任がニヤニヤしながら転校生を教室に招いた。その時、俺を含めたクラスメイトたちはざわついた。相変わらず担任はニヤニヤしていたが、転校生が自己紹介をする前に宮部が口を開いた。
「翔太じゃん!」
俺もとても驚いていたが、みんなは転校生と俺を交互に見比べていた。教卓の前に立っている青年は、紛れもなく「俺」であったのだ。
「よ、よろしく。」
教卓の青年は名前も言わずに、とりあえずの挨拶をした。あちらも驚いているようであった。




