「最近眠れてますか?私に5分くれますか?」5分小説『羊が攻めてくる』No119
早朝に外を見ると、里中に羊が攻め込んできていた。
キャラバンの来る広場にも羊...
木組みの屋根の上にも羊...
遠くの小高い丘にも羊...
私は不眠の頭で頑張って、何匹いるか数えようとする。
羊が1ぴき...羊が2ひき...
だめだ、多すぎる。
それに里を囲っている柵から新しい羊が、ぴょこんぴょこんと入ってくる。
私はとりあえず寝間着からカントリー風のワンピースに着替えて、里中を回ってみることにした。
まだ朝早く、道には霜が降りている。
道は羊の密度が高くてとても歩きにくい。
だいたい羊たちはおしくらまんじゅうでもしているように密接しているし、前に進むには自分の体を羊と羊の間に上手く押しやるしかない。
羊たちは黙々と草をはみ、この調子だと道脇の草が荒野にされるんじゃないかという勢いだ。
ふと突然羊達に押されて、もともと不眠でフラフラしていた私はその場に倒れ込む。
羊の中に倒れた私は、どんどんと羊に埋められていく。
もがこうと手足を動かすのだけど、当たるのはもふもふの羊の綿だけだ。
段々と光も消えてきて、羊の毛皮で...息が...できなく……
道端で目が覚めると、羊は消えていた。
私は驚きながらも、大きなあくびをする。
もうすっかり朝だ。
里の人たちもそろそろ起き出してくるだろう。
ああ、ねむい。
最近少しも眠れなかったのに、なんだか今ならいくらでも眠れる気がする。
そういえば、羊がたくさんとびこえる夢を見てたような...
頑張って夢を思い出そうとするけど、眠けに負けてしまう。
たしか...最近眠ってなくて...羊がここまで来て...
もしかすると私が眠ろうとするときに数えすぎた羊が、ここに溢れてきたとか...?
ふぁぁ...
ねむい。
...とにかく、今は眠ろうかな。その後で考えればいいや。
それから道脇の草を見ると、沢山あった草花が見事に食べ荒らされていて、私は少し笑ってしまった。
お読みいただきありがとうございます!
まだまだ若輩者ですが、小説を続けるためにひとつひとつ頑張っていきます。
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