02
真っ暗な視界で、私はゆらゆらと揺れているような感覚があった。
『これじゃあ、明日の仕事は無理かも。ていうか、良い機会だし辞めて転職しようかな。今の同僚にはお世話になったけど、会社には愛がないからな』
言葉が発っせない今、こんなことを考えていた。
昔、友達にロマンチストと言われた私は、愛が中心で考えることがあった。
バイトをしていた時も、社会に出た時も、誰かの為に自分が動くことが好きだった。
お金はもちろん大切だし、贅沢をしたい時もある。
愛があれば何も要らない!などと、綺麗事を言うつもりもない。
それでも、どこかしらで人に必要とされたかった。
愛されたいし、愛したいのだ。
恥ずかしくて口には出さないが。
まぁ、これらの考えには昔の思い出が関係するのだけれど、余談なので割愛させていただく。
誰しもが幸せになりたいだろうし、私も幸せになりたい。
不幸になりたいという特殊なドMは知らないが。
物語はハッピーエンド主義だし、どんな人でも純真な心からの笑顔が素敵だと思う。
そんな笑顔が見たいが為に、自分で作る“食”の仕事を選んだ。
しかし、会社は私がやっている仕事や残業に対し「誰にでも出来る仕事だから」などと言ったのだ。
誰にでも出来る仕事だろうが、私はその言葉に愛を感じなかった。
私の変わりはいくらでもいるもの…か?
ふざけんな!残業代もないのにやってられるか!!
思い出すだけで腹がたつ…!!
サービスでどれだけ私の貴重な読書の時間が削られてると思っている!
やっぱり辞めてやるわ!お前らの会社はバッドエンドだぜ!わーはっはっはっ。
私が怒りに燃えていると、ふと何かしゃべっている声が聞こえた。
くぐもって聞こえるというか、周りもよく調べたら液体?
なにこれ?と動いているとくぐもって聞こえる声が激しくなってきた。
そして、頭を押し付けらる感覚がしたかと思うと頭がひやりとした。
うーん、例えるならお風呂から出た時の感覚かなぁ。
…え、何、お風呂?
は、誰よ、満身創痍な私をお風呂に入れたのは!?
あれ、でも空気もないのに平気だったし、私どうなってんの!?エラ呼吸出来たっけ?
などとパニックになっていると、私の外気に晒されてる頭を誰かが触った。
何、このでっかい手!
ていうか、目開かないんですけどー!?
てか、タオルで拭くならもう少し丁寧にお願いします!
パニックになって数時間が経った気がする。
疲れた…お家帰る…。
ちょっとぐったりしている私を誰かが叩く。
やだ、私叩かれて喜ぶ人間じゃないの。
どっちかっていうと、叩く方でお願いします。
…しつけーな!暴れんぞごらあ!
元柔道部員なめんなごらあ!!
一番得意な受け身見せてやるぞごらあ!!
と、私が暴れると全身が何かから出てきた。
よっしゃあ、いっちょ暴れたるでぇ!
と声を出そうとしても、言葉に出来ない。
別に誰とも見つめ合ってないのに。
ん?あれ、これ、泣き声?私?
も、もしや…。
柔らかい布に包まれると誰かが抱き上げ、移動しているような?
そして、移動するのが止まると、誰かが私をまた違う誰かに渡してる。
丁寧に。でも、しっかりと。
安心するような相手に私の声も止む。
うう、誰?顔見たい。
と、思っていると少しずつ目が開きはじめた。
「ーーー?」
そこには汗だくだが、美しい笑みを浮かべた女性がいた。