第四話 パティシエとキャラメルラテ
ある日の火曜日
私の従姉妹の零さんは、この喫茶店のマスターです。
早い段階でコーヒーの知識や技術を習得して、先代から受け継ぎ、マスターになったそうです。
そんなマスターを幼い頃から見ていた私は、マスターの影響で、喫茶店で出すデザートを作りたくて、現在は中高一貫の製菓学校に通い、立派なパティシエールになるため勉強中です。
優しいマスターは、ここでデザート作りの練習をさせるだけでなく、そのまま商品として出さしてくれてます。本当に感謝しかないです。
そのせいかどうか分かりませんが、最近、いつもマスターばかりを見ている気がします。ただの従姉妹のはずなんですけどね。
「千尋」
「は、はい!」
するとマスターが私を呼びに来たようです。どうかしたんでしょうか?
「休憩する?お客さんもいなくなったし」
「あ、はい。ではそうしようかな」
どうやら休憩するようです。わざわざ私を働かせていただいているのに、本当にマスターは優しいです。
「千尋、何か飲む? サービスするよ」
「いいんですか? では..」
「キャラメルにする?」
「え、あ、じゃあお願いします」
「了解」
何で分かったんでしょう。確かに、私はお気に入りのキャラメルラテを頼むつもりでしたが。
などと模索していると、マスターがカップを持ってこちらにいらっしゃいました。
「お待たせ、キャラメルラテだよ」
「ありがとうございます」
置かれたカップを持ち上げて、少し息を吹き掛けて冷ましながら、ゆっくりと口に含みました。
キャラメルの濃厚な甘さ。ふわりと漂う香り。やさしいミルクが疲れた体を包み込むような感覚になる。マスターの淹れるコーヒーは、いつも私に優しさを与えてくれて、それが好きだから、決まって私はキャラメルラテを頼みます。
「美味しいです、マスター」
「それは良かった。じゃあ自分は奥に戻るから、飲み終わったらカップを流しに置いといてね」
「はい、ありがとうございます」
そう言い返すと、マスターはにっこりと微笑んでそのまま奥に戻っていきました。その姿を見送って、もう一度私はラテを口にする。
「ありがとうございます、零さん」