最終前、世界の端で
ただ愚かしいな、とか。あの女性もこんな小娘に言われたくはないだろうけれど。
それが愛だとか執着だとかそういったまどろっこしくも離しがたい感情の行末であったとしても
人を苦しめるほどに盲目なそれならば、いっそ初めからない方がいいんじゃないかと思ってしまうんだ。
魔力の残滓が映像を見せる部屋に横たわる王様は、どこか悲しげな表情をしているように見えた。
血の気のない肌には暖かい色が通い、浮かんだ胸は、たまったものを吐き出すようにゆっくりと沈む。
その目元から絶えず透明な雫が流れ出ていたような気がしたけれど、拭うのは私の役割じゃない。
異なる世界の色に飲まれるその部屋から、表情の薄い女が一人消えた。
薄暗くどこか人を寄せ付けない雰囲気の部屋には、今日も女が一人座っている。
手前のカウンターには淹れてからそう時間が立っていないであろう紅茶がふわりふわりと湯気を上げ、
時々それを口に運びながらも目線は手元の本から離さずに文字を追うその目線は、いつもより何処か険しくそしてうっすらと疲労の色が被っている。
一つ小さく息を吐いて、女は椅子の背もたれに体重をかけて手元から目線を上げた。
「これだから、外にでるのは嫌なのに」
小さな笑みとともに一言こぼして、扉を眩げに見つめる。しんと沈黙が落ちるこの部屋にも歓声のような
多種多様の人々の声が漏れ聞こえるのだ。それがいつも無いものであるから多少煩わしく思うのも仕方がない。うんうん、と一人頷き軽く頬杖をついた。
これもひとつの、小さな世界での物語だ。
次で終わります