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日本狼が帰ってきた 夜…地球がへこむ 音が聞こえる老人

作者: 徒然生成
掲載日:2025/10/19

✦日本オオカミが帰ってきた夜 — 地球がへこむ音が聞こえる老人


❥第1章 南極が泣いている


2025年10月15日。

南極・アムンセン=スコット基地が

観測史上最低の**−61.3℃**を記録した。


春へ向かうはずの南極が、

40年ぶりに氷の牙をむいた。


同じころ、北極では氷が例年より20%以上溶け、

地球の「頭」から湯気が立っているように見えた。


つまり――地球は、頭が熱くて足が冷えている。

働きすぎの人間みたいに、もう自分を整えられない。


「地球の交感神経が暴走しとるんじゃ…」


ニュースを眺めながら、

67歳の男は足湯でつぶやいた。


---


❥第2章 地球は老人の鏡


かつて営業の最前線で働きづめだった男。

今はふるさとの部屋で、

沸かした湯に足を沈めてニュースを見る。


心臓弁膜症、静脈瘤、睡眠障害…

体のリズムは乱れ、眠りは浅い。


「わしの身体、まるで地球みたいじゃのぅ…。」


かかりつけの鍼灸師の言葉がよみがえる。


「頭を冷やし、足を温めなさい。

 それが自然の循環です。」


北極が熱を出し、南極が冷えすぎる。

血流を失った67歳の身体のように、地球も今、

冷えと熱のアンバランスに苦しんでいた。


---


❥第3章 地球の不整脈


あの日――2011年3月11日。

マグニチュード9.1の地震が日本を襲い、

地球は軸を10〜25センチ傾け、一日の長さを1秒短くしたという。


「あれは地球の心臓発作じゃったんかもしれん。

 わしも65の時に体を壊した。

 環境が変わると、大病は急にやって来る。

 地球も同じなんじゃ。」


惑星は、自分がまだ生きているか確かめるように、

痛みを伴って鼓動を打つ。

あれ以来、地球の拍動は少しだけズレたままだ。


---


❥第4章 インド洋のへこみと老人の古傷


ニュースが伝えた。

インド洋の一部で海面が100メートル沈下している――。


原因は地球内部の“歪み”。

沈みこんだ古代のプレートと、

アフリカの下から吹き上がる高温のマグマが押し合い、

海の底に巨大なへこみを作っているという。


「このへこみが海流と風のバランスを狂わせ、

 モンスーンや雨のリズムを変えているんです」


                 ――科学者。


遠い海のへこみは、

日本の気候・食料・心のリズムにまで影響している。


夏は40℃の灼熱、頻発する山火事、荒れ狂う豪雨

異常に発達した台風、地球の砂漠化…


物価は上がり、空気は乾き、借金は雪だるま式に増える。

人々の心はカラカラにひび割れ、

SNSの言葉は刃のように飛び交う。

誰かを責めることでしか息がつけない。


「遠い海のへこみが、

 人間の心にまで波を立てとるんじゃ。

 海水温上昇だけやない。真水も減っとる。

 地球の皮膚が干からびてきとるんじゃ。」


男は湯気を見つめて思う。


「人間もそうじゃ。心に穴が開けば、呼吸が浅うなる。

 地球も今、相当息が苦しいんじゃろう…。」


---


❥第5章 モスキー音の街(若者・外国人を追い出す音?)


夜のコンビニ前。

若者を追い払うためにモスキー音が流れている。


それは高周波だから、老人にはほとんど聞こえない。

若者だけが耳をふさぐ。


「うるさい…なんでこんな音が…」


暑さ、痒み、怒り

――蚊に刺されたみたいなイライラが耳から刺さる。


これが現代の「防犯システム」。

危険な生き物だけに聞こえる音…?

