794年:平安京で鶯は鳴いた
リナ :「こんばんわ。魔王」
リナは上方を見上げアイサツをする。
鳴くよ鶯:「リナちゃんコンバンワー。元気してたかなー。ってここどこ。あれ? キミってまさか――」
リナが見上げた先には何もないが、リナのメッセージウィンドウにはリナの魔王のメッセージが入電している。
「?」
しかし、ジアのメッセージウィンドウにはそのメッセージが見えない。
メニューの中にあった「パーティ登録」という設定をすれば他者の魔王と会話がもしかしたらできるのではないか。
と リナとジアとの間で話あって「パーティ登録」を行ったが、どうやらそれは無駄だったようだ。
ちなみに「パーティ登録」のやり方は相手のステータスを触りながら、出てくる「パーティに誘う」というボタンを押すと相手に表示される、「パーティに誘われました。参加しますか? (Y/N)」というメッセージに相手が答えるだけだ。
鳴くよ鶯 :「えーっと、ステータスバーを確認っと……。
お。『ジア・スルターナ・アフタースクール』姫さん?
あー。さいてーんところの……。
しかし、ものっそすげー美人だねぇ。
金髪碧眼巨乳ぇ……。
どこぞの忍者なら全力で叫びだしそうだ」
リナ :「魔王。魔王に姫様のお姿を≪奪って≫見せてみました。これは盗賊職に相応しいでしょうか?」
リナはいたずらに成功した子供のように少しだけ楽しげに語った。
「なにを、言っているの?」
鳴くよ鶯:「あぁ良いぞ。良いぞ。声も素敵だ。甘ったるくて、気だるい系かな? 残念なことに経験点にはならんようだが」
「――もしかして、向こうの世界からはこちらが見えているの?」
鳴くよ鶯:「俺んところからはウィンドウとか、もろもろ――」
リナ :「えーっと。がっつりだそうです」
そしてジアは自分の姿を確認する。
リナは可愛らしい寝巻き姿であったが、ジアは思いっきり薄いネグリジェだった。
リナが自らも犠牲にして謀ったことに気づく。
「き、きゃッ――」
ジアは反射的に近くにあったガウンを羽織った。
「…… (冷たい視線を送る)。直ちに視線を送るのをやめなさい。直ちに」
鳴くよ鶯:「いやこれ、俺のせいのか? 俺のせいなのか?」
リナ :「さて、とりあえず姫様のかわいい姿を報酬にするとして。
洗いざらい吐いてもらいましょうか?
いま、『さいてーの』とか言いましたよね?」
鳴くよ鶯:「吐くって。これ尋問なのかよ?
まぁいいや。リナちゃんのお願いなら何でも教えてあげる。
何が知りたい?」
リナ :「まず、さいてーの魔王とかいう姫様の魔王から」
鳴くよ鶯:「そうだなぁ…。『うんえい』で分かるのだろうか?」
リナ :「うんえい?」
鳴くよ鶯:「この世界に降りた魔王達に
面白おかしい娯楽を提供する魔王の資格認定者。
正式名称が、雷精霊群の技術基盤機構」
リナ :「そんな存在がなぜ姫様に?」
鳴くよ鶯:「そりゃ、まさに一目瞭然だろ。
こっちの世界でもこんな美女にはお目にかかったことなど無い。
まぁ、うちのリナちゃんの次だがな」
リナ :「それは主観が入りすぎているのではないですか?」
鳴くよ鶯:「ははは。
そんな存在の隣にいるリナちゃんは必ず幸福で酷い目にあう。
きっと、せいてーのことだ。
変なイベントが次々と起きるよこれから。
いまから楽しみで仕方がない…」
リナ :「幸福で酷いって……」
鳴くよ鶯:「酷い目にはあうだろうけど、絶対に死にはしないさ。という意味だな」
リナ :「はぁ……」
鳴くよ鶯:「さて、今日はいろいろ堪能したし、俺はログアウトするよ。
なにしろ姫様の視線が怖いしな。
次はちゃんとした姿で魅せてくれとジア姫様には伝えてくれ。
さーて、さいてーんとこの小説読み込んでくるかな。
こっちにかまけてあんまり読んでなかったし。
何が起きているのかなぁ……。
わかったらまた教えるよん。じゃねー」
リナ :「あ、ちょっと逃げないで」
リナの魔王からのメッセージはそこで途切れ。
結局リナとジアはほとんど情報を得ることができなかった。