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風の又三郎

 「僕、明日でこの仕事終わりなんですよ。」

 唐突に宙を舞った僕の言葉に彼女は目をぱちくりとさせる。

 「えええええええええーー!?」

 崩れ落ちるようなオーバーなリアクションで切り返す彼女にこちらが逆にビックリしてしまう。というのも自分の事を重要に思っている人間などこの職場には居ないというのが僕の思想だからだ。他人は哲学ゾンビとして扱った方が何かと都合が良い。無論、他人にとっての自分も哲学ゾンビとして扱われる。僕らは哲学ゾンビ同士感情無く永遠の平和を約束されたエデンを手に入れるってスンポーさ。

 「そんなにビックリする事無いですよ。派遣なんてみんないつの間にかやって来て何も言わず去っていく。それであいつ結局どんな奴だったんだろうね?って。風の又三郎ですよ。」

 「そうですけど、急過ぎます!私の心の支えが〜。」

 彼女は心にも無い事を平然と言ってのける。悪い気はしない。

 「まあそんな感じなのでどうかお元気で。明日は社員にも挨拶してそれでお別れです。一期一会ですよ。」

 「一期一会って……どういう意味ですか?」

 「一つの出会い、一つの別れって意味です。」

 「……良いことばですね。」

 珍しく真面目そうな顔をして彼女はそう言った。ツァラトゥストラもそう言った。

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