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ツィーアリヒカイト〜巨乳幼馴染の可愛らしさ

  いきなり投げキスを飛ばして、自宅とは逆方向へ逃げるように走って行った真弓子を追いかける俺。



  普段、運動なんかしないニートの俺は息切れしかけている。

  しかし真弓子は全力で走っても遅い方だから何とか捕まえる事が出来そうだった。



  走りながらも、通行人達が不審な目で俺達を見ているのが分かった。




  「真弓子!!!」



  俺はやっと真弓子の腕を掴んだ。

  反動で真弓子の胸が大きく揺れるのが目の端に見えた。



  「あの、あの、俺さーー」




  「もし、謝ったりしたら許さないから!! だって私が悪いんだもん!!」



  真弓子は涙ながらに叫んだ。

  「私が悪い」のに「許さない」とはどういう了見だ。

  本当に何を考えているのか分からん。



  しかし、真弓子の涙を見たのは初めての事だ。

  間近で見ると、やはり右目に青いカラーコンタクトレンズをはめている。



  真弓子はヒックヒックと泣きながら口を開いた。

  泣かれるとどうしていいのか分からないから、俺はギョッとして黙っていた。



  「私ね、私、マサルちゃんに本気で嫌われたかと思ってずっと悩んでたのーー」


  「いや、アレはその……」



  寝不足だったから八つ当たりしたなんて言えない。だって格好悪いじゃん。


 

  と、この期に及んで俺はまだ真弓子に心を開こうとしなかった。


  真弓子は続けて言う。



  「でもね、でも、マサルちゃんと少しでも仲良くしたくてずっと必死だったの。私、幼馴染なのにマサルちゃんのすとーかーだった……」



  『すとーかー』だって事は自覚してたのか。

  真弓子は俺がどんなに嫌がってもその50倍のスピードで攻めてくる。



  そんな真弓子が、2週間もの間音信不通だったのは確かに只事ではないとうっすらと心配してはいた。



  「でももう、すとーかーはやめようとしてたんだ。だってマサルちゃんが本気で怒るの初めてだったしーーこれ以上嫌われるんだったら、会わない方がいいと思ったの……」



  真弓子の涙は乾きつつある。

  意識して泣き止もうとしていたのかは知らない。


  それでも青いカラコンの目はうるんでいるままだった。



  俺はアヤコばあちゃんのエーエマンーーつまり、俺のおじいさんの事を思い出した。


  アヤコばあちゃんは言っていた。



  『儂は、おじいさんに一度も怒られた事がないんじゃ』



  と。

  俺は、本当にそんな寛容な人の血を引いているのか?

  どんなに『ウザい』真弓子が相手だからって、八つ当たりで怒るなんて。



  真弓子は彼女でもなければ妻でもない。

  しかし、うら若き女の子を泣かせているこの状況を天国のおじいさんが見ていたらばどんな気持ちになるだろう?



  俺はやっとの事で言葉を手繰り寄せようとした。



  「あのな、俺、真弓子があの日来る前から機嫌が悪かったんだよ。だから真弓子は悪くない。むしろ俺がーー」



  「謝らないでってば!! マサルちゃんに『俺が悪い』なんて言葉似合わない!!!」



  どういうイメージをこいつに持たれているんだよ俺は。王様か?



  「ーーだってマサルちゃんは、今までずっと心の目で泣いてたんだもん」



  「……なんだよ」



  こいつ、知ってたのかな。

  俺が小学生中学生の頃に青い目のせいでイジメもどきに遭ってた事を。


  そうじゃなきゃ『心の目で泣いてた』なんてセリフはそうそう出て来ないんじゃなかろうか。



  俺は話題を変える事にした。



  「投げキスをしたのは何でだ」


 

  そこで、真弓子は先程と同じく花のように笑った。



  「『最後のキス』だよ。マサルちゃんの鈍感男子!!」



  「いや、鈍感男子って言われたって……」



  それに、『最後』ったってまず『最初』のキスなんてしてないし。


 

  しかして真弓子は言う。



  「さっき会った時笑ったのはね、久しぶりにマサルちゃんに会えて嬉しかったから。逃げたのは、半分会いたくないと思ったから」


  少し涼しい風が吹いた。

  その風が真弓子の潤んだ瞳もすっかり乾かしてくれたようだ。



  「ーーさっき、お前んちに行ったんだよ。おばさんも歓迎してくれたし、尻尾しか見えなかったけど猫も元気そうだったな」



  『猫』と聞いて真弓子の表情が曇る。



  「アヤコちゃん、あれから大丈夫だった……?」


  俺は真弓子を元気付けようとした。

 

  そして、仲直りのつもりで言った。



  「アヤコなら大丈夫。コロコロちゃんとして、ま……騒がしい家だけど、また来てくれてもいいんだぜ?」



  ツンデレか俺は。




  すると真弓子は本当に嬉しそうに笑った。

  俺から見てもとても可愛らしい笑顔だった。



  「……家まで送るよ。もう暗いからな」



  照れ隠しに俺は言った。



  「そう言えば、今日は飲み会なんじゃなかったのか? 酒飲んでるようには見えないけど」



  「あは。そんな気分になれなかったし、断っちゃった!! でもそのおかげでマサルちゃんにも会えたし、お話できたし、これはもう運命的出会いと言っていいよね!!」



  そう言って真弓子は、「私の家まで競争!!」と言って走り出した。


  さっき走って、俺に負けて捕まったばかりなのにな、と俺は呆れた。


 

  それでも走り続ける真弓子の後ろ姿。

  なぜそんなに生き急ぐのだ真弓子、ハタチの青春よ。


 

  そんな事を呑気に考えていた。

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