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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

さよなら、私の幸福論 ―完璧だった婚約者が「計算」を間違えた日―

作者: raira
掲載日:2026/01/18

【愛している】という言葉が、ただの演算結果だとしたら。

初めまして、あるいはこんにちは。

今作は、完璧すぎる婚約者の背後に隠された「冷徹な正体」と、それを知った少女の「最後の選択」を描いた物語です。

信じていた記憶が、音を立てて崩れ去る。

その痛みの果てに待つ、ほんの少しの爽快感ざまぁを感じていただければ幸いです。

瑛太えいたは、完璧な男だった。

 彫刻のように整った容姿。

 若くして魔導省のエリート。

 そして何より、婚約者である瑞月みづきに対して、この上なく献身的だった。

「瑞月、今日のドレスもよく似合っている」

「君の瞳の色に合わせたんだ。気に入ってくれるかい?」

 瑞月は、その優しい微笑みに何度も救われてきた。

 家同士の政略結婚。

 愛など期待していなかった。

 けれど、瑛太は瑞月の好みをすべて把握し、彼女が寂しい時には必ず傍にいた。

 瑞月は、自分は世界で一番幸せな女なのだと信じて疑わなかった。

 ――あの日、瑛太の書斎で「それ」を見つけるまでは。

 床に落ちていた、一冊の薄い魔導手帳。

 拾い上げた瑞月の目に、冷徹な文字列が飛び込んできた。

『瑞月・フォン・アステリアに対する好感度管理ログ』

『04/12:涙腺を刺激するフレーズの選択。依存度3%上昇を確認』

『06/20:誕生日のサプライズ。彼女の「盲目的な信頼」を確定』

『備考:彼女の情緒は単純であり、特定パターンの優しさを示すだけで制御可能』

 心臓が、氷水を流し込まれたように冷たくなった。

 愛だと思っていたすべては、瑛太が彼女を操るための「演算」の結果。

 彼は、瑞月を愛しているのではない。

 

 瑞月という駒を、完璧に管理している自分に酔っていただけだ。

(――ああ、そう。瑛太様。あなたは私を「単純」だと計算したのね)

 その瞬間、瑞月の中で何かが弾けた。

 絶望の底で、初めて燃え上がるような「爽快な怒り」が宿った。


 一週間後。王宮の晩餐会。

 二人の婚約を祝う、華やかな舞台。


 瑛太はいつものように、完璧なエスコートで瑞月の手を取った。

「瑞月、顔色が悪いようだが? 何か不安なことでもあるなら、僕に言ってほしい。君の幸せが、僕のすべてなんだから」


 その甘い吐息。

 かつては宝石のように感じた言葉が、今はドブネズミの鳴き声よりも不快だった。


 瑞月は、満面の笑みで答えた。

「いいえ、瑛太様。私、今日ほど幸せな日はありませんわ」


「……だって、ようやく『答え』が出たのですもの」


「答え?」


 瑛太がわずかに眉を寄せた。

 彼の計算にはない、瑞月の反応。


 その時、会場の音楽が止まった。


 瑞月は瑛太の手を振り払い、通る声で宣言した。

「皆様! 私、瑞月・フォン・アステリアは――」


「本日この時をもって、瑛太・グランウェル卿との婚約を破棄させていただきます!」


 静寂。そして、爆発的なざわめき。

 瑛太は即座に仮面を貼り直し、瑞月の肩を抱こうとした。

 

「瑞月、冗談が過ぎる。少し疲れているようだね、別室で――」


「触らないで、演算狂い(ロジカル・モンスター)」

 瑞月の冷ややかな一言に、瑛太の動きが止まった。


 瑞月は、あえて抜き取っておいた「あの手帳」を、会場の魔法投影板に放り投げた。


「皆様、ご覧ください。これが、この『完璧な婚約者』の正体です」

 投影された、醜い管理ログ。


 瑛太の積み上げてきた「完璧な男」という虚像が、音を立てて崩れていく。

「残念でしたわね。あなたの計算には、一つだけ決定的な欠落があった」

「女のプライドは、どんな数式でも解けないということを!」


 瑛太は、言葉を失っていた。

 彼の脳内では今も、損失を抑えるための計算が走っているのだろう。

 だが、瑞月はそれを許さない。


「さようなら、瑛太様。あなたの『幸福論』の中に、私はもう二度と現れません」

 瑞月は背筋を伸ばし、一度も振り返ることなく会場を後にした。


 背後で、瑛太が激しく糾弾される声が聞こえる。


 夜風を浴びながら、瑞月は大きく息を吐いた。


 胸を切り裂くような痛みは、まだそこにある。


 けれど、自分の足で、この地獄を蹴り飛ばした。


 その事実が、瑞月の心に、これまでにないほど「爽快な自由」を刻んでいた。

 冬の夜空に、星が冷たく、けれど美しく輝いている。


瑞月は、溢れそうになる涙を指で拭い、前を向いて歩き出した。

 「単純」な私が見つける、本当の幸福を探しに。


(完)



まず「愛の形」とは、人それぞれです。

今回の瑞月のように、信じていたものが崩れ去ったとしても、自らの足で立ち上がる強さもまた、「愛」なのかもしれません。

読んでくださった皆様の心に、少しでも「爽快な痛み」が残っていれば幸いです。本当に今作も最後まで読んでいた抱きありがとうございました!今作、今までと少し違うことに気づきましたか?いつもパソコンで読んでくれている方が多くいるのですが今作はスマホで読まれる方に特化した形にしてあるんです!これからももっとファン層を広げようと思っていますのでアドバイスなどしてくださると嬉しいです。これからもわたくしrairaをよろしくお願いします!

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