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128話―真夜中の襲撃者

「ふう……やっと山頂に着いたね」


「だな。傾斜がキツくて疲れちまったぜ」


 霊峰カウパチカの山麓に到着したリオたちは、三時間かけて山頂まで登りきることが出来た。登山道は長年放置されていたせいで荒廃しており、リオたちは体力を消耗してしまう。


 すでに陽も落ちかけてきており、このまま探索を続けるのは得策ではないとダンテは判断する。彼の鶴の一声により、一行はこの場で夜営をすることになった。


「さてと、テントを設置しなきゃ」


「その必要はございません、我が君。わたくしの体内にテントが内蔵されています。我が君はその中でお休みください。キャンププロトコル始動」


 テントの設営をしようとしているリオに、ファティマがそう声をかける。彼女が呟くと、首から下が変形しあっという間に一人用のテントが完成した。


 内装は高級ホテルのように豪華で、ふかふかのベッドや座り心地の良さそうな肘掛け椅子が設置されていた。それを見たリオは瞳を輝かせはしゃぎ回る。


「わあ、凄い! ふーちゃん、こんなことも出来るんだね!」


「はい。我が君の心身の安らぎを得られるようサポートするのもわたくしの務め。さあ、心行くまでお休みください」


「へえ、いいなこれ。んじゃアタイも……」


 早速テントの中に入りゴロゴロするリオを見て羨ましくなったカレンは、自分もテントの中に入ろうとする。が、ファティマはテントの入り口を閉じ侵入を阻止した。


「なにすんだよてめー! 入れねえだろうが!」


「このテントは一人用です。あなた方は自分でテントを設営したくださいませ。ここは我が君の聖域……何人たりとも踏み入らせません」


「チッ、しょうがねーな。ダンテ、テント設営するぞ」


「はいはい」


 カレンは言い争いをしてもムダだと悟り、大人しくテントの設営を行う。数十分後、夜営の準備が終わる頃には夜の闇が顔を見せ初めていた。


 夕食を食べ終えたリオたちは、少し早めに就寝することを決めそれぞれのテントに入る。リオはベッドに、カレンとダンテは寝袋に潜り込み眠る。


「……そこに誰かいますね? わたくしには分かります。姿を見せたら如何ですか?」


「ヒッ、バレたかい。目敏いヤツだねえ」


 リオたちが眠りに落ちてから二時間後、一人眠ることなく見張りをしていたファティマは何者かの接近に気付く。暗闇の中からしわがれた老人の声が響き、足音が近付いてくる。


 ファティマの前に現れたのは、白いローブを身に付けた普通の老人だった。――暗闇の中でもクッキリと浮かび上がる、不気味な白い肌を持つこと以外は。


「……あなたは何者なのです? 最初に山頂に到着した時、わたくしたち以外に知的生命体の反応はありませんでした。それが……」


「ヒッヒ。うるさい小娘だねえ。いや、そんなことはどうでもいいか。ここで消えてもらうよ。ファルファレーの邪魔をされちゃたまらんからねえ!」


 老人はファティマの声を遮り、ローブの中に隠し持っていた剣を抜き払い攻撃を仕掛けてくる。それを見たファティマは魔力によるバリアを作り出し、攻撃を防ぐ。


「ヒッヒ。やるのう小娘。だが、そう長くは持たんぞ! ふん!」


「くっ、これは……!」


 老人がほんの僅かに力を込めただけで、バリアに亀裂が広がっていく。ファティマがバリアを修復しようとしたその時、異変に気付きリオが起きてくる。


 老人を発見し、何が起きているのかを素早く理解したリオは飛刃の盾を呼び出す。老人に狙いをつけ、勢いよく飛刃の盾をぶん投げた。


「食らえ! シールドブーメラン!」


「ホッ、そんなもの食らうかい!」


「えっ……!?」


 リオの目の前で、信じられないことが起きた。老人は剣を一振りし、飛刃の盾を真っ二つに切り裂いてしまったのだ。驚いているリオを見ながら、老人はくつくつと笑う。


「ヒッヒ、面白い顔だ。おっと、まだ名を名乗っていなかったねぇ。わしはビウグ。かつて大地の終焉を司る審判神と呼ばれし異神。覚えてから死んでおくれよなぁ」


 老人――ビウグはそう言い、懐からヒビだらけの白いオーブを取り出す。オーブから光が放たれ、それを浴びたリオは身体から力が抜けへなへなと座り込んでしまう。


「あ、れ……? 身体に、力が……」


「我が君! 大丈夫ですか!?」


 ファティマは腕を伸ばし、リオをバリアから遠ざける。その様子を見ていたビウグは、心底愉快そうに笑いながらオーブを懐にしまう。


