表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/311

226話―襲撃! 悪逆戦隊Dファイブ!

「みんな、大丈夫……?」


「大丈夫だよ、おとーとくん。完全に埋まっちゃったけど」


 コラルの冷洞の崩落が終わり、リオたちは完全に地面の中に埋まってしまっていた。幸い、押し潰されて死ぬことはなかったが、このままでは酸欠で死んでしまうだろう。


 スペースがなく界門の盾を使えないため、何とかして土砂をどかして外に出なければならない。そのため、リオはレケレスと協力して土砂を溶かし、道を作ることにした。


「おねーちゃん、僕たちで毒液を発射して脱出しよう。多分、こうすればいけると思うんだ。ごにょごにょ……」


「ふんふん、なるほど。それなら大丈夫かも!」


 何を話しているのか分かっていないジールを他所に、リオは光射の盾の位置を無理矢理ズラし自分たちの下に敷く。盾の真ん中に丸い穴を開け、頭上に右手をかざし準備を完了させる。


「おねーちゃん、準備出来たよ! ジールさんも盾に乗って!」


「え? お、おう」


「よーし、いくよ! ポイズンスプラーッシュ!」


 土砂を崩してしまわないよう、慎重に光射の盾に乗り込んだ後、レケレスは盾の穴から両手を出し毒液を噴射する。それと同時に、リオも頭上に向けてジャスティス・ガントレットの力を使う。


 紫色の宝玉が輝き、岩石を溶かし一瞬で蒸発させる毒液が放たれ、頭上の土砂を消し去っていく。土砂が崩れてくる前に、下に向かってレケレスが毒液を噴射し上昇する。


「おおっ!? なるほど、これなら土砂が落ちてくる前に脱出出来るな!」


「もうちょっと……あと少しで地上だよ! おねーちゃん、頑張って!」


「はいはーい、いくよー!」


 リオとレケレスはフルパワーで毒液を噴射し、ようやく地上に飛び出すことが出来た。勢い余って崩れた土砂の上に落下するも、幸い怪我をせずに済んだ。


「ふう。なんとか脱出出来たね。もうダメかと思ったよ」


「悪いな、オレまで助けてもらってよ」


「気にしないで。見捨てるほど僕は薄情じゃないから」


 コールドスライムを撫でながら、リオは礼を言うジールにそう答える。その時、彼らの頭上、うず高く積もった土砂の上から複数の男女の声が響いてきた。


「見つけたぞ! 我らが大敵、善のしもべどもよ!」


「敵か……!? か、身体が動かない!?」


 勇ましい声を聞いたリオたちは、何故か身体が動かなくなってしまう。そんなリオたちを見下ろしながら、五人組の男女は名乗りを上げ始める。


「この世に善がはびこる時……悪の意思が我らに告げる。正義のしもべを倒せと叫ぶ!」


 五人組の中央にいる、真っ赤なスーツとフルフェイスヘルメットを身に付けた男がそう叫ぶと、順番にポーズを決めながら叫ぶ。


「燃え盛る炎、(デストル)ロート!」


「荒れ狂う水、(デストル)ブラオ!」


「咲き誇る花、(デストル)グリュン!」


「とどろく雷、(デストル)ゲルプ!」


「闇照らす光、(デストル)ヴァイス!」


「我ら五人が善の栄えを許さない! 聞くがいい! 我らの名は……悪逆戦隊(デストル)ファイブ!」


 五人全員が同時にポーズを決めると、彼らの背後で派手な爆発が起こる。何が起きているのか理解出来ず、リオとレケレスは固まってしまう。


 一方で、ジールは彼らのことを知っているらしく、顔を青くしていた。


「ま、マジかよ……。なんであいつらが!?」


「ジールさん、知ってるの?」


「ああ。あいつらは魔王軍の幹部の一人、グレイガ直属の処刑人たちだ。最近じゃ、リアボーン王国を滅ぼしたことで恐れられてるんだ」


 ジールの言葉に、リオは目を見開く。自身の生まれ故郷を滅ぼした者は、ガルトロスだけではなかったのだ。悪逆の使徒たちは土砂の山から飛び降り、リオたちの前に着地する。


 赤、青、緑、黄、白……それぞれの象徴であるスーツとフルフェイスヘルメットに身を包んだ(デストル)ファイブの面々は、各々の武器を呼び出し構える。それと同時に、リオたちは動けるようになった。


「お前たちか、冷洞を破壊したのは」


「そうだ。あのまま生き埋めになって死んでくれていればよかったのだが、そうもいくまい。お前たちの首を、グレイガ様への手土産にせねばならんのだからな」


 リオに問われ、リーダーである(デストル)ロートはそう答える。何としてもリオの首を狩る。その意思が、バイザーの向こうにある眼から感じ取れた。


「ま、アタシら五人が揃えば負けることはないさ。(デストル)ファイブは無敵の部隊。鉄壁の結束があるからね」


「その声……お前、ディシャか!?」


 白色のスーツを纏った人物の声を聞き、思わずジールが問いかける。しかし、白スーツの人物は答えることなく、得物である槍を構えた。


 一触即発の空気のなか、真っ先に動いたのは(デストル)ファイブたちだった。リーダーであるロートが先頭に立ち、後続にグリュン、ゲルプ、ヴァイスが続き、最後尾にブラオが陣取っている。


