14章
思いは繋がる。
その時が来た。
⒕
「クラインフェルター症候群って何?」
お台場の砂浜で、麗奈は陸に質問した。
「三毛猫のオスは、染色体異常で産まれる。俺も染色体異常で産まれた男なんだ。そして男だけど、精子がない。つまり、男性不妊の障害がある。春休みに、婦人科と泌尿器科に行って調べたんだ。」
無精子を知った過去のきっかけと、それによって自分は女性と本気で付き合う気持ちがなかった事などを麗奈に詳細に話始めた。
陸の話を全て聞き終えたあと、麗奈は、少しの間考えこんでいて、そのあと口を開いた。
「そうなんだ。なんかよくわからないけど。ただ、陸が、この話を私にしてくれた事が嬉しい。」
「麗奈に、俺の全てを知ってもらいたかった。難しい話になっちゃったけどさ。でも、自然妊娠は不可能だけど、不妊治療で自分の子供を授かれる可能性があることも知ったんだ。だから、自分に自信がついて麗奈に、自分の気持ちを話す決意が出来た。」
「うん。」
南風が吹き、2人の髪を揺らしている。
だがまだ4月なので少し寒くなってきた。陸は、自分に寄りかからせるように麗奈の肩を抱き寄せた。
「今まで、俺は女性を幸せにする、資格はないって思ってたけど、今は幸せにする資格があるのかもって思えるようになったんだ・・・。あとさ、ずっと麗奈を拒否していたけどずっと麗奈に惹かれていたんだ。正月にあのキスマークを見た時に、麗奈が好きな気持ちが爆発しちゃってさ。自分の気持ちに嘘がつけなくなった。あー、俺って麗奈が好きなんだな。好きでたまらないんだなって。だから麗奈、俺の体には障害があるけれども、それでもいいなら、俺の彼女になってくれないか?」
陸は、周りからは見えない心の壁を抱えていた。
しかし、それを乗り越えようとするきっかけを知らず知らずのうちに与えてくれた麗奈は、陸にとって大きな存在となった。
「・・・はい。お願いします。すごくうれしい。」
麗奈は直ぐに返事をした。そして涙が出てきた。
「よかった。ありがとう麗奈。」
「・・・ねぇ、陸。私の幸せは、陸が子供を作れるかどうかじゃなくて、まずは陸がいないと幸せになれないの。陸の全てを知っている訳ではないだろうけど、優しいところやお母さんと暮らしてる様子や理学療法士に対して頑張っている所とか好きだし、尊敬もしているから。私は、近藤陸という人が好き。陸が居れば幸せ。陸の笑顔が大好き。」
涙声でやっと最後まで言い切ったあと、陸が麗奈の顔を持ち上げハンカチで麗奈の涙を拭いてくれた。
麗奈は、少し照れて笑顔になったその時、陸は麗奈にキスをした。
二人の想いは繋がった。
ひとまず、麗奈と陸の話は終了。
次章からは、河合美穂と唐沢和也の話となります。