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涙の理由

 二十二時半に労務が終わり帰路についた。丘の上の工場を下り、トンネルを抜けて、光が見えた。その先にあるコンビニエンスストア。いつも通りビールを買って一気飲み。程なくして口から泡を吐き出す。胃袋をコップに見立てるとわかりやすい。一気に注ぎ込んだ事で急激に泡立ち、器から溢れ出たのだ。ふと右の池の鳥たちのアライメントが気になって、その場に立ち尽くす。止まってしまった時間の中で、左の道路をビュンビュンと車が走り去る。この競争社会。どうやら僕だけが置き去りみたいだ。二本目のビールを開けてちんたら歩き出す。僕は邪魔だし迷惑かもしれない。だけどどうしたって一人分の場所は取るのだ。僕の住むレオパレスが見えてきた。暗闇の中で動くものがある。同じレオパレスの一階の住人が窓から出て敷石の上を歩いている。僕は取り急ぎやべー奴認定を授与し、目を合わせないように通り過ぎた。

 「オアァッ!!」

 背後からの奇声に晒される。見てはいけないとわかっていながら、好奇心に負けて僕は振り向いた。気まぐれの発作は止まる事を知らず

 「どうした?大丈夫か?」

 と声をかけてしまった。ジャリ、ジャリっと敷石を素足で踏みつけながら、暗闇の中から現れたのは、見知らぬ外国人男性だった。僕の目をじっと見つめた後、彼はその場で泣き崩れた。

 「どうした?仕事辛いんか?」

 「チガウ。シゴトノヒトハミンナシンセツ。トテモイイショクバ。」

 「じゃあどうして泣いてるんだよ?」

 「ソレハ……アナタガスピリチュアルノヒトダカラ……!!」

 あーこのタイプか。僕こーゆー奴に好かれやすいんだよな。深く関わって良かった試しが無いし、刺激しないようにゆっくり離れた方が良いな。と瞬時に察した脳の活動虚しく

 「ビール飲むか?」

 と次なる悪手を放ってしまった。どうして僕はこう、ヤケクソなのだろう。守るものが何も無いからか。わかっている事に意味はなく、行動だけがずんずん先を行って、取り返しがつかなくなった頃に悟る。幸せな人生だった。

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