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ゲフォルクス・フラオ〜梅子の従者/滅亡天使

  梅子のしもべとかいう『フッラ』が珍しく梅子の手によって浄化されてから数日。



  その数日間、梅子は落ち着かない様子であった。



  「フッラはね……一応女神なんだけど、『滅亡天使』の異名を持つ恐ろしいやつなのよ」


  「滅亡天使?」



  音ゲーか何かで聞いた事のあるフレーズだ。

  俺は梅子に質問する。



  「滅亡天使ってさ、その女の子が応援した者がかえって不幸になるってやつ?」


  「あんた、タメ口がすっかり板についてきたわね!? ーーでも、そうよ。その通りよ」



  音ゲーやってて良かった。

  しかし、具体的にはどんな不幸がその者に待っているのかフンワリとしか俺は知らない。


  「思い出すのも恐ろしいけどーーフッラが私のしもべになって以来、不幸続きだったのよ。天界で育てていたハーブが全部枯れてしまったり、神殿の柱という柱が急に折れて全壊したり。そして最後にはーー」



  「お前さんが『ロキ』に化け物に変えられてしまったって事じゃな。最高女神なのに」


  アヤコばあちゃんがお茶をすすりながら補足してくれた。


  「そうよ……あいつは私に懐いてる。もしフッラが私のように人間化して現れようものなら、私、只じゃ済まされないわ!!」



  こんなダ女神に懐いてくれるなんてそれだけでも感謝するべきだと思うが、そんな事情があるならと黙っておいた。



  「こんにちはーー!!」



  玄関の方から真弓子の元気の良い挨拶が聞こえた。今日は来るはずじゃないのに、何だろう。



  大分暑さがマシになってきたとは言えまだ秋は遠いのに、真弓子は長袖のブラウスを着てきた。



  さすがは服飾系学校の学生、お洒落は我慢かと思って感心した。



  そう言えば、ミニスカートを履いていた時も恥ずかしさと戦っていたのかもしれん。



  俺は真弓子に遅まきながら感謝した。



  そんな事を思っているとーーよく見ると真弓子の後ろに金髪の外国人少女がいる。


  梅子よりちょっと年下くらいに見える。


  「真弓子、その子は?」


  「あのね、通りを歩いてたら、この辺で阿僧祇あそうぎという人がいないかって聞かれたから、連れてきちゃった。外国人だし、梅子ちゃんの知り合いかなと思って」



  「ぎゃあああああああああああ!!!」



  梅子が、エニグマられた時よりももっと凄い叫び声をあげた。



  「落ち着くんじゃ、梅子!!」

 


  たしなめるアヤコばあちゃん。

  するとその金髪少女は歓喜の笑顔を浮かべ、



  「フリッグ様!!」



  と言って梅子に抱きついた。


  「えっと……『フリッグ』? 梅子ちゃんの本名かしら」


  1人で勝手に合点がいった真弓子。説明するのが省けて助かる。


  「そうそう、そんな感じ」


  俺が同意すると、真弓子はニッコリ笑った。俺は、急にドキンとした。何だろうこの感覚は。



  「フッラ!! 離しなさいよ!? 天界に1人で帰りなさい!!?」


  「フリッグ様、冷たい事を。私は貴女様が『ロキ』に姿を変えられて以来、ずっと心を痛めていましたのよ」



  『フッラ』は梅子に抱き付いたまま離さない。



  「きゃあああああああ!! やっぱり!! あんたなんか助けるんじゃなかったわ!!!?」



  只事ならない様子に怖気おじけづいた真弓子は、


  「あのう、何があったか知らないけど……。立て込んでるようだから、私お邪魔するね」


  と言って帰ってしまった。

  その姿を見送る俺。

  真弓子の右目は今日も青かったな、と何だか温かいような気分になった。



  まあそれより。

  フッラとか言うこの女神、化け物だった時は俺の部屋を嗅ぎ付けて登場したくせに人間化したら住所を忘れちまったのかな。



  梅子に負けず劣らずのダ女神だ。



  ーーと、梅子が騒ぎまくる。



  「ちょっと!! 今まで1回もなかったのに蚊に刺されたわ!!? しかも3カ所よ!!!」


  「あらお可哀想ですわフリッグ様、私の神力で治して差し上げます」



  そう言ってフッラは梅子の患部に手を置いた。が。



  「冷たい!!!? ちょっと、冷やすってレベルじゃないわよこの冷たさは!? ドライアイスを押し付けられたみたいだわよ!!?」


  「あら、ごめんなさいませ、フリッグ様……」



  アヤコばあちゃんが見るに見兼ねて間に割って入った。



  「どれ、刺された所を見せてみるんじゃ、梅子。なんじゃ、こんな虫刺され神力を使うまでもない。薬を塗っておけば治る」


  「でも、虫に刺された事なんかなかったのに!?」


  しかしフッラは嬉しそうに、


  「虫が、やっとフリッグ様の神聖な血に気付いたのですわ」


  と頓珍漢とんちんかんな褒め言葉を梅子に送った。



  アヤコばあちゃんはフッラにも話しかけた。



  「ところで、フッラよ。お前さんもその姿で人間界に居るつもりなのかの」



  すると金髪女神は、


  「ええ、勿論。私はお優しくしてくださったフリッグ様にどこまでもどこまでもどこまでもお仕えする所存ですわ」


  と幸福そうに笑った。


  「冗談じゃないわ!! あんた、自分のあだ名知らないの!!? 天界に帰りなさい!!」


  梅子が懇願にも似た悲痛な口調でフッラを追い返そうとしている。



  しかしアヤコばあちゃんは、



  「梅子よ、自分を慕う者を邪険に扱ってはいかん。フッラよ、お前さんの大好きな『フリッグ』はここでは梅子と呼ばれておる。お前さんにも何か日本式の仮名を付けようかの」


  「まあ、『ウメコ』様……。素敵なお名前ですわ。アヤコさん、私にはどんな名前を付けてくださいますの」



  ワクワクした様子のフッラ。

  戦々恐々としている梅子。

  アヤコばあちゃんはちょっと考えて、



  「そうじゃの。さっきお前さんを連れてきてくれた真弓子ちゃんと少し似ているが、『麻里亜子まりあこ』なんてどうかの」


  と命名した。

  怒り高ぶる梅子。



  「アヤコ、勝手にここに置く事を決めないでよ!? しかも、もしかして私のよりも良い仮名なんじゃないの!!?」



  「勝手に決めるも何も、ここはマサルと儂の家じゃ。お前さんに発言権は無い。マサル、麻里亜子を家に置いてもいいかの」



  アヤコばあちゃんは俺の許可を求めた。別に断る理由も無かったから、「別に、いいと思うよ」と答えておいた。


  梅子は自分が出ていくという選択肢は無いらしく、


  「やめて!! やめてよ!? やだ、また虫に刺されたわ!!? 今度は5カ所よ!!!」


  と騒いでいたのだった。



  フッラこと麻里亜子に好かれるとトラブルが起きるというのは本当らしい。

  せいぜい好かれないようにしなきゃな。



  と言っても、麻里亜子は梅子一筋のようだが、さて。

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