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ユーゲント・フロインディン〜巨乳の幼馴染

 


  オーロラが俺の家の屋根に覆いかぶさった事で大勢のインスタ野郎達が集まってきた。面倒だ。



  「うわ、すげえ!!」

  「虹じゃないわ、オーロラよ!?」

  「1分で100いいねいったあああああ!!!」



  「皆の衆、これはわしとマサルが屋根から水をぶっかけて作り出したキラキラじゃ。充分に写真を撮ってくれて構わないが、ほどほどに散らばってくれると嬉しいんじゃがのう」



  アヤコばあちゃんはインスタ野郎達の服のすそをチョイチョイと可愛らしく引っ張って周り、それから俺と2人で適当な頃合いを見て大女によって散らかされた居間に入った。



  彼女は2人分の緑茶を淹れ、ほれ、美味しいお菓子だと言ってまたホワイトロリータを差し出した。菓子受けの中にはプチも入っている。ブルボンが好きなようだ。



  俺はとにかく、あの化け物について、蔵の中にあったエニグマとの関係性について知りたかった。



  アヤコばあちゃんはアチッアチッと猫みたいに舌をやけどさせながらお茶を飲み、説明にかかる。



  「さっきの『フリッグ』は、元々は北欧神話の中の女神だったのじゃ」


  「ふんふん」


  それは日独辞典で知った。何にも興味を持てない俺でも命に関わる事だったんで必死で耳を傾ける。


  「『フリッグ』はオーロラと共に天界に帰ったぞ。ちなみに儂は巫女ワルキューレじゃ。巫女と言っても特別な巫女じゃぞ、なにしろ何かと命を狙われておるんじゃから」


  「そんな特別扱いってあるかよ……」


  俺はさっきまでの戦いの事もあって脱力した。聞きたいが、寝たい。だが、聞かなければならない。


  「呪われし女神達は、元々は神聖なる存在だったのじゃ。それが、『ロキ』という悪戯好きの神によってあんな姿に変えられてしまい、早幾とせ。女神達は封印を解かれて人間界、特にドイツで巫女をしていた儂を追って日本までやってきたのじゃ」



  「ばあちゃんが襲われるのは何故?」


  しごく真っ当な質問だと我ながら思う。


  「そこはほれ、儂を殺すか、救って貰うかすれば彼女らにかけられた呪いを解いて天界に還して差し上げる力があるからじゃ。マサルもそうじゃぞ。その青い目を持つ者は神と関わり合うチカラを持っている」


  「俺が?」


  面倒くさい話になってきた。もう部屋に戻ってソシャゲしてえ。


  「あの『こんぴゅうたあ』はの」


  さっきのエニグマの事だ。


  「 儂のドイツ人の父の、友達が開発したのじゃ。軍事利用がお払い箱になって、『こんぴゅうたあ』を譲り受けた父は『こんぴゅうたあ』に特殊な魔法をかけた。曰く、女神の名前を打てばその女神の呪いが解かれる、という。しかして、儂は『こんぴゅうたあ』の事は全く分からんのじゃ」



  ほら、嫌な予感がしてきた。


  「だからこれからは、今時の若者らしくこんぴゅうたあに詳しいマサルのチカラを貸してほしいのじゃ。いや、危険だから本当は神退治なんてさせたくない。マサルの都合でやめてくれてもいいんじゃ」



  アヤコばあちゃんはプチのラングドシャを食べながら済まなそうに青い目を伏せ、そしてまた申し訳なさそうにちらりと俺の目を見た。

  やはり子猫を思わせる。



  こんな可愛らしい美幼女にチラチラ見られたら人によっては卒倒してしまうんだろうが、彼女が俺の『実の祖母』である以上全然そんな気が起きない。そんな気ってどんな気だって感じだが。


 