だが実際は、人間版の害獣駆除に他ならない。


山ではクマ、街では若者。

どちらも“自然の子”なのに、文明は音で追い払う。


「昭和の教育は言うたはずじゃ。

 自然を管理し、守れ――とな。

 いつのまにかそれが曲がって、

 **人間まで“管理”**するようになった。

 高音が聞こえんのは、

 お金持ちの老人には都合がええからのぅ…?」


67歳の老人は苦笑する。

そして思う―― 


人間も地球の一部だと、もう一度教え直さなきゃ、

社会は変わらん。

“支え合う社会”は、ずいぶん遠くなった。


---


❥第6章 オーロラが降りてきた夜


その夜、山の湯。

男が空を見上げると、

雲の切れ間に緑と紫の光がゆらめいた。


「まるでオーロラみたいじゃのう…」

――それは本物のオーロラだった。


太陽の爆発フレアが地球の磁場を乱し、

北極でも南極でもない日本の上空に、

光のカーテンを降ろした。


「太陽が咳をして、

 地球が幻覚を見るようになったんじゃな…」


---


❥第7章 明晰夢(老人の見た夢)


その光の下、

老人は足湯に浸かりながら明晰夢を見る。


森の奥から影が現れた。

――日本オオカミ。

絶滅したはずのその姿は、

人間のDNA再生技術で復活した個体だった。


若い科学者は言う。


「これで自然が元に戻ります。

 科学の力で昔の森を再生するんです。」


しかし、男は首を振る。


「それも昭和の延長じゃ。

 自然を支配する教育は何も変わっとらん。

 それが神を怒らせ、

 今の地球の血を滞らせとるのじゃ!」


便利を“進歩”、効率を“正義”と信じた社会。

拝金主義の果てに、地球は疲れ果てた。

人間はそれに気づかない。


「人間が神をまねれば、自然は人間をまねる。

 これが、いまの地球の姿なんじゃ!」


オーロラの光が山々を照らし、

老人には、

地球全体が苦しい息をしているように見えた。


---


❥第8章 日本オオカミの復活


夢から数ヶ月後。ニュースが駆け巡る。


「日本オオカミ、阿蘇山麓で初の野生出産を確認。

 5頭の子ども誕生。」


SNSは歓喜に沸く。

「奇跡だ!」

「自然が戻った!」


だが、誰も気づいていない。

それが

――人間が制御できない自然の始まりであることに。


オオカミは静かに、しかし確実に増えはじめた。

九州から本州へ、本州から東北へ。

衛星画像の軌跡は、

山々が呼吸を取り戻す線のように見えた。


「自然を元に戻したつもりが、

 自然に“寄り戻される”時代が来た。」


老人の言葉を、誰も信じない。


だが、リアルの世界では、 

山の主が動きはじめていたのだ…


---


❥第9章 ヨーロッパでオオカミが帰ってきた


同じ頃、

ヨーロッパでは“現実の復活”が進んでいた。


ドイツ、フランス、イタリア――

かつて絶滅寸前だったヨーロッパオオカミが、

再び森を駆けるという。


2024年時点、EUの調査で約2万3000頭。

10年前の倍。

ドイツは200群・1600頭以上。


彼らは、ポーランドからアルプスを越えフランスへ、

**「オオカミの道」**が再びつながる。


自然は蘇った。

だが、人間社会は悲鳴を上げている。


羊、馬、犬。

2024年だけで家畜5万頭以上が襲われたという。

農家の怒りと環境団体の歓喜が衝突する。


「オオカミを守れ!」

「いや、人間の生活を守れ!」


政府はGPS管理や限定駆除を試みるが、

森のオオカミは電波の届かない奥へ消えた。


「自然は戻った。

 でも、人間の心はまだ戻っていない。」


あの明晰夢は正夢になった。

ヨーロッパの遠吠えが、

風に乗って日本に届く。


「次はお前たちの番だ。

 覚悟しておけ!

 お前は高音が聞こえんからな!」


---


❥第10章 地球に呼吸をさせよう


オオカミの遠吠えが月に溶ける。

北極の熱と南極の冷気が混じり合い、

足湯の湯気のような霧が山を包む。


人間と地球の鼓動が、

ゆっくりと同じリズムを刻みはじめた。


「地球を大切にしたいなら、まず自分を大切にせぇ。

 心にへこみを作らんこと。

 他人や自然を責めんこと。

 そして地球の鼓動を聞くこと。

 それが、この惑星と呼吸を合わせるということじゃ。」


湯は静かに冷め、

オオカミの群れは森に消える。


残ったのは 

――67歳の老人の高音の耳鳴りだけだった。


(完)

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