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81話―トリトン城を探索せよ!

 アイージャたちがバルバッシュの分身と戦いを繰り広げている頃。リオは目的地であるトリトン城に到着していた。静まり返った城を見上げ、一歩踏み出す。


 魔族の罠が仕掛けられている可能性を考慮し、慎重に歩を進めていたリオだが、以外にもあっさりと城の中に侵入することが出来た。


「……誰もいないね。ま、明かりがあるだけまだマシかな」


 城の広間に入ったリオは、小さな声でそう呟く。城内は不気味なほどに静まり返り、生き物の気配を全く感じなかった。そろりそろりと、リオは先へ進む。


「……立派な像だなぁ。やっぱり、元王様の家なだけあって内装も豪華だねぇ」


 階段へ続くカーペットの両脇に三体ずつ、計六体の騎士の銅像が飾られていた。剣を掲げた立派な立ち姿に、リオは感心する……と同時に、既視感を覚える。


 かつて、スフィンクスの守護していた神殿を訪れた時、似たような光景に出くわしたことを思い出したのだ。嫌な予感を覚えたリオは、駆け足で進むが……。


「……!」


「わっ! 像が動いた!」


 リオが階段を目指して走っていると、突如騎士の像が動き出し襲いかかったきたのだ。統率の取れた動きで剣を振るう像を、リオは飛刃の盾で砕いていく。


「えーいっ! みんな粉々にしてやる!」


 盾による攻撃を受け、六体の銅像はあっという間に粉々に砕かれた。何とか危機を切り抜けたリオは、改めて気を引き締め階段を登り二階へと向かう。


 流石に地図にはトリトン城の内部構造までは記されていなかったため、リオは勘を頼りに廊下を進む。その途中、片っ端から部屋の扉を開け、クリスタルがないか探す。


「ここ! ……はないか」


 いくつか部屋の中を探したものの、クリスタルを見つけることは出来なかった。二階にはないかもしれないと考え、三階への階段を探そうとしたリオだが……。


「……何だろう。この絵、何か引っ掛かるんだよなぁ」


 とある部屋の壁に飾られていた絵を見て、リオは目を細めしっぽを振る。一見何の変哲もない風景画だが、何か違和感を感じ取ったのだ。


 しばらく絵を眺めていた後、リオはおもむろに手を伸ばし絵に触れようとした。が、次の瞬間、伸ばされた手は絵をすり抜けてしまった。


「これ……。そっか、隠し扉だ! きっとこの先に秘密の部屋があるんだ! 昔、ジーナさんたちと一緒に探索したダンジョンで似たような仕掛けがあったもん」


 驚きで目を丸くしていたリオは、そう呟き一人納得する。まだ魔神になる前、かつての仲間たちと一緒に探索したダンジョンにて、絵に偽造された隠し扉の仕掛けを見ていたのだ。


 この絵の先に、何かがある。そう確信したリオは、迷うことなく前進し絵の向こう側へと飛び込んでいく。果たして、彼の予想通り、絵の先には隠し部屋が存在していた。


「やっぱり! 絶対何かあると思った! もしかしたらこの先にクリスタルが隠してあるかも!」


 嬉々として部屋の中に入るリオ。その直後、彼の踏んだ床板が僅かに沈み込んだ。そして、次の瞬間天井が開き一体の人形がリオの目の前に落ちてきた。


 落ちてきたのは、顔まですっぽりと布で覆った漆黒のローブを着込んだ人形だった。忘れもしない、魔王軍最高幹部の一人ザシュロームの姿をしている。


「……なんでこんなところにザシュロームの人形が? やっぱり、魔族たちがここに潜んでるのかも――!?」


 かつての宿敵の人形を見て顔をしかめつつ、リオがブツブツ呟いていたその時。突如ザシュロームの人形が起き上がり、拳を振るい攻撃してきたのだ。


 奇襲を受けたリオは、ギリギリで拳を避けることが出来た。突然の事態に面食らいながらも、飛刃の盾を消して不壊の盾を呼び出し、まずは守りを固める。


(あの人形、動き出した途端に凄く邪悪な魔力を出し始めた……。もしかしたら、あの人形のどこかにクリスタルが仕込まれてるのかも!)