  「危ないからヒロシとソノコさん達はこの家から避難させたが、マサルもそうした方が良かったのかもしれん。これから先、新たな女神達が襲って来るはずじゃからの」


  だからってこんな幼女を家に置いてきぼりに出来る訳がなかろう。俺は人嫌いだが外道ではない。


  ちなみにヒロシとソノコさんというのは俺の両親の名前だ。



  「あのさ、アヤコばあちゃん、俺……」



  「マサルちゃん!! さっきのオーロラ何!?」



  ーーそう言って玄関の戸をガンガン叩いているのは、南條なんじょう真弓子まゆみこーー。


  友達のいない俺に友達になって欲しがっている幼馴染だ。


  「真弓子ちゃんじゃないかの、マサル、開けてあげに行ってくるぞ」


  「いいよ、黙ってたらその内帰るだろ」


  「そんな事を言っちゃいかん、真弓子ちゃんはマサルが好きだぞ。良い女の子じゃないか」


  そう言って玄関に向かってモチモチ歩き出すアヤコばあちゃん。


  するとすぐに真弓子は居間に入ってきて俺の隣りに遠慮なく腰をおろした。

  腰をおろした反動で人よりかなり大きめなバストがぷるんと揺れる。


  俺、性欲ない訳じゃないけどこいつのこういう所ダメなんだ。


  「真弓子ちゃんや、また随分すそのないスカートじゃ。ズロースが見えそうだぞ」


  アヤコばあちゃんが目を丸くしてあれまあと言った。

  ズロースというのはパンツの事らしいが、真弓子は幼女に服装を正すよう注意をされてもお構い無しだった。


  引きこもりの俺と違ってうちに来るたびアヤコばあちゃんともよく話していた真弓子は、


  「ズロースう? 大正時代じゃないんだからあ」


  と、ケラケラと笑った。


  分かってる。

  こいつは、俺の気を引くために胸を強調した服を着て、短いスカートを履き、むっちりとした太ももを見せつけようとしているんだ。


  だがこいつはいかに幼なじみであろうとも俺にとって「信用ならない」「他人」の1人であり、何のために俺に気に入られようとしているのか分からない「魔女」に等しい。


  何より、色仕掛けで人の心をどうこうしようとしている所が信用ならない。


  すると真弓子はアヤコばあちゃんの淹れてくれた緑茶をがぶ飲みして、


  「相変わらず、嫌な目で私の事を見るんだね」


  と少し寂しそうに言った。

  いけないいけない、ほだされてはいけない。


 

  「『目』の事は言うな」


  「あ、違うよ!! そういう意味じゃない、私はマサルちゃんが左目の事気にしてるの知ってるし……」


  それから、俯き加減に「でも少しくらい振り向いて貰いたいし」などと言った。


  ほだされてはいけない。


  と、そこでアヤコばあちゃんががま口を開きながら俺ににっこり笑いかけた。


  「マサル、お小遣いはいらんか。真弓子ちゃんと一緒に美味しい物でも食べてくるんじゃ」


  「お小遣いなんていらないよ!!」


  真弓子はアヤコばあちゃんが俺の『祖母』である事を知らない。

  23歳のニートが8歳児からお小遣いを貰うなど、真弓子にとってはさぞ奇妙に見えるだろうと思いきや。



  「すごーい! アヤコちゃんは、お金持ちなんだね!!」



  子どもらしい冗談だと思ったのだろう、またけたたましく笑った。


  「儂はの、年金を貰ってるんじゃ。だからお小遣いくらいはあげられるんじゃぞ、ほれ」


  そう言って差し出したのはーー。


  首里城の描かれた2000円札。

  初めて見た。

  真弓子も「これ、本物のお札っぽいけどなあに?」と不思議がっている。


  「いつかマサルにあげようと思ってとっておいたんじゃ。使うより、しまっておいた方がいいかのう」


  しかし、そんな事より本名が『エッダ』のアヤコばあちゃんが日本国籍だったとは。これで俺の中の謎は1つ解決した。

 


  アヤコばあちゃん、おそるべし。


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