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少年、向かう場所を探す。
ここは一人の魔女とその召し使いが住む建物。
城という程の物でもなく、
屋敷という程でもなく、
しかしたった二人しかいない建物なのに
砦、という機能の建物。
その砦の主の間。
自称二流魔女、リリエラ=フロゥマージュ。
空間が近くでねじまがるのを感じ、召し使いの
イツキ=フロゥマージュにその事を告げる。
「イツキ。何者かがこの砦に空間転移をするつもりです」
「もしや」
「いえ、この乱暴な空間の開きかた。無事に移動するという感じの意図を持ちません。送り付ける、投げ捨てるという感じでしょう」
厄介事でしたら私が見て参ります、と即答してイツキが主の間を退く。リリエラは一人になると窓の外に目を向けた。
「よりによって夕方前とは…」
この砦。名を[霧]という。1日のうちで朝方、夕方、真夜中。その決められた時間以外は常に
霧を纏う砦。
砦の所在が見える時間を間近に控えての厄介事。
リリエラはため息を溢すのだった。