表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

フッラ〜梅子の愛する? しもべ

  『ロキ』に俺が女神浄化をしている事を勘付かれたってのは分かった。



  でも、だから何だ?


  俺は今まで通りアヤコばあちゃんを助ける為にエニグマの使い方を探っていくだけだ。



  ーー猫になるのは金輪際ゴメンだが。アヤコばあちゃんが怖がるし。



  少しずつ涼しくなっていく季節。

  梅子が珍しく神妙な顔つきをして縁側に座っていた。


  梅子の事とは言え何となく気になる。

  普段は傲岸不遜でどんな時でも気位が高く偉そうなのに、こんなしおらしい表情をしてるなんて見た事が無い。



  お節介かもしれないけどちょっと聞いてみるか。

  こんなのでも今や家族みたいなものだしな。



  「梅子、まさかと思うけど悩みでもあるのか」



  するとダ女神はキッとこちらに顔を向け、



  「梅子『さん』でしょ!? それに何いつのまにタメ口になってんのよ!!?」



  と喚いた。しかしその表情もどこか浮かない感じだ。



  タメ口をなじられた俺だが、この間の俺が『ロキ』に猫に変身させられた時、全く役に立たずアヤコばあちゃんに怒られたダ女神。



  無能なんじゃないかと改めて感じた。ただそれを指摘したら火に油を注ぐ事になるので黙っておこうーー。と思っていたが。



  「ああ、この前の猫に変身させられた事についてつい心の声が……。で、梅子『さん』、何かあったんすか」



  「別にーーマサル、あんたには関係ない事よ!!」



  そう言って縁側を出て行ってしまった。生理かな。女神にもそういうのがあるのかは知らんが。


  もし生理だとしたら俺に出来る事は何も無いし、余計なお世話かもしれない。

  そっとしておいた方がいいかなと思いその件は終わりにした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  日が沈むのがだんだん早くなった。アヤコばあちゃんが俺に声をかける。



  「マサルや、ご飯の支度が出来たぞ。今日はマサルの好物のライスッカレーじゃ」


  「やった!! 食べたいと思ってたんだよね」



  アヤコばあちゃんは嬉しい事にいつもその時々に俺の気分を察してくれる。これも梅子には無い神通力の一つであろうか。



  どうでもいい事だが、梅子もアヤコばあちゃんの作る『ライスッカレー』は大好物だ。嬉しがるだろうと思っていたが、さっきと同じく相変わらずどこかおかしい。



  「梅子、食欲が無いのか」


  俺が聞くと、梅子はまた激怒する。


  「だから『さん』付けしなさいって言ってるでしょ!? ドイツの最高女神に対してのタメ口もやめなさい!!!」



  所が梅子はスプーンを置き、



  「今日は食欲が無いわ。ご馳走さま。ーー『ご馳走さま』って良い言葉ね。褒められる日本の習慣だわ」


  とらしくない事を言って席を立った。



  「アヤコばあちゃん、梅子がおかしいよ……」



  だがアヤコばあちゃんは動じる事なく、


  「ま、そういう事もあるじゃろう。それよりマサル、お茶はいらんか。暑い時には熱い物をと言いたい所だが、涼しくなってきたしライスッカレーには冷たいお茶が合う」


  と言ってキッチンに行ってしまった。



  愛子はいつも通り黙々と、少しずつスプーンで『ライスッカレー』を口に運んでいる。


  相変わらず上品だな、と見つめていると、それに気付いた愛子は「マサル様、お見つめにならないでください」と言って顔を赤くした。可愛いな。




  その晩の事だった。

  家中寝静まり、起きているのは俺だけという状況でーー5番目の女神と思われる『化け物』が俺の部屋に現れたのである。



  「うわ……」



  その姿は、第1番目の『化け物』として俺達の前にやって来たフリッグーーつまり梅子だーーの姿によく似ていた。


  微妙に違うのは、頭髪は金色で梅子の時より身体がやや小さいという所だけだろうか。



  初めて梅子と相対した時は混乱の中で無我夢中だったが、今なら曲がりなりにも4人の女神をエニグマってきた。



  アヤコばあちゃんに迷惑をかけず1人で解決出来るかもしれない。

  俺とて成長しているのだ。



  「おい、お前の名前を言えよ。エニグマって浄化してやる」


 

  伝わるとは思えないが一応聞いてみる。

 


  アヤコばあちゃんは敏感だし優れた神力の持ち主だが、寝ている時だけはまるで子どものように(身体は子どもなのだから仕方ないのだが)ぐっすり寝ていて、起きない。



  今だって自室ですうすうと眠っているに違いない。


  俺は先に言った通りアヤコばあちゃんを起こして手を煩わせたくなかったし、俺1人でも何とか出来るんじゃないかという自信があった。



  幸い、アヤコばあちゃんが「マサルの自衛の為に」と言ってエニグマを俺の部屋に置いておいてくれていたし、日独辞典も手元にある。



  ーーだがーー。


  「ギャーオ!! ギャーオ!!!」


  『化け物』は言葉を発する事が出来ず、また意識も半分怪物化している為自分の名を名乗る等到底出来ないようである。



  しまったな、女神の名前を順番に聞いておくんだった。



  やりたくなかったが仕方がない、アヤコばあちゃんを起こしてーーと、思っていたら、




  「マサル!!」




  ドアを開けて、まさかの梅子が入って来た。



  「梅子!? お前起きてたのか!!?」


  梅子はこんな状況でも激怒する。


  「『さん』を付けなさいよ、『さん』を!!! しかも『お前』とは何よ!!? ーー今夜辺り来るんじゃないかと思って、気を張っていたのよ」



  それは、ダ女神にしては珍しい。昼間の梅子の様子と何か関係があるのだろうか。



  しかし、それなら丁度良い。



  「梅子……さん、それならこの『女神』の名前を教えて!!」



  ところがーー。

  梅子は口をつぐんだ。

  部屋の中で暴れ回る『化け物』。



  尻尾を振り回し、壁に打ち付けている。

  一撃でテーブルが木っ端微塵になってしまった。



  「おい梅子、何やってるんだよ!?」



  「『さん』を付けなさいよ!!! ーーエニグマを使うのは、今回は無しにしてほしいわ」



  歯切れ悪く、梅子は俺に頼んできた。



  「ーーー!?」



  命からがらに逃げ回りながらも、梅子の告白に俺は呆然とした。




  「こいつの名は、『フッラ』ーー私の、しもべである女神よ」



  「え……」



  梅子に近しい女神なのか?



  「ろくでもない女神だけど、しもべはしもべーーエニグマで、あの死ぬほどの激痛を味わわせたくはないわーー」


  「じゃあ、どうするってんだよ……」


  「私の神力、『つるぎ』でこいつを切るわ。それでも痛いだろうけど、エニグマの物凄い、死ぬんじゃないかっていう激痛よりはマシだわ!」



  そう言って梅子は呪文を唱え、剣を召喚した。



  「フラメン・シュヴェーアト!! フッラ!! 私の手で天界に戻りなさい!!!」


 

  ーー『フラメン・シュヴェーアト』?


  どうせ梅子の事だからデザートナイフみたいな剣を出すに違いない。



  と、思っていたらーー。

  出て来た剣は、ファンタジーの世界に出て来るような立派な物だった。



  しょぼいのが出て来ると思ったらめちゃくちゃ立派な物だった。



  梅子の剣が、『フッラ』を真っ二つにした。それは神器らしく異常に斬れ味の鋭い剣で、なるほどエニグマるよりも痛みは感じないだろうと思わせる光景であった。



  真っ二つにされた『フッラ』の身体は溶けていき、やがて煙となり蒸発した。


  もうこれエニグマいらなくね?



  そこへ、トン、トンと階段を昇る音がして、アヤコばあちゃんが姿を見せた。



  アヤコばあちゃんはノースリーブでオレンジ柄の模様が入ったワンピースタイプのパジャマを着ていた。



  「何じゃ、うるさいのう。マサルや、嫌な夢でも見たのか?」



  アヤコばあちゃんは眠くて仕方ないという様子だった。



  「うんーー凄く嫌な夢を見たーー。梅子が女神らしい振る舞いをしたんだ」


  「『さん』を付けろと言ってるでしょ!? 私が女神らしくしてちゃいけない訳!!?」



  梅子がいつもの調子を戻した所で、こんな事を呟いた。



  「フッラ……。あいつ、大人しく天界に帰ってくれればいいんだけど……」



  「フッラと言えば梅子、お前さんの世話係の女神じゃったの。なんじゃ、あの女神が来たのか」



  と、そこで散らかされた部屋の様子に気付いて動揺したらしく、




  「マ、マサル!!? 大丈夫じゃったか!!?」



  アヤコばあちゃんは今更のように俺の無事を確認した。



  そして『マサルを危険に晒した』という理由でまた梅子を柱に縛り付けた。



  しかし今回は梅子は悪くない。

  俺の必死のフォローで梅子は柱から解放された。



  梅子はちょっと泣いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