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88話―決戦! 死騎鎧魔ガルトロス!

「バカな……!? 貴様、どうやって結界をすり抜けた!?」


「エッちゃんとクイナさんの魔力を到達ポイントにして界門の盾で……ね。少し時間がかかっちゃったけど……さ!」


 リオはガルトロスを弾き飛ばし、素早くエリザベートを抱えて後退する。クイナとクレイヴンはアイージャ、ダンスレイルがすでに確保し、後方に下がっていた。


「し、しょう……? 本当に、師匠ですの……?」


「うん。そうだよ。ごめんね、来るのが遅れちゃって。ここからは僕に任せて……ゆっくり休んでね」


「はい……ありがとう、ございます……」


 エリザベートはリオの腕に抱かれ、安心感を覚える。直後、糸が切れた人形のようにガクッと力尽き、気絶してしまった。リオはエリザベートをアイージャに託す。


 そして、ガルトロスとバルバッシュを睨み付け――怒りに満ちた声で死の宣告を下した。


「お前たちだけは絶対に許さない。ロモロノスの人たちだけでなく、エッちゃんやクイナさんにまでこんな酷いことをして……!」


「フン、だからなんだ? グランザーム様の覇道を阻む者は全て滅するのが我が務め。ま、こんなことを言っても理解すまい。バルバッシュよ、ここで決着をつけるぞ」


「クヒャヒャヒャヒャヒャ! いいねェ。だがよォ、こんな狭い場所じゃ最後の決戦に相応しくねェ。だから……俺がとっておきの戦場に招待してやるよ!」


 バルバッシュが叫びを上げると、王宮の外に異変が起きる。結界が砕け散り、再構成され平たい円形の足場へと変わったのだ。


 ガルトロスは窓を体当たりで破壊し、一足先に天空に浮かぶ魔法陣リングへ向かう。バルバッシュはリオを一瞥し、話し出す。


「さァ、今のうちにお仲間に別れの挨拶を済ませておきな。お前はここで死ぬんだからなァ! クヒャヒャヒャヒャヒャ!」


「僕は死なない。死ぬのはお前たちのほうだ!」


 リオはそう言い返し、アイージャたちの方へ振り返る。アイージャは真っ直ぐリオを見つめ、静かに語りかける。


「……リオよ。妾たちはこの者たちの手当てをせねばならん。済まぬが、一人で……」


「その必要はないよ……拙者は、まだまだ戦えるからね」


 その時、クイナが目を覚ましそう口にした。リオは心配そうな表情を浮かべ、クイナに問う。休んでいたほうがいいんじゃないか、と。


「心配ご無用さ。幸い、拙者はほぼ無傷。バルバッシュの能力もある程度把握してるし、足手まといにはならないよ。それに……リオくんも、一人じゃ大変でしょ?」


「……分かった。それじゃ、お願いするね」


 リオはクイナの助力を受け入れ、共に戦うことを決めた。エリザベートたちをアイージャとダンスレイルに任せ、リオは双翼の盾を背中に装着する。


 クイナをお姫様抱っこし、破壊された窓から外に出て遥か上空にある魔法陣リングへ向かう。バルバッシュとガルトロスは余裕の笑みを浮かべ、リオたちを待っていた。


「来たか。我が弟リオよ! 私の人生に残った最後の汚点たる貴様をここで葬り……私はさらに躍進する! 我が栄光のためにここで死ね!」


「僕はまだ死ぬつもりはない! お前こそ、ここで倒してやる! お父さんたちの仇……絶対に討ってみせる!」


「やれるものならやってみるがいい! バルバッシュよ、奥の手を使うぞ!」


「クヒャヒャヒャヒャヒャ! いいぜェ、最初からクライマックスってやつだァ!」


 ガルトロスが肉体を鎧と同化させつつ分解すると、そこにバルバッシュが飛び込む。そして、籠手を除いた鎧がバルバッシュを包み込んでいく。


「クヒャヒャヒャヒャヒャ! 見たか! これが俺たちの切り札ァ……アーマード・バルバッシュだァ!」


「……うわあ、なんかダサいなぁ。リオくん、拙者たちも頑張ろう! こんなところで負けられないからね!」


「うん! いこう!」


 融合したバルバッシュたちを前に、リオは左腕に破槍の盾を作り出し装着する。クイナは懐から麻痺性の神経毒が塗られたクナイを取り出し、両手で構える。


 二人は同時に走り出し、アーマード・バルバッシュへ攻撃を仕掛ける。左右から挟み撃ちにするべく、リオとクイナは散開しそれぞれの武器を振るう。


「食らえ! バンカーナックル!」


「おっと、当たらねえよそんなモン!」


 アーマード・バルバッシュは空中を漂うガルトロスの籠手を操り破槍の盾を受け止める。が、それはリオからすれば想定内の行動だった。


 バルバッシュの意識がリオに向いている間に、死角に回り込んだクイナが鎧と兜の隙間にクナイを差し込む。……はずだったが、そこにガルトロスの声が響く。