 目を細め、ザシュロームの人形の内部から溢れ出てくる魔力の正体について考えながらリオは攻撃を捌いていく。頃合いを見計らい、反撃を始める。


「いつまでも……やらせない! 肉体強化魔法、ヘビィブーツ! あーんど……オーバーボディ!」


 肉体強化魔法二種を己に施し、リオは不壊の盾によるシールドバッシュを敢行する。ザシュロームの人形は吹き飛ばされた後、空中で身体を回転させ着地した。


 その洗練された動きは、本物そっくりだった。かつてのタンザやガランザでの戦いを思い出し、リオは不敵な笑みを浮かべる。思いがけない形での再戦だが、負けるつもりはない。


「こい! 今度もお前なんかに負けないぞ、ザシュローム! シールドブーメラン!」


 リオは素早く飛刃の盾を作り出し、勢いよく足元へ投げる。盾は床にぶつかって反射し、背後から人形へと襲いかかっていく。


「……!」


「今だ! てやっ!」


 後頭部に盾の直撃を受け、動きが止まった一瞬の隙を突き、リオは人形のみぞおちに渾身の力を込めた正拳突きを叩き込んだ。人形は吹き飛び、部屋の壁に激突し崩れ落ちる。


 そこへ追撃を食らわせようとしたリオだったが、何か嫌な予感を覚え、不壊の盾を作り出して右腕に装着する。それと同時に、盾を構えつつ背後へと飛び退いた。


「……!」


「うわっ! なんだこれ!? 金属片……かな?」


 人形の身体から発射された、鋭く尖った何かの破片を防ぎつつ下がってよかったと心の中で安堵する。もし飛び退いていなければ、破片を防ぎきることは出来なかっただろう。


「ナカナカヤルナ。ワガキリフダノヒトツヲイトモタヤスクフセグトハ」


「……!? しゃ、喋った!」


 その時、ザシュロームの人形の喉が動き、抑揚のない声で話し始めた。まさか喋るとは思っておらず仰天するリオを、人形は顔布の隙間から覗く目で睨みつける。


「シャベレルサ。イママデハソノヒツヨウガナイトハンダンシテイタダケ。ココマデヤルトハオモッテイナカッタゾ。ケッカイヲマモルタメニモ、ホンキヲダサセテモラウ!」


「させるか!」


 人形の目が怪しく輝いた直後、体内から何かが作動する音が響く。何をするつもりかは分からなかったが、良くないことであることは理解したリオは人形に飛びかかる。


 が、不可視のバリアが張り巡らされ、人形に接近することが出来ない。バリアを破壊しようと盾を叩き付けている間に、人形の姿がどんどん変化していく。


「ミセテヤロウ。ワガカラクリヘイソウノチカラヲ!」


「なら……こうしてやる!」


 バリアを破壊したリオは、背中から二つのクロスボウを生やした人形に抱き着き、部屋の窓に向かってダイブした。窓ガラスを叩き割り、城の外へと落下する。


 中庭に落下した一人と一体は、素早く立ち上がり相手に攻撃を仕掛ける。人形は二つのクロスボウに装填された矢をリオ目掛けて放ち、串刺しにしようとした。


 が、リオはそれを避け、人形の懐に飛び込む。みぞおちに膝蹴りを叩き込むも、決定打とはならなかった。人形は右手をこん棒へ変え、リオを殴り付ける。


「あぐっ!」


「ククク、イタイカ? イタイダロウナ。ナニセデンゲキガナガレテイルノダカラナ!」


 思わずよろめくリオの腕を掴み、逃げられないようにしつつ人形はこん棒を振るう。表面に流れる電撃による痛みに顔をしかめつつも、リオは反撃のため魔力を練り上げる。


「……調子に乗ってると、痛い目に合うよ! 久しぶりに見せてあげるよ! ビーストソウル、リリース!」


 リオの身体から青色の光が放たれ、冷気がほとばしる。たまらず人形は吹き飛ばされ、中庭を転がっていく。リオは纏った冷気を氷爪の盾へと変え、身構えるが……。


「……あれ? なんでコレが嵌まってるの?」


 右腕に違和感を感じ、リオは視線を下のほうへ下げる。彼の右腕には、今回の旅に持ってこなかった黄金の籠手が嵌められていたのだ。


 ユグラシャード王国を救った礼に女王セルキアからもらった、ベルドールの籠手が。何故籠手が装着されているのか不思議がっていると、リオの身体に異変が起きる。


「な、なに!? 力が、どんどんみなぎってくる……!」


 盾に隠れて見えなかったが、この時籠手の手の甲で、青と緑、二つの宝玉が輝いていたことを……リオはまだ知らない。

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