第一話③「制裁!」
「な、なんなんだこいつ…気味が悪い」クロードはそう呟き、仕方が無いと言いたげにため息をついた。
「ドラゴン、こいつ焼き払え。なるべく遺体が残らないようにな。」
そう言い放つとドラゴンは大きな咆哮と共に
火炎を吐き出す。
「グゴォォォォォォォ!!!!」
辺り一帯を包み込む火炎はすぐさま木々に燃え移り辺りは火の海と化してしまった。
「ふははは!これじゃあ、燃えたかどうかも確認出来ないねぇ!」
そんな光景を指さして笑うクロード
それを見て唖然とするアリーナ。
「どうして、こんな事を平然と出来るの?
森や木々だって、生きているというのに…っ」
そう呟くと、クロードはそれにピクッと反応し、その疑問に対しての返答を述べる
「そんなの、僕が一番だからに決まってるじゃん?森さん可哀想ォ〜、虫さん可哀想ォ〜.…
そんなの考えて生きてる奴、居ないでしょ。
それにほら、やっぱり君のせいであのレクスとかいう男も……」そう言った瞬間空中にある異物を見つけてクロードは眼を見開いた
「な、なんじゃありゃああああ!!!!」
「垂直跳びで回避できてよかったぜっ!
じゃあ、今度は俺の版だよな〜」
落下方向に向かって空中を蹴り、勢いよく凄い速さで加速をつけてドラゴンに対して迫る
「行くぜ?爆炎龍のォ〜……」
拳からパチッパチッと音を立てて、やがてそれは手を包み込む炎となる、そして…
「鉄拳ッッッ!!!!!」ドラゴンの頭部に向かって解き放った拳はそのままドラゴンの顔を地面に叩きつけ、爆発を起こし、火柱を立てた。
「は、はぁ〜????」顎が外れたように口を広げるクロード
「す、すごい!!これは…一体!」
「そういや、お前…唯一無二のドラゴン使いがどうとか言ってたよな?」動かなくなったドラゴンの上で見下ろしながらレクスは言う
「よく勘違いされがちなんだけど、ドラゴン使いってのは…ドラゴン"の技"使いって事でな?こうやって、ぶっ飛ばしたドラゴンの一部を喰って…」ドラゴンの首から肉を引きちぎりそのまま食べ始め、豪快にごくりと飲み込んだ。
「…ふぅ、ごちそう様でした。そこから頂いた能力って奴を受け継ぐ…それがドラゴン使いだ!」
「こ、こいつやばい…に、にげ…逃げないと…!」ガクガクと足を震わせながら逃げる準備を始める。
「へへ、味わってみるか?お前が荒らした木々達が喰らった火炎を……」ニヤリと笑いながら
息を吸い始める。
「ひ、ひぃぃ!!!お助け!!!」泣き叫び、怯えながらレクスを見つめるクロードを他所に
レクスは叫ぶ
「火炎龍の…咆哮!!!」
そう言いながらふぅーーと息を吐くだけのレクス。そうとも知らずに泡を拭きながら倒れるクロードを見てレクスは思わず大笑い。
「さて、と…これ以上燃え広がる前に消化しねぇとな…」そう言いながら木から木へ燃え広がる炎の方を向き、先程の様に息を大きく吸う。
「水龍の、咆哮!」すごい勢いの広範囲の水を口から出し、見る見るうちに山火事を消化していくのであった。
「これで全部消えたかぁ?焼け跡は残っちまうのは少し忍びないけど…」
「す、凄い……これが、あのドラゴン使い…」
レクスを見つめるアリーナに対してレクスは
「大丈夫だったか?アリーナ!ほら、一緒に帰ろうぜ?」そう手を差し伸べた。
「はい、はい!ありがとうございましたぁぁぁぁ……」そう言いながら泣き崩れるアリーナに
ギョッと驚く。
「本当に、た、助かってよかったぁぁぁぁ……」
「そりゃそうだ!はっはっはっ!!!」
こうして、笑い声と泣き声が交差する
森の中で物語は幕を開けたのだった。