手錠を後ろ手でハズす女〜プレイなのになぜ〜
SMプレイで、手錠を使ったのに後ろ手で手錠をはずし、毎回襲いかかってくる嫁。
こんな嫁と毎日はできやしない。そんな哀しみを綴ったある芸人の独白です。
今まで隠していたのですが、僕は昔、実は結婚していました。
元嫁と別れた理由は、夜の問題でした。
彼女は、特殊な性癖の持ち主でして。
「わたしを縛ってほしい。縛られると興奮するの」と僕にせがむので、そういうSっ気のなかった僕は戸惑いました。
若い頃は、性欲もあったので、そういう行為自体の快楽はあるので、乗り気ではありませんでしたが、素直に従って、嫁の両手をロープで縛りました。
で、毎回喧嘩になるのです。
なぜかというと、プレイ中に嫁が、ロープを後ろ手でカチャカチャと、僕のカミソリとかを使って、ハズしたあと、灰皿とかで僕を殴ってくるんです。
映画で、縛られてる人が、犯人にバレないように背中でゴソゴソやってロープを外したりするシーン、死ぬほどありますよね。
あれを毎回やってくるんです。
「お前が、縛ってくれって頼むからやってたのに、なんで後ろ手でロープ外して、襲いかかってくるねん」
嫁は毎回泣きながら謝り、「今度はロープを外したりしないから、捨てないで」と言ってきます。
そして、プレイの最中に毎回ロープに切れ目を入れて、外してしまうのです。
そして、鈍器のようなモノで僕に襲いかかる。
レスになりました。
向こうから求めてくることはあるのですが、縛ってくれと言われ、断りきれないで、久しぶりにプレイをすると、毎回ロープを切られ、鈍器で襲われる。
これの繰り返しでした。
僕の誕生日プレゼントに、“もう外せないやつを貴方へ”と書いたメッセージカードと共に、手錠をもらった時は、イラっとしました。
「これ、俺へのプレゼントか?」と思い、複雑な気持ちになりましたが、手料理の美味しさや、二人で飲んだ赤ワインにテンションも上がり、僕は許してしまったのです。
僕もロープではなく、手錠なら大丈夫だと思い、その日の夜、久しぶりにそういう関係になりました。
ところが、彼女は手錠を外して、僕がプレゼントした鉄アレイで殴りかかってきました。
手錠まではずせるなんて、さすが元グリーンベレーだ、と思いましたが、毎回殴りかかられるのは、たまったもんじゃありません。
こうして、性生活は少なくなっていきました。
普段の会話は仲良く過ごしていましたし、喧嘩の原因は、彼女の異常な性癖だけでしたから、しばらくは僕にとって、平穏な日々が流れました。
しかし、それは長くは続きませんでした。
次第に、プレイとか関係なく、後ろを向いたら鈍器で襲いかかってくるようになったのです。
僕は、もうさすがに暮らしていけないと思いました。
離婚を切り出しました。
嫁も僕との喧嘩に疲れ果てたのか、渋々、離婚を了承しましたが、「離婚するなら、最後に一回だけヤらせて」と、オッサンみたいなことを言ってきました。
僕は、それが原因で別れるのに、ありえないと反発しましたが、「それなら離婚に応じない」と向こうも駆け引きをしてきます。
「縛らないで、普通に正常位とかならいいよ」とこっちもプランBを提案しましたが、嫁は「ダメよ。縛られるのが興奮するの!」と一歩もひきません。
普通に正常位、がプランBであることの異常さに当時僕は気づいてませんでした。
普通に正常位はプランAだろ、普通。
彼女と暮らしていると普通の感覚が失われたいくのです。
結局、その日の夜です。
僕は、身を守るために嫁を包帯でぐるぐる巻きにして、息ができる穴と、そこに挿入すればいい穴をひとつずつ開けて、嫁をミイラのような状態にしました。
これなら、大丈夫。
そう思いましたが、目の前にあるのは、でっかい繭みたいなかたまりです。
興奮しません。
でも、仕方なくお気に入りのAV女優のことを頭で妄想しながら、その穴に挿入しようとしました。
その瞬間、頭に衝撃が走り、僕は倒れました。
後ろを振り返ると、嫁が立っています。
「な、なぜ」
気を失いそうな寸前で、でっかい繭を見つめていると、眉の中から、シラク大統領が出てきました。
フランスの当時の大統領です。
それからも、結局離婚はしてくれず、プレイをせがまれ、毎回鈍器で殴りかかられました。
そして、毎回シラク大統領が出てきます。
この状況では、お笑いはできない。
そう思って、僕は嫁から逃げて東京にきました。
この状況、というのを細かく言うと、【でっかい繭からシラク大統領が出てくる状況】のことです。
こんな状況ではお笑いはできませんよね?
もちろん、色んな先輩にも相談はしました。
「毎回シラク大統領出てくるのか?」
「はい。毎回です」
「それじゃ、お笑いはできないかもな」
こんなアドバイスをもらっていました。
同期にも相談しました。
「毎回、シラク大統領出てくるんか?」
「せやねーん」
「それやったら、お笑いは難しいんちゃう?」
頼れるのは同期ですね。
アドバイス、ホントに嬉しかったです。
ライブの主催者さんにも相談しました。
「毎回シラク大統領出てくるんですか?」
「そうなんですけど、ライブは出たいです」
「でも、シラク大統領来るかもしれないとなると、ライブに呼びにくいねえ」
そう言われてしまいました。
占い師のところにも行きました。
水晶を手で覆いながら「シラク大統領が毎回出てくるんでしょ?」と言われました。
「お笑いは無理っすかね」
「うーん、セックスの時、毎回シラク大統領が出てくるのなら、お笑いはちょっと厳しいかもねえ」
占い師のオババにも感謝です。
もう、ダメだ。そう思って、大阪を逃げて、東京にやってきたのです。
長くなりましたが、みなさんに、一度、“性”について考えてもらうために書きました。
この文章が中学校一年生の2026年の保健体育の教科書に載るらしいですが、明日を生きる子供たちに、少しでもパートナーを思いやる気持ちを育んでもらえたら、これに勝る喜びはありません。
芸人、ネタ作家、短編小説家。“理系の変な奴”は自分で髪の毛を切ります。それが私。ついでの用事が二個ないとお墓参りに行かないです。
Twitter、noteなど色々やってます。




