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「お帰りなさいませ、坊っちゃま」


「ふう…ふう…ただいま」


ランニングから帰るとセラからタオルを受け取り、軽くかいた汗を拭きながら部屋へ戻って運動着から外出着に着替えてリビングへ行く。

今朝も母が朝食を作ってくれていた。


「おはよう、お母さん」


「おはよう、今朝も頑張ったのね」


「まだまだだよ」


シンプルながらも栄養がよく考えられた食事だ。

味は昔と比べて良くなって、母の料理の腕も上がっている。

私が本で得た知識だと言って、母に話したおかげでもある。

私のことが大好きな母は私が話すことを熱心に聞いてくれる。

たまに一緒に料理をすることもあり、さりげなくアドバイスもしているのだ。

元々、努力家の母ということもあり、どうすれば効率が良いのか考えながら作っている。

前世では、母親と一緒に作ることはしなかったが、話しながら作るのはなかなか楽しい。

母の昔の話を聞くのも前世と違う異文化を学べる機会とあって、まるで冒険記を読んでいるかのようなワクワクもある。

たまに父の惚気を聞くのも息子の役割である。

リア充の話を聞くのは前世とも変わらない。ぐぬぬ。


「天の神々と地の人々に感謝を」


「「感謝を」」


家族3人でテーブルに着き、メイドちゃんずは給仕として立っている。

食前の挨拶をしてから食事をするのだが、日本と違って「いただきます」ではない。

テーブルマナーもフォークやナイフを使う為、洋食に似ているが些細な違いもある。

そこは完璧に覚えた。

前世で汚ない食べ方をする人に嫌悪感があったので必死に覚えたのだ。

それに、母が作ってくれた美味しい食事なのだから、せっかくなら美味しく食べたい。

食に妥協なんてないのだ。


「最近はみんなと仲良くしているか?」


父が珈琲を飲みながら問う。

珈琲や料理にも異世界の勇者が与えた影響は大きいことが分かる。


「うん。昨日、クー兄とシー兄が6歳になったから生活魔法を使っているのを見せてもらった」


今日の食後はタタロンという黄桃のような味の果実だ。

細かい種も取り除かれ、一口サイズに切られている。


「生活魔法か、ナロットが教えると言っていたな」


ナロットさんは、クー兄とシー兄、メアリーゼの母親のことである。


「ウィルはどうしようか」


「アリエルが以前に魔法をウィルに教えたいと言ってたわ」


悩む父に、苦笑いしながら母が答える。


「あー、勝手に教えるなと言うあの子の姿が見えるよ」


「きっとウィルの誕生日の前日にこっちに来るから教えてもらいましょ?」


「アリエルおば…アリエルさんが教えてくれるの?」


「そうなりそうだ」


お姉様大好きなアリエルは度々、家に来ては母や私を愛でていく。

きっと魔法学園では毎日になるだろうな。

悪い人ではないんだけどね。



 

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