『バルバッシュよ、背後から来ているぞ。回し蹴りで迎え撃て!』


「おうよ! オラアッ!」


「む……くっ!」


 迎撃を受けたクイナは蹴りを食らい吹き飛ばされる。上手く防御したためダメージはなかったが、死角を潰され狼狽える……ことはなかった。


「やっぱりね。二人が合体した時点で薄々分かってた。だから……真正面から突破させてもらうよ! 破槍、射出!」


「な……うぐあっ!」


 盾から槍が完全に発射され、油断していたアーマード・バルバッシュの右肩に突き刺さった。槍の尻には魔力の糸が付いており盾と連動している。


 リオは勢いよく左腕を引き、アーマード・バルバッシュを自分の元に引き寄せる。バルバッシュは踏ん張って耐えるも、クイナの足払いを受けよろめく。


「しまっ……」


「食らえバルバッシュ! 怒りのガントレットパーンチ!」


 引き寄せられてきたバルバッシュの顔面を狙い、リオは右の拳を握り締めジャスティス・ガントレットのパワーを乗せた必殺のパンチを放った。


 兜が砕け、バルバッシュの顔が剥き出しになり今度は後ろへ吹き飛んでいく。そこへ、クイナの逆襲の一撃が追撃として襲いかかる。


「さっきはよくもやってくれたね! これでも食らえ! ゴブリン忍法『後家蜘蛛の糸』の術!」


「ぐおっ! な、なんだ? このネバネバするのは!」


 首もとにクナイを突き立てられたバルバッシュはクイナを蹴り飛ばす。が、クナイに塗られた毒と、忍法によって作られたネバつく糸によって身体の自由を奪われてしまう。


「チィっ! おい、ガルトロス! てめえこれをどうにかしやがれ!」


『無理だ。私の力はあくまで肉体を鎧と同化させるだけ。それ以上のことは……』


「クソが! 使えねェ無能め!」


『なんだと……!? これまで散々助けてやったのに、そこまで言われる筋合いはないぞ!』


 絶体絶命のピンチだというのに、ここにきてバルバッシュとガルトロスは仲間割れを始めた。その隙を突き、リオとクイナは一気に畳み掛ける。


「今がチャンスだ! クイナさん、いくよ!」


「合点! さあ、やるよ! ゴブリン忍法『鋼鶴乱れ舞いの術』!」


 クイナは魔力を練り上げ、四つの折り鶴を作り出す。全身が刃のように鋭くなった鋼の折り鶴を飛ばし、アーマード・バルバッシュへ攻撃する。


 口論していたバルバッシュは攻撃に気付くのが遅れ、鎧を折り鶴の翼で切り裂かれる。その度にガルトロスの苦悶の声が鎧から発せられ、地獄の様相を呈する。


『グッ、ガアア! 避けろバルバッシュ! 何をしているのだ!』


「うるせえなァ……避けりゃいンだろ、避け……」


「させないよ! 出でよ! 巨壁の盾斧!」


 リオは拳を頭上に掲げつつ握り締め、ガントレットの力を呼び覚ます。青と緑、二つの宝玉が輝きリオにダンスレイルの持つ斧の魔神の力が宿る。


 かつてキルデガルドとの戦いで用いた巨壁の盾斧を作り出し、アーマード・バルバッシュに向かって振り下ろす。バルバッシュは腕で受け止め、跳ね返そうとする。


「ぐむむむ……!!」


「チィッ! こんなモン、俺のパワーと籠手ではね除けて……」


「させないよ? 拙者がすでにあんな面倒な籠手は砕いちゃったさ!」


 バルバッシュは籠手を呼び寄せようとするも、すでにクイナによって砕かれてしまっていた。麻痺毒と蜘蛛糸によるパワーダウンが響き、バルバッシュは攻撃を受け止めきれず――両断された。


「うおりゃああああ!」


「グガアアアアア!」


 断末魔の叫びを上げ、バルバッシュは崩れ落ちる。再生能力を発動し傷を癒そうとするも、それより早く死が近付いてくるのを牙の魔神は感じ取っていた。


(やべえな……。このままじゃ死ぬ! こうなったら、最後の手段を使うしかねえ!)


 敗北を免れるべく、バルバッシュは最後の手段を使うことを決めた。残った魔力をかき集め、牙が納められた水色のオーブを作り出す。


 それを見たリオは、バルバッシュが何をしようとしているのかに気付き止めに入ろうとする。


「いけない! あのオーブは!」


「クヒャヒャ、もうおせェ! 見せてやるよ、俺の真の姿を! ビーストソウル、リリース!」


 バルバッシュはそう叫びながら、オーブを体内に取り込む。水を司る牙の魔神が、己の中に眠る獣を解き放とうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ガルトロスとバルバッシュ仲悪いなぁオイ。 そんじゃリオ、ソイツらをチャチャっとブチのめしてやりましょうか?
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