「ゆくぞ! 悪逆の力を見せつけるのだ!」


「おおっ!」


「来るよ、おねーちゃん!」


 三対五という不利な状況の中でも怖じ気付くことなく、リオは両腕に飛刃の盾を装備しレケレス、ジールと共に(デストル)ファイブの面々を迎撃する。


 リオがロートとグリュン、レケレスとジールが残る三人を相手どり各個撃破していく、という作戦を立て実行に移す。が、リオたちは知らなかった。彼らの恐るべき連携を。


「フッ、たった一人で我らを倒せると思うか! グリュン、やるぞ!」


「了解、リーダー! 食らいなさい、フラウウィップ!」


 (デストル)グリュンは両手に持った二振りの鞭を使い、中距離からリオへ打撃を叩き込む。その隙間を縫うように動き回りながら、ロートは波打つ刃を持つ大剣、フランベルジュで斬りかかる。


 リオは反撃しようとするも、ロートを攻撃しようとするとグリュンが、グリュンを攻撃しようとするとロートが妨害し、思うように攻撃することが出来ない。


「くっ、ダメだ、全然攻撃のタイミングを掴めない!」


「当然よ。私たちは共に産まれ共に育った者同士! 連携を崩せるとは思わないことね!」


 グリュンの言葉通り、リオは全く反撃出来ずジリジリと後退させられてしまう。何とか反撃しなければと考えていた次の瞬間……リオの左肩に、焼けるような痛みが走る。


 仲間と距離を取り、後ろに控えていた(デストル)ブラオが、筒のような武器をリオに構えていたのだ。何が起きたのか分からず目を丸くするリオに、ブラオはクールな口調で告げる。


「驚いただろう? 新たに開発された兵器……『銃』の威力に」


「じゅ、う……?」


 肩を押さえながら呟くリオに、ブラオは己の得物を見せ付ける。回転式の弾倉を備えた、二丁の魔法拳銃……これこそが、ブラオの切り札だ。


「弾倉に込められる弾は六発。魔力を変換、リロードして撃つのさ。こんな風にな!」


「まずい! おねーちゃん、避けて!」


 リオが叫ぶも、もう遅かった。四発の弾丸が放たれ、リオとレケレスの太ももを貫いた。一拍遅れて脚から血が吹き出し、二人は呻き声を漏らしながらよろめく。


「くっ……」


「あうっ!」


「今だ! やれ!」


「おうよ!」


 隙が出来た二人に、ロートのフランベルジュとゲルプの鉄槌が容赦なく襲いかかる。直撃を受けて吹き飛び、土砂を転がっていってしまった。


「やべえ、このままじゃ……。こうなったら、オレがなんとかしねえと……」


「おっと、あんたの相手はアタシだよ、ジール」


 リオたちを助けに行こうとしたジールの前に、(デストル)ヴァイスが立ちはだかる。ヴァイスに槍を向けられてなお、ジールは静かに問う。


「なあ、ディシャなんだろ? なんでだよ、何でエドワード様を裏切った! オレたち、猟兵団の仲間じゃなかったのかよ!」


「仲間? 違うね、アタシの仲間はロートたちだけさ。いい隠れ蓑になったよ、情報収集に大助かりしたね。領主の部下ってだけで、機密情報に近付けるんだから……さっ!」


「ぐっ!」


 そう言いながら、ヴァイスは槍を突き出し連続で刺突攻撃を繰り出す。ジールはショテルで攻撃を捌くも、元々そうした用途に向かない武器のため、すぐ追い詰められてしまう。


「くっ、やべぇ……」


「オラオラどうした、もう根ぇあげるのか? そんなんじゃあ、ヴァイスどころかこのゲルプ様にも勝てねえぜ!」


「しまっ……ぐあっ!」


 (デストル)ゲルプも攻撃に加わり、鉄槌の一撃を受けてジールは戦闘不能になってしまう。リオとレケレスはなんとか起き上がるも、土砂からの脱出に力を使ったこともあり疲労困憊であった。


 このまま戦いが続けば、連携によって倒されてしまうのは火を見るよりも明らかであった。しかも、相手の一人は未知の武器まで所有している。


(どうしよう、手が少なすぎる。僕とおねーちゃんだけじゃ、この五人に勝てない!)


「静かになったな。もう諦めたのか? なら、そろそろトドメを……」


「刺させると思うか? この私が。我が弟妹たちには、これ以上傷を付けさせぬぞ」


 その時……遥か天空より威厳に満ちた声がこだまする。直後、炎の塊がリオたちのすぐ近くに落下し、弾け飛んだ。炎が消えると、そこにはエルカリオスとダンテがいた。


「兄さん、ダンテさん……どうしてここに?」


「詳しい話は後だ、リオ。まずはこの者らを始末する。上にいる要塞も含めてな」


 突然の強力な助っ人の参戦に、リオは思わず問いかける。そんなリオに向かって優しい笑みを浮かべながら、エルカリオスはそう答えた。


「さあ、覚悟してもらおうか。このエルカリオス……一人で五人分の強さはあるのでな」


 悪逆の使徒たちに、魔神の長兄はそう宣戦布告した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 流石に危険な状況だけに長兄、次兄が飛んできたかΣ( ̄ロ ̄lll) しかし悪の戦隊の名乗りが滑らんだと?Σ( ̄ロ ̄lll)普通なら敵味方でもドン滑りなのに( >Д<;)
[気になる点] エルカリオス、今回依代もないのにどうやってここに来たの!? [一言] エスペランザを葬ったダンテとエルディモスを葬ったエルカリオス この二人が出てきた以上、とんでもない地獄絵図ができそ…
[一言] 悪の戦隊!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