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美夜 零子【みや れいし】

初めに言っておきます。そこまでシリアスなお話じゃないです。力を抜いて、好きだったら続きを読んでくれると嬉しいです。

一応ジャンルはラブコメ、学園、先輩、後輩、でどうでしょうか。

それではお楽しみを。

「苦労をおかけしました。気を付けてお帰りくださいね」


 とある県の、とある(まち)の、とある学校の入学式の前日に私は呼び出されていた。


 どうもこの学校は障がいを持っている人にやさしいと謳っている高校だったので入学を決意したが、実際そんなことはなかった。


 充実しているのは設備だけ。ユニバーサルデザインをあちこちに散りばめておけばいいとでも思っているのだろうか? 


 結局、私たち(障がい者)みたいなのには人間の力が必要なのだ。助けてくれる人間の手が。


 その分、ここは失敗だったかもしれない。全校生徒が帰宅をすまして、もう誰もいない校舎に一人ほっぽり出されたのだから。


「あのじじい、覚えておけよ」


 まあ、明日の準備に忙殺されているのは理解できるが、それはそれ、これはこれだ。


 ちなみに、じじいは私の担任らしい。これからの学校生活について、いろいろと確認も取らされた。

 

 私には目が見えない。


 3年前、体を張った一か八かの大博打を決め込んで、両目がグシャッと逝ってしまった。


 その時、私は中学一年生になったばかりで、少し成長した自分を過大評価していたのかもしれない。


 まあ、よくあることだ。


 それからというもの、光のない世界で3年間生きてきた。今やもう目の開き方も覚えていない。


 明日は入学式。一応行くことになっているが、多分、他人に迷惑をかけまくるだろう。


 中学の頃の入学式とは正反対に、明日のことを考えるだけでどうにも気分が沈んでしまう。


 今だって、杖を突きながら、(多分だけど)廊下の端をとぼとぼ歩いている始末だ。


「はあ」


 情けない。


 こんな自分に輝かしい高校時代を歩むことは難しいだろう。どっちかと言えば嫌われ者だ。他人に迷惑をかけることを前提としているんだもの。それくらいは分かっている。


 そこは割り切っているつもりだ。割り切ってはいるが・・・、


「誰か助けてよ」


 分かっていながら、助けを求めてしまう自分が一番情けない。


 ふと、センチメンタルになった心に、聞き慣れた音色が流れ込んできた。


 否応にも足が動いた。音の鳴る方へ。


 それはさながら光に向かう虫のように。


 文字通り音に導かれた。あとから考えてみても、その時杖を使っていたかどうか不鮮明なほどの滑らかな足取りだった。


「あいたぁ」


 ゴツン。音の源と思わしき教室のドアにぶつかる。


 音は一瞬止まり、再び音色を奏で始めた。


 私は、一抹の期待と、莫大な不安を抱きつつ、ドアを開けるのだった。




 

 


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