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フェアラッセンハイト〜孤独


  嫉妬されるのが凡人。茶化されるのが天才。何も思われないのが聖人。敬遠されるのは単なる嫌われ者。



  俺は単なる嫌われ者だった。



  幼い頃から「えーと、キレイな目だね」「外国の血が混じってるの? カッコいい……ネ」等と言われながら距離を置かれていた。

  だから俺も周りの全てを嫌っている。


  遠巻きに観察される感覚。なんとか折り合いをつけられるようにはなっていたが、聖人でもなんでもない俺は周りの人間の事も内心敬遠するように育った。


  いや、先に言った通り基本的に周りの全てが嫌いと言った方が正確だろうか。



  今多少なりとも明るい気持ちになってきた理由はアヤコばあちゃんの存在だ。

 


  アヤコばあちゃんの無償の愛情に触れている今日この頃、周りの『目』なんてどうでもいいかと思いつつある。

  アヤコばあちゃんさえいてくれたら。

  ちなみに最初の格言は俺が勝手に作った。


 


  「なーに、黄昏ちゃってんのよ」


  「あ、梅子……さん」


  女神フリッグこと日本名『梅子』の銀髪少女が、珍しく縁側で安楽にふけっていた俺に後ろから仁王立ちで話しかけてきた。


  「いや、アヤコばあちゃんも言っていた『ロキ』ってどんなんなのかなあと思って」


  俺は適当に誤魔化した。梅子は隣に腰を下ろし、「そうね」と考え込む。


  「一言で言うとトラブルメーカー。あらゆる神の中傷者、あらゆる嘘の張本人、神々と人間の恥、といった所かしらね」


  「つまり嫌われ者なんすね」


  俺と同じだ、敬遠とは違う感じの様子だが。


  「その嫌われ者が、単なる遊びで梅子サン達女神を醜く変えてしまったと」


  「そういう事ね。アンタ飲み込みいいじゃない。私達はアヤコが『青き目を持つ者』を『生み出し』て、その者ーーつまりアンターーがチカラを持つようになるまで待ったわ」


  「俺別に特別なチカラなんて持ってないすけど」


  正直に言ってみた。


  「『エニグマ』を使えるだけで充分よ、あれも言語魔術ってやつなのよ、誰にでも『操作』出来るって訳じゃないから。普通の人間が使っても無意味なの」



 

  「おーい、マサルや。スイカを切ったぞ、食べんか」



  「アヤコ!! だから私が今喋ってる最中だってのに!!」


  女神は激怒した。

  しかしアヤコばあちゃんも負けてない。


  「あ! 梅子!! またわしのマサルに色目を使っているな!? マサルから離れろ!! お前さんの分もスイカを切ったがやっぱりやらん!!」


  「だから、誰が色目を使っているですって!? 私はドイツの神話では最高女神なのよ、もっと敬意を払いなさい!!」


  「ここは日本じゃ、お前さんの事なんか誰も知らん。スイカは要らんのか」


  しれっとかわすアヤコばあちゃん。


  外見8歳児のかれんな女の子が銀髪の中学生女子を心理的にマウントを取る光景なんてなかなかお目にかかれる物じゃない。


  「……要るわよ!! それ美味しそうじゃないの!!」


  女神は見事な半月に切られたスイカに手を伸ばし、かぶりついた。

  ちなみに、トマトで有名な『リコピン』だがこのスイカにもそれが含まれている。


  「俺も、食べようかな。アヤコばあちゃん、ありがとう」


  と、俺がアヤコばあちゃんの小さな手が支えるおぼんからスイカを取ろうとした瞬間ーー地面が揺れた。


  地震だ。

  しかも、震源地は梅子が地面に吐き出したスイカの種の周囲。

  超極地的な、多分ウチの周りを取り巻く町内でしか感じられない地震だったが、大きく揺れた。


 

  またご近所さんに迷惑をかけてしまった。

  俺は人間は嫌いだが罪も無い人に迷惑をかけるのは同じくらい嫌いなのだ。


 

  「この揺れはーー『サーガ』の仕業じゃの。スイカの種に隠れてこっちを伺っておったか」


  「そうね、アヤコ。サーガは私とは正反対に、虫のごとく小さくなるよう『ロキ』に変えられていーーっていうか私、その種を口に含んでた訳!? うわ! ペッ!! ペッ!!」


  アヤコばあちゃんと梅子は戦闘態勢に入った。


  彼女達は魔法のスコップで震源地と見られるスイカの種を潰してまわっていた。なんて地味な光景だろう。


  「えーと、俺は何をやればいいのかな。やっぱ『こんぴゅうたあ』?」


  しかし、揺れが酷い。俺がこんぴゅうたあのある蔵にたどり着くのを邪魔するかのように、大きく揺れていた。立っていられない程の揺れだった。



  「『エニグマ』を使われるのが嫌なのね……アレは死ぬ程痛いから。きっと私の時の様子を見ていたんだわ」


  と、梅子がふうふうと息を吐きつぶやいた。


  「しかし、サーガよ。儂らにスコップで潰されて昇天するのと、こんぴゅうたあの魔法でオーロラになれるのとどちらが良いのじゃ。選べ!」


  アヤコばあちゃんが『サーガ』という2番目の女神を説得しようとしていた。


  するとーー地震は揺れを弱め、まるで「後者の方がいい。オーロラの方が好き」とでも言うように地面は穏やかになった。




  「えーと……『サーガ』と……」



  やっと蔵にたどり着いた俺がエニグマのキーボードに日独辞典をめくりながらその名をタイプすると、すぐに



  「オギャアアアアア!!!!!」



  と、まるで断末魔のような大声が聞こえて来た。蔵の中にいても聞こえる。『サーガ』は小さく変えられたんじゃなかったのか、それでも大きな声を出さずにいられない程の激痛なのか。


  オーロラを見ながら、俺は梅子に「エニグマの魔法ってどれだけ痛いんすか」と聞いてみた。


  すると梅子は、


  「そうね、稲妻に撃たれた上に肋骨をバキバキにやられて内臓を潰されるくらい痛いわ」


  という言葉を返したので、俺は今後エニグマを使うのを躊躇してしまうんじゃないかと思った。

  しかし、アヤコばあちゃんはそんな俺の心情を知ってか知らずか、


  「だが、マサル、お前のやっている事は正しいのじゃ。お前は確実に女神達を救っている」


  と、太鼓判を押してくれた。

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