「貴様、我が君に何を!」


「なあに。わしの力でちょいと脱力してもらったのよ。これで楽に仕留められるというもの……」


 その時――一陣の旋風(かぜ)が通り抜ける。鋭い殺気を纏う旋風(かぜ)に言い知れぬ何かを感じ、ビウグは咄嗟に後ろへ下がった。そんな彼の背後から、静かな声が響く。


「へえ。誰が誰を仕留めるって? じいさんよ、冗談は程々にしておきな。笑えないぜ? そんなのはよ」


「貴様……いつの間にわしの後ろに?」


 ビウグの背後、三メートルほど後ろに生えている高い木の枝の上に、いつの間にかダンテが腰掛け見下ろしていた。右肩に長い黒い槍を担ぎ、目を煌々と輝かせている。


 首から下げられたネックレスが灰色の光を放ち、ゆっくりと明滅を繰り返す。ダンテは木から飛び降り、ビウグのすぐ近くに着地して槍をステッキのように突きながら近寄る。


「ヒッヒ、面白いヤツらだ。魔神と同化することなくつるんでいるとは。貴様ら、名をなんと言う?」


「オレか? オレはダンテ。アーティメル帝国所属の冒険者……人呼んで『槍神』のダンテだ。クソジジイ」


『そして私はグリオニール。ベルドールの座に名を連ねし七人の魔神が一人。灰色の旋風(かぜ)を操る、破壊を体現する者。そして……貴様たちを滅ぼす魔狼なり』


 ダンテとグリオニールは己の名を名乗り、ビウグと対峙する。審判異神はニヤリと笑い、剣を構えた。


「ヒッヒ、いい名だ。よかろう、まずはお前たちを排除させてもらうとしよう。その後で、あのガキをゆーっくりと料理してやるわい」


「やれるもんならやってみな。言っとくが……オレ()()は強いぜ?」


 ビウグとダンテが言葉を交わした、その刹那――二人は目にも止まらぬ速さでぶつかり合う。槍と剣が交差し、互いの命を刈り取ろうと振るわれる。


 ダンテはリオを匿うようファティマに指示した後、夜営地を離れ闇の中へ消える。ビウグもまたダンテを追い、一条の光もない闇へと身を踊らせ消えていった。


「ダンテさん……頑張って……」


 ファティマの腕に抱えられながら、リオはそう呟いた。



◇―――――――――――――――――――――◇



「ヒッヒッヒッ! 自ら闇の中での勝負を挑むとはのう! よほど腕に自信があるのか、それともただの蛮勇か……見せてもらおうかの、お前さんの実力を!」


「へっ! 言われるまでもねえ。たっぷり見せてやるよ。このダンテ様の……」


『いいや、ここは私の実力を見せつけてやらねばなるまい。偉大なる魔神の次男たるこのグリオニールの力をな!』


 林を並走し駆け抜けるダンテとビウグ。グリオニールはダンテの言葉を遮り、魔力を使い風の刃をビウグ目掛けて発射する。が、剣の一撃によって風の刃は弾かれてしまった。


「このクソワンコ! 何やってやがる! 先制攻撃しくじってるじゃねえか!」


『ふっ、そんなこともたまにはあるだろう。気にするな』


「出来るか!」


 ビウグを他所に、二人は言い争いを初めてしまう。隙だらけな二人の背後に回り込み、ビウグはニヤリと口角を上げ三日月のような笑みを浮かべた。


(ヒッヒ。バカな奴らめ。二対一なら勝てると踏んでいたようだが……仲間割れしているようでは無理なことよのお!)


 そんなことを心の中で呟きながら、ビウグはダンテに斬りかかる。その時、ダンテが振り向いた。彼の顔には――満面の笑みが浮かんでいた。


 ビウグが繰り出した斬撃は容易く受け止められ、逆にネックレスから放たれた風の刃と槍の刺突、二つの直撃を食らい吹き飛ばされてしまう。


「なっ――!? ぐうっ!」


「やったぜグリオニール! このジジイ、オレたちの作戦にかかったぞ!」


『ふっ、作戦成功だな。仲間割れしたフリというのも、案外有効なようだ』


 そう、二人の仲間割れはビウグを油断させカウンターを確実に叩き込むための演技だったのだ。ダンテは槍を構え、切っ先をビウグに突き付ける。


「来な、ジジイ。オレたち二人のコンビネーション……たっぷり味わわせてやるからよ」


 槍神と槍の魔神――二人の戦いが今、始まる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] メイドさんあんたも首から下が変形してテントになったらテッペンに頭が乗ってる状態は流石に不気味だぞ そんなんだとリオの寝顔、リオに添い寝、リオに奉仕extra等々が出来んのでは( ̄▽ ̄;)…
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