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あかいろモザイク

「助けて! タッキー」


 土曜日の早朝。

 でかいカバンを持ったようこが俺の家にあがりこんでくる。


 先週に続き7日ぶり2度目。


 よく考えると、家に女の娘を呼び込むって、いろいろな意味で大丈夫なんだろうか。

 両親にはまだバレていないから、きっと大丈夫だろうとは思うが。


 両親。

 俺の父親は、最近は「海外案件ダー」とかいいつつ家に帰ってこない。

 こういう状態になると何ヶ月かは帰ってこない状態になる。

 また母親は――

 こんなこと言いたくないのだがそんな父親に愛想を付かしてオトコを作って逃げた……


 さておき、今日のようこは部屋に上がりこむなり大きなカバンからあるものを取り出す。


 ノートパソコン(PC) だ。


 さっさと電源を入れると、世界で最も有名な商用OS (名称書くといろいろ問題になるので書かないがWから始まるアレ)が立ち上がる。

 起動音はもちろんジャジャーン。

 OSが立ち上がるとようこはある動画を全画面で表示する。


「この前、たっきーと動画とったじゃん? 2人の始めての共同作業!」


「それ言い方おかしいから。それだとケーキ入刃しちゃうから」


「で、召喚した勇者ちゃんだけモザイク入れてアップロードしたら、みんなから『おぃおぃ魔法陣写ってる』『テラヤバす』『俺も喚べた!』とか非難轟々なのぉ。だからほら、魔法陣にもモザイクいれてみたんだよね。そしたら……」


 そのモザイクの入った動画がちょうど流れている…。

 魔法陣から少女が飛び出し――何か本当に魔術で呼び出しているみたいで編集がんばってる――、そして悲鳴ー―


「おぃ、これ……」


「そうなの! 魔法陣のモザイクってなんか動いているとどうにも触手にしかみえないの! タッキー助けてぇ」


 僕の小説サイトって、一応残虐な表現ありにはしているけど18禁設定じゃないから困るー、と続けるようこ。


「えーっと、困るとこソコ?」


「だって、これだとタッキーが男優デビューしたようにしか見えないじゃん」


「うん。困るところはソレだね。動画のアップロードはやめよう。とりあえず俺のPCにその動画をコピーしてからな」


「うわーん。この動画アップやめたら今月のネタがなくなるんだよー! ネタくれネター。ネタ? あ、タッキー僕と寝る?」


「錯乱するな。言ってるそばから18禁にするのはやめろ」


「ということで、第2案がここに登場するわけです。ぴかぴかぴーん!」


 ようこは、カバンから円盤(ブルーレイ)を取り出した。


「はい、これ。タッキーのPCに入れてぇ~」


 あまい声で囁く。なにかのゲームのようだ。

 

「はぁ、強制なんですね…。って何のゲーム?」


「そりゃ、もちろん新たなネタです」


 円盤をPCに投入し、インストール。

 やけに大きい。5G超えの大規模ソフトらしい。

 こういうのの大半がプログラムではなくて、画像データとか音楽というオチだろうが。

 立ち上げると、やさしい音楽とともにタイトルが浮かび上がった。


「うわなにこれ? 魔王になろう?」


「僕の大きいお友達が作ってくれたのです。さぁ、スタートボタンを押し倒すのです」


「うわナニコレすげぇ、ほんものの異世界みてー(棒」


 いや、多少違っててもお世辞でそう言う。


 だが、マジで写されている映像はライブで異世界を撮っているかのような素晴らしくクオリティの高い映像だった。

 お世辞ではなく、本当に異世界を切り取って写しているかのような空気感を感じる。

 そこは西洋ファンタジーの1シーンのようだった。


 ようこが小説で書いているものとなるべく同じ雰囲気を出そうとしているのだろう。

 部屋の作り。

 調度品の書き込み具合。

 普通のMMO RPGとは一線をかくす何かがある。


「あれ、あの娘はこの前の……」


 そこは寝室だった。かわいい女の娘がベットに腰掛けている。

 その金髪碧眼の娘には見覚えがあった。


「あの娘って、魔法陣の?」


「そうだよ。設定だとあの世界から召喚したんだからねッ」


 モーションキャプチャーとか、なんかそっち系の技術で体格とかをコピーしたのか。

 俺は当たりを付けた。


「で、これ何ができるん?」


「眺めるだけだよ。あと会話?」


「操作はできないのかよ」


「スキルも強制的に取ったり発動できるけど、基本はタッキーが2次元の娘といちゃこらするのを僕が眺めて楽しもう&小説にしようゲーだからねー」


「小説化するのかよ」


「当然じゃん? 先週のも動画は諦めたけどネタはちゃんと書くからね」


「あー。俺はちゃんとかっこよく書いてね」 


「勇者をサポートする邪悪でかっこいい魔法使い枠ですけどね」


「うわ。いかにも黒幕くせー」


「そう、すべてはタッキーが悪いのです。ということでそろそろチャットしない?」


 俺とようこはそれぞれ自分のPCへと向かった。


GM3 :「はぁーぃ。タッキー見えるー」


タッキー:「おぅ、見えてるぜー。

      って、隣にいながらチャットで会話ってのも変な感じだねー。

      ってようこってばGMなのかよ」


ジア  :「GM?」


タッキー:「ゲームマスター。要するに運営(うんえい)の一番偉い人だねー。って、中の人ちーっす! すんげー。かわぇ~」


GM3 :「くっくっくー。褒めても何も出ないよ」


タッキー:「いや、よーこは褒めてねーし」


ジア  :「どちらが私の魔王(マスター)?」


GM3 :「僕じゃないよ」


タッキー:「いやおれ、魔法使いなんだが?」


GM3 :「あー。ジアちゃんは勇者。

      勇者だから魔王だと都合が悪くてねー。っていう設定?」


タッキー:「なんで運営が疑問符なんだよ」


GM3 :「というわけで、そろそろ詳細設定確認いってみようかー。って彼女の詳細設定は実は僕が作りこんでいるのです!」


タッキー:「おぃ、MMO RPG特有の自由度どこいった」


GM3 :「タッキー……。じゃぁ聞くけどさー。このゲームの名前は?」


タッキー:「魔王になろう?」


GM3 :「キミは?」


タッキー:「邪悪でかっこいい悪の魔法使い?」


GM3 :「自由度はあると思う?」


タッキー:「ごめんなさい」


ジア  :「えーっと、私は何をすればよいの? これだけのスキルの見返りに」


GM3 :「なにも?」


ジア  :「は?」


GM3 :「例えばそこのタッキーが『脱げ』とかいうじゃん。脱ぎます?」


ジア  :「嫌です」


タッキー:「えー。って、ようこ、そんなこと俺いわねーよ」


GM3 :「――と、いった感じで女の娘と会話するゲーなのですよ。タッキー。味付けでMMORPGっぽくしてるけど、という設定。ほら戦闘シーンとか書くのめんどいじゃん。恋愛とか書きたいわけよ。そして僕とタッキーの仲に反映したいわけよ」


タッキー:「――なるほど」


GM3 :「さて、そろそろ詳細設定見ません?

      タッキー。メニューボタンからステータスを開いてみるのです」


タッキー:「うぃー」


ジア  :「あ、ちょっと……」


『名前:ジア・スルターナ・アフタースクール

種族:人間

職業:公式勇者 (kousiki yusya) Base.Level.110 Job.Level.50

デュアル:空間魔術師 (Sky walker) Job.Level.50

ジョイント:貴族/王族 Lev.3

称号:スルターナ・アフタースクール公国第一公女』


ジア  :「あれ? 内容増えてる」


タッキー:「おーぃ、公式勇者ってなんだよ。公式勇者って。普通ここは剣士とか魔法使いだろう?」


GM3 :「え? 一般的なMMO RPGには大抵いるじゃない公式勇者。メインストーリーとしてサーガを作るんですよ。サーガ。だって運営(うんえい)なんだから」


タッキー:「あー。小説の? 責任重大だなー」


GM3 :「がんばってね。タッキー」


タッキー:「うーむ。それでこのスキルとかどうなっているの?」


GM3 :「必須スキルは習得済みで、デュアルジョブの空間魔術は異世界転送できるって設定のために瞬間転移は取ったけど、後は自由だよ?」


タッキー:「なるほどー。異世界転送ネタのために作りこんだんだね。で、なにその必須スキルって……」


 俺はステータスから職業欄をクリックしてスキルの一覧を表示させた。

 そこには、こんなことが書いてあった。


『メインジョブ:スキルポイント44/50

- アカウントバーン  Level.1 ([使う]/[詳細])

- アカウント・ドーン Level.1 ([使う]/[詳細])

- 聖なる光      Level.1 ([使う]/[詳細])

- その他|([追加取得])』


『スキル名:アカウント・バーン(垢BAN)――

習得可能 Job.Level.1 / Skill.Level.1 MAX

スキル持ち(プレーヤー)のアカウントを破壊できる。アカウントを剥奪するとそのスキル持ち(プレーヤー)が取得した経験点、アイテム等は全て廃棄される。

このスキルは運営側必須スキルであり、全ての行為に優先される』


『スキル名:アカウント・ドーン(垢ドン)――

スキル名:ob.Level.1 / Skill.Level.1 MAX

民間人(NPC)スキル持ち(プレーヤー)に設定することができる。初期状態ではコミュニティ関連と決済ができる。

マスターが付くまで職業は設定できない。また相手ステータスも確認できない。民間人(NPC)と同様に殺されると死ぬ。

また、垢BANされた民間人(NPC)を再びスキル持ち(プレーヤー)に設定することはできない。

すでにスキル持ち(プレーヤー)である場合にも無効。

このスキルは運営側必須スキルであり、アカウント・バーンの次に優先される』


『スキル名:聖なる光(ホーリーライト)――

習得可能 Job.Level.1 / Skill.Level.1 MAX (パッシブ)

ごめーん。これ取るとレーティングに対応するためにえっちぃなシーンになるとアニメみたいに謎の光が現れて大事なところが隠されて見えなくなるんだ。

光が不適切なようなところだと黒くなったり、謎の花瓶が出現したりしちゃいまーす。

全キャラ取得可能。スキルポイント消費不要。というか必須スキルでーす』


『デュアルジョブ:スキルポイント27/50

- 瞬間転移 Level.20 ([使う]/[詳細])

- その他 ([追加取得])』


『スキル名:瞬間転移――

習得可能 Job.Level.30 / Skill.Level.20 MAX

空間魔術の代名詞スキル。一度でも見たことがあるのなら、その場所に瞬間転移ができる。

使用MPは距離、最大移動可能距離はスキルレベル、リキャストタイムはINTに依存する。

ただし異世界間移動時にアイテム/装備品は持ち込めない。

また、生存できない地域に転移すると死ぬ。

- Level.1 1cm,

- Level.2 4cm

- Level.3 8cm,

- Level.4 16cm,

- Level.5 1m (1キャラ分),

- Level.6 1m (1キャラ分/ここから攻撃回避可),

- Level.7 4m,

- Level.8 8m,

- Level.9 16m,

- Level.10 32m,

- Level.11 333m,

- Level.12 634m,

- Level.13 2,187km,

- Level.14 3,000km,

- Level.15 6,371km,

- Level.16 12,742km,

- Level.17 10光年,

- Level.18 10万光年,

- Level.19 10億光年.

- Level.20 160億光年』



タッキー:「おーぃ、垢BANってなんだよ、垢BANって」


GM3 :「とても危険な行為なので、悪質なプレーヤーのみに実施してください」


タッキー:「こんなの怖くて使えねぇよ」


ジア  :「あの……」


タッキー:「ん? どうしたの? ジアさん?」


ジア  :「お願いが、あるんです」

